片付けを終えると母さんはテレビを見て、親父は寝室だそうだ。
俺も自分の部屋に戻りベットに横になり少し寝ようとリラックスした時、なぜかアミュスフィアを頭につけていた。
日頃の習慣でベットに寝たらゲームをするというパブロフの犬現象。
昔も帰って特にやる気がなくともPS4の電源をつけていたことが多々あった、怖い怖い。
そう思いながらも結局は電源をつける。
詩乃もお疲れだったしこれから呼ばれることもないだろう。
ゲームに入りフレンドリストを見ればぼちぼちフレンドもいるがシノンはオフってる。
スカーでも誘ってどっか遊びに行こっかなグロッケンに居るし何もしていないんだろう、そう思い招待を送ればすぐに了承が出る。
この暇人が。
「お疲れっす、何するっすか」
待ち合わせ場所に行くと既にスカーがいた、ついでにリッツもいた。
「何する? 俺もただ暇してたからお前呼んだんだけど」
「でしょうね、俺だってそのつもりっす」
「私はスカーについてきた〜」
リッツも相変わらずの間延びした声で暇人アピールをする。
結果何するか決まってない、そこで再びリストを広げると久しい名前を見つけまた招待を送る。
「リッツさん最近どうですか、最近話聞かないんですけど」
「ん〜ぼちぼちだね〜、上のクランが強すぎて、シノンちゃんとはどう?」
「色々やってますよ、BoB出たりとか一緒にフィールド出たりとか」
「そういえば三位取ってたね〜おめでと〜」
「でしょ、もっと褒めてください」
初めて素直な賞賛を聞けた。これこれ、三位はすごいから!
「俺はまだ認めてないっすからね、ゼクシードと同じブロックじゃなきゃ俺が優勝してるっすから」
「貴様の運の悪さの呪うがいい」
「謀ったっすね、運営買収したっすね」
スカーは負け惜しみが過ぎる、素直に敗北を認めたほうがかっこいいぞ?
そこで先ほど招待を送った奴らが到着する。
「おう!久しいやんけ」
「久しぶり」
何話ぶりかわからない、フェイスとニック!
「おひさ、どんなキャラか覚えてねぇな」
「よう言うわ、こんなキャラ忘れんやろ」
「いやニックの方」
「うるさい」
さてと、このメンツが集まればやることは一つ。
「じゃあフィールド荒らしますか」
「「「「賛成」」」」
クランBF期限付き再結成。
移動したのは市街地ステージ、俺一人では不利待った無しだがこのメンツでは最適のステージだ、近距離はリッツ、ニックが対応して中距離は俺とフェイス、遠距離はスカーが頑張る。
しかもメンツはこういうことが得意な五人。
過剰戦略と言われても文句ない。
「ワレ武器変わっとるやんけ、M14やん」
「CODG以来だ、やっと手に入れたよもう離さん」
さらっと流していたがやっとこさM14を手に入れた。
拾った時はテンション上がって。
「なじむ、実になじむぞ、フハハハ!」
とかやってた、シノンに引かれてたのは言うまでもない。
「とか言うお前も武器変えたのかよ」
「やっぱペチェネグが一番や、威力低いとトドメ刺し切らんけの」
フェイスがいま持って居るのはロシアの軽機関銃ペチェネグ。
威力がレートが遅いがその他は高い水準に設定されているレジェンダリーの武器。
懐かしいなぁ、昔はよく使ってたけどC4が弱体化された影響でめっきり使わなくなっちまったなぁ。
「俺もそろそろ新しいの欲しいっす、最近増えたダンジョンに対物スナ落とす敵がいるって聞いたからそれ欲しいっす」
「バレットの他に出すのか!?」
「バレットはゼクシードが腐らせてるからこっちくらいは取らないといけねぇっす」
思わず耳寄りな情報を聞いた、対物狙撃銃はこれまでM82しかなかった、しかもゼクシードの他に持っている人もあまり聞かないため限定ドロップなんだろう、おそらく新しく出るものもそれに近い扱いをされることは予想できる。
「お、第一村人発見っす!」
「よし、リッツはポイントマン、スカーはセンター、ニックとフェイスは両サイド」
雑談をしながら進んでいたがもちろん索敵は怠っていない、スカーが投げたモーションセンサーに反応があったらしく俺たちはすぐにフォーメーションを取る。
「スカーがリッツ先導してくれ」
「了解っす」
「俺たち三人は周囲警戒で」
「おう」
「了解」
反応があったのは対面の家の奥、ダンジョンを目指しているのだろうか、それとも俺たちみたいにPKKか。
「スカー、人数と武装はわかるか?」
「MAV禁止されたからわかんないっすね、SUAVも重量半端なくなったっすから」
「役たたねぇな、それでも偵察兵かよ」
「時代は変わるもんっすよ」
「じゃあちょっと見てくる、待っててくれ」
小声で少し言い合いをした後俺は敵小隊へ偵察に行く、スカーはこういうことは下手くそですぐ見つかるからダメだ。
今にも倒壊しそうな廃墟の二階に入り敵を見つける。
五人の小隊で三人が光線銃、一人は軽機関銃のM249、もう一人はローブをまとっており武装が見えない。
進行方向を見ればこのまま直進すると俺たちとハチ会うこととなる、これなら安定の待ち伏せかな。
情報収集を終えそそくさと皆の場所に戻る。
皆はだいぶだらけていた。
「ほら、待ち伏せするぞ敵は五人、三人は光線銃で他一人がミニミ持ち、最後の一人はわからんけど適当に終わらせりゃいいだろ」
「それだから詰めが甘いって言われるんすよ」
「どうにかなるときはそれでいいんだよ、気楽にいこうや」
スカーの反論はねじ伏せる。
「じゃあ狙うのは光線銃持った奴らは後でいい、まずはミニミ持ちを俺達三人で殺す」
「「了解」〜」
「ローブ着たやつはフェイスが狙ってくれ、ある程度でいいからダメージ与えとけばいいだろ」
「うぃ〜」
「スカーはいいときに連絡するからそんときにお願い」
「テキトーっすけどまぁいいっすよ」
俺とフェイス、リッツとニックは少し先に噴水跡のある広場で待機する、スカーは広場から数百メートル離れた建物に走っていった。
広場へ敵小隊が入ってくる、また通りの武装、やはりローブの男の武装はわからないまま。
そいつらが噴水跡に差し掛かった時、俺達は銃撃を開始した。
「死にさらせこんボケ!」
スカーはペチェネグにつけたバイポッドを立てローブの男に銃撃を始める、俺はミニミ持ちに狙いを定めキル確関係なく引き金を引きまくるとミニミ持ちは多方向からの銃撃によりあっけなく死亡判定になり俺の流れ弾で周りの数人に被害が出ている、残った三人とローブの男は急いで噴水跡に飛び込むが遅れた一人が死亡し、これで残るは光線銃持ち二人と謎の男、こういう時って大体ああいう奴が大変な物持ってたりするんだよなぁ。
流れ弾とは言ったが正直反動制御で狙ってみよ、と思ってやってみたら当たった、なんか調子いいかもしれない。
敵が隠れた隙にホールドオープンしたM14をリロードをする。
「あかんわせいぜい削れて5割くらいやわ、奴さんどんなビルドしとんねん」
フェイスは苦虫を噛んだような顔でそう呟く、ペチェネグで5割ってだいぶ硬いぞ? ラグ疑惑すらあるわ。
マガジンを交換してボルトストップを押せばガシャンと重量感のあるいい音がする。
たまんねぇ。
リロードを終え、様子を応射してくることを予測して隠れたままでいると空気の抜けるような音が聞こえる、見ればリッツの方にスモークが張られている。まずはあっちをやるってか、やってやろうじゃないの。
「もっかいいくぞ」
「おう」
俺とフェイスは同時に銃を構える。
予想としてはスモークに紛れリッツ達を攻めるためこちらに弾幕を張るだろうと予想している、その予想は見事的中することとなった、しかし少しの間違いもあった。
銃を構えACOGサイトの奥に見えたのはスピンアップしているミニガン、俺は全力でフェイスを押し倒した。
そのすぐ後に後方から削岩機が出すような銃撃とは違う音が響く。
「俺は男に抱かれる趣味ないわ!」
「うるせぇ俺だってそんな趣味ねぇよ!」
みるみるうちに壁が削れ室内にミニガン特有の銃弾の束が室内を蹂躙する。
メニューをいじりメッセージを送るとともにストレージからフラグを取り出しミニガン君へ投げつける。
「あいつ思い出したわ、確かベヒモスとかいう傭兵プレイヤーや」
「ベヒんもスじゃないよな?」
「ベヒモスや、最近ミニガン取ってランク上がってるから有名やで」
「ベヒーもスでもない?」
「ベヒモスや」
・・・やはりフェイスはこんなもんか、スカーならしっかり返してくれた。
フラグを避けるためか銃撃が止む、その隙に隣の建物に窓から飛び移ってすぐ元いた部屋が倒壊する。
「マジかいな、あんな武器あってええんか?」
「当たらなければどうということはない理論は上手い人しかできないんだよなぁ」
すぐにこの部屋にも銃撃が始まる、匍匐で階段まで近づき一階に降りたりまたフラグを投げつけたりと逃げ惑うがいかんせんベヒモスもしつこくこちらを狙ってくる。狙うというよりあたりをつけて掃射しているだけか、なんて面倒なトリガーハッピーなんだよ。
しかし突然のその銃撃も中断する。
ウチの狙撃手舐めんなよ、動かなきゃすぐにやられるさ。
「やっとかいな、スカーは下手なったんとちゃうか?」
「スモークがあっち流れてたからな、まぁしっかり仕留めたんだから良しとしてやろう」
メッセージに「やったっすよ」とドヤが送られていたがシカトしておく、当然の仕事だっての。
スモークが晴れた広場には数人の死体が転がっている、やはりあっちの方に行ったのは失敗だったんだろう。
ドロップ品はしょっぱいものだったがミニミのグレードが高くそこそこの値段となった。
次はどこに行ってやろうか。