すみません、予定よりも長くなりそうだったので、今回は中編となります。
え? 中編だろうと後編だろうとあんまり関係ないだろって? そ、そんなことないとありませんよ! たぶん、きっと、メイビー?
取り合えずГ艦これ始まります!」
Г我思う、故に我あり」
私はこの言葉が大好きだ。
例えどのような状況下にあったとしても、自分が思考している限り、私と言う存在は証明される。
それが、どれほどあやふやで不確かな存在であったとしても、
それが、他人に作られた架空の存在であったとしても
それが、世界の理から外れた異常な存在であったとしても、
私は見た。
私は聞いた。
私は思考した。
その結果が有る限り私の存在証明は私によって成される。
その事に深く安堵することが出来る。
だが、それと同時に思うことがある。
私の思考こそ唯一絶対の存在証明なのだとすれば、
私の意識がないときは私は存在するのだろうか?
私の意識がなくなってしまった時、
私の存在は誰が証明する?
________
Гくくくっ、いやいや、まさか空中に飛び上がると共に刀で首を狙うだなんて、そんな曲芸じみたことを平然とできるのはあんただけだよ。流石はあたしの『元』相棒、やっぱりあんたはそうでなくっちゃいけないよ、ねぇ――
――パラオの番犬『血濡れの夕立』よぉ……」
へんじがないただの屍の様だ。
Г……あれ、夕立? おーい、聞いてるかい」
へんじがないただの夕立の様だ。
Гん? いきなり犬座りしてどうしたんだい?」
へんじがないただのわんこ様だ。
――『夕立? 大丈夫デスカ?』
Г…………わん」
――『わん?』
Гわんわん♪ わおーん♪ ヘッヘッへ……」
――『衝撃情報のせいで夕立が壊れた!?』
Гええええぇぇっ!?」
Гくぅん?」
――『ちょ、隼鷹さんのせいデスヨ!!』
Гあたしのせいなのか!?」
――『さっきの戦闘で既に精神が不安定になっていたのに、さらに衝撃情報を与えたせいでキャパオーバーしちゃったんデスヨ』
Гえぇぇ……だって、疑わしかったから、ちょいと鎌をかけただけなんだけど……」
――『鎌をかける行為が命懸けの戦闘を強いてる時点でおかしいデス!!』
Гいやぁ、あの子だったらこれくらい平気だと思ったからさぁ……」
わん、わんわん、わわん、アォーン、ヘッヘッ、ウウウ、わんッ、ごはん、アォーン。
――『モノローグの中まで犬化したら収拾つかないんデスガ!?』
Гわん♪」
――『くっ、そこまでして現実から目を背けるつもりデスカ……ならば、こちらにも考えが有るデス』
わんわん、わおーん、わん、にゃー
――『こんなこともあろうかと! ご都合しゅg……もとい妖精さんパワーで解決デスヨ』
――『電子の海に漂う適当な
――『《犬化したくらいで現実から逃げられると思うのならば、先ずはその幻想をぶち壊すプログラム》インストール開始デス』
コォケコッコォォォー!!
――『名付けて《犬語翻訳機ワウリンガル》デス』
――『ワオッ、商標ぎりぎりの名前デス』
――『こんなときでもネタまみれ、それが私達、妖精さんブラザーズ!』
――『流石だな、私達』
テケリ・リ、テケリ・リ、
――『『『ワッハッハッハ』』』
Гぺふっ?」
――『では、早速発動デス』
――『スイッチON』
――システムオールグリーン・独立型犬語解析戦闘支援AI・WANDA起動します――
――『あれ、なんか名称が違うような……まあ、いいデス、さあ、夕立の翻訳をするのデス』
――了解しました――
Гわん」
――解析完了、解析結果を表示します――
《巻き舌宇宙で有名な紫ミミズの剥製はハラキリ岩の上で音叉が生まばたきするといいらしいっぽい。要ハサミだよ。61》
――『発狂大佐!?』
Гわんわん」
――解析完了、解析結果を表示します――
《私の前世は深海凄艦だったんだ、あの頃は楽しかった》
――『その発言は艦娘的にぎりアウトデス!!』
Гアォーン」
――解析完了、解析結果を表示します――
《
『『『黒(時雨)より白(夕立)』』』》
――『アウトオオォォォ! !』
――『そっちは番外編時空デスカラ完璧アウトデスヨ!!』
――『なんか翻訳した方がカオスになってないデスカ?』
たぶん、私もそう思うワン。
――『そろそろぐだって来たので力業で再起動するデス』
――『45度から抉り込むように打つべしデス!!』
ぐへっ……キャ……キャウン……バタッ
――解析完了、解析結果を表示します――
《犬化して話が進まなくなってしまった状態を改善するため、妖精さん達は数人で協力してどこから出したのか不明なバットを振り上げ、原因である私へと振り下ろした。犬化していて正気を失っていた私はバットを避けることもできず、頭に強烈な一撃を受けて気を失ったのだった》
――『状況説明ありがとうデス』
――『隼鷹さんへの説明は私達がしとくデス』
――『一旦、お休みなさいデス』
――お疲れ様でした―― (ピロリロリーン♪)
_________
ゆらゆら、
暗い、くらい海の底に私は漂っていた。
ゆらゆら、
ひどく懐かしい感覚を思い出す孤独な空間で、私は一人の艦娘の記憶を見ている。
彼女が生まれたのもこんな暗い海の底だった。
そこはとても静かな場所、存在するのは何の船なのか分からないほどに朽ち果てた船の残骸とそこを住みかにする魚達だけ、その他には何も存在しない、だが、不思議と心が落ち着く場所。
彼女はそこで静かに過ごしていた。
何も無い海での静かなひととき、
彼女はそこで昔の記憶を思い出していた。
彼女には生まれる前の記憶があった。
それは艦娘が生まれる時に持つ『設定』としての記憶とは違う『彼女』が体験した戦いの記憶、顔も知らぬ提督の元で仲間たちと共に過ごした日常の記憶、深海凄艦との戦いにおいて力及ばず撃沈された最後の記憶。
その記憶を持っていた為に、初めはそこが死後の世界なのかとおもったくらいだ。
しかし、しばらく過ごすうちに自分が生きていて、そこが自分が生まれた世界とは違うと気づいた。
だが、彼女はそこから動かなかった……いや、動けなかった。
彼女は既に戦いに破れた負け犬だ。
生まれたその身に傷は無いのだが、心には深い傷を負っていた。
彼女には休息が必要だった。
幸い、そこは休むのに適した場所であり、彼女もそこでの静かな時間が大好きだった。
彼女はそこにいるだけで満たされていた。
だが、静かな日々は長くは続かなかった。
生まれてからしばらくして、彼女の元に深海凄艦が攻めてきたのだ。
彼女は静かな日々を守るために戦った。
倒しても、倒しても、深海凄艦が途絶えることは無かった。
例え、攻めて来た深海凄艦を全て倒したとしても次の日にはまた攻められた。
つきぬ深海凄艦の数に精神も肉体も段々とぼろぼろになっていった。
彼女はそれでも戦った。
戦って、戦って、なぜ戦っているのかも思い出せなくなった頃、
ふと気づくと、
彼女の周りには大漁の骸が積み重なっていた。
静寂を支配するのは怨嗟の声、深い蒼を塗りつぶすのは怨念の影、満たされていた心に入り込んで来るのは恨み辛みの黒い思念。
そこには、彼女が守りたかった静かな海は存在していなかった。
ワタシは…………
ザザッ…………
記憶にノイズが走る。
時はすぎ、彼女は自分と同じ存在と共に戦っていた。
敵は深海凄艦、守るは鎮守府、
深海凄艦の大攻勢により敗北寸前まで追い詰められた人類を守るため、妖精さんによって建造された艦娘達との共闘。
この世界に来てから、始めて過ごした騒々しくも楽しい仲間達との日常、背中を預ける仲間達の頼もしさに彼女はいつの間にか安心を覚えていた。
自分の居場所を守るため、失いたくない日々を守るため、彼女は仲間と共に戦っていた。
彼女は常に前線で戦い続けた。
強い敵には進んで挑み、弱い敵は瞬く間に蹴散らした。
例え腕が千切れ飛ぼうが、足がもげようが戦い続け、腹に大穴が空き、臓物が飛び出そうになっても、ハンモックを包帯がわりに巻いて固定しながら敵を倒した。
みんなを守るために、彼女は持てる全ての力を使い戦い続けた。
戦い、闘い、多々勝って、最後の総力戦まで彼女達は深海凄艦を退ける事に成功した。
人類側の一世一代の反抗作戦、深海凄艦を人間の生活圏内から追い出す為の大作戦にも意気揚々と参戦した。
反抗作戦決行日、その日は酷く天気が荒れていた。
波はうねり、大雨で視界の確保は困難、さらに戦場の混乱によって大乱戦へと移行した作戦においても彼女は最前線で戦っていた。
大乱戦で混乱した戦場、
彼女は視界不良で敵味方の区別がつき辛い中、近付いて来るのを幸いと、
乱戦に移行し数で劣る人類側の不利を何するものかと降り続けた刀は、着実に戦況を覆していった。
そして、彼女が相手の指揮官と思わしき個体を切り捨てたとき、一代反抗作戦は人類側の勝利で幕を下ろした。
彼女は全てを守った……筈だった。
しかし、戦場から帰還した彼女を迎えたのは、疑惑の目と冷たい手錠であった。
そのとき、彼女は気づいた、
彼女と並んで戦場を駆け抜けた仲間達は、一人を除きいなくなっていた事に、
周囲の彼女をみる目が、まるで化け物をみる目になっていた事に、
私は…………
ザザザザッ……
ノイズがひどくなりすぎて記憶が断片的にしか見えなくなってきた。
時は経ち、磨耗した心に残ったものは戦いへの渇望だけ、
全てを失った彼女には、砲火の飛び交う戦場こそが安息の地となっていた。
ただ、戦い、
ただ、敵は沈め、
ただ、勝ち続ける。
そこに意味は無かった。
その行いに意味は無かった。
それしか彼女の価値は無かった。
戦場にて砲弾が無くなって敵を沈めることが出来ない状況を嫌い、愛用の軍刀一本を担いで出撃し、敵を斬り捨て、燃料がなくなれば泊地に帰還して補給と整備を行い、すぐさま戦場へと舞い戻る。
そんな日々を毎日続けていた。
彼女は『満ち足りて/飢えて』いた。
そして幸せだった。
だが、そんな日々も長くは続かなかった。
どんな事にも終わりは来る。
それを彼女が『望まない/望んだ』としても
終わりは呆気ないものだった。
いつもと変わらぬ戦場で、いつもと変わらず敵を斬り捨てていると、彼女に向けて一発の砲弾が飛来した。
切り捨てられ、沈んでいく深海凄艦が苦し紛れに放った、至近弾にもならないであろう余りにも精度の欠けた一撃。
いつもであれば簡単に避けれていただろう。
しかし、その一撃は彼女を……彼女の運命を捉えた。
砲弾の先、視界の隅に映った人影を見た瞬間、
彼女はその砲弾の前にその身を晒していた。
それは体を酷使し続けた代償だったのか、それとも深海凄艦の最後の執念だったのだろうか、彼女が受けた砲弾は、たった一撃で彼女の体を打ち砕いた。
崩壊して逝く体、イカれて何も聴こえない耳、暗く染まる視界、
沈んでいく意識の中で最後に捉えた味方の姿、
私の血で顔を紅く染めた
それは歓喜、
この世界に来てから始めて『守る』事が出来た為の感情の発露、
この感情こそワタシが私である証、
守りきった
もう動かない口を動かして世界に向けてこう告げる。
Гあぁ、私はここに
水面に沈み行くなかで私は……たぶん、笑っていた。
世界が黒に染まる
______
意識が沈んでいく、深く、深く、まるで誘われるように一切の抵抗なく魂の奥底に引き込まれる感覚、沈んでいく度にこころがざわついていく。
沈み始めて一体どれくらい、時間がたったのか……、感覚では数十年単位でたった気がするけど現実では長くて1時間くらいなんだろうね。
さて、魂の感覚的にそろそろ底に着くんじゃないかな?
これ以上、見ることもないだろうし、そろそろ
そう思った時、突然、黒一色だった視界が深い蒼に塗りつぶされた。
視界に映ったのは先ほどの記憶で見た彼女が最初に生まれた場所、とても静かで落ち着く海の底、存在するのは何の船なのか分からないほどに朽ち果てた船の残骸とそこを住みかにする魚達だけ、その他には何も存在しない、だが、不思議と心が落ち着く場所。
そこに彼女は立っていた。
綺麗だった白い髪がボサボサになり、体の至るところに返り血と思わしき汚れがついてる等、元の姿からかけ離れているせいで分かりづらいが、頭の上で跳び跳ねているイヌミミ癖っ毛と赤い瞳を見れば誰であるのかは大体わかる。
いや……彼女の記憶を見た時点で私は確信していた。
私が彼女を忘れる筈がない、忘れる何て出来ない――
だって、
――彼女は私が艦これで初めて沈めてしまった艦娘なのだから……
Гてーとくさん、お久しぶりっぽい!!」
『夕立』はそう言って無邪気に笑った。
夕立Гハンモック張ってでも戦うよ!」(内臓ポロリ)