一人の少年が、目の前の何かを守ろうとする話ß   作:青猫ハマト

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なんか書いてみた


転生

「ッらぁ!」

 「ガァッ!」

 

 目の前の男に殴られる。

 口や鼻から血が出てくる。

 辺りを見れば、男の仲間が数人といる。

 

 「ッ!」

 

 鈍い音と共に骨の何本かが折れた。

 感覚の麻痺なのか、痛みは数瞬遅れてやってくる。

 何度殴られただろうか。

 もう目を開けてられない。

 筋肉の一つ動かそうとすれば、ギシギシと嫌な音をたてながら僕に苦痛を与える。

 

 「は、ヒァハハハ!!」

 

 目の前の男は笑っていた。

 何処が起点でこうなった?

 必死に思い出す。

 そうだ、たしか買い物帰りだったな。

 

 

 数十分前。

 

 「さあて、今日の飯も買ったし、そろそろ帰るかな」

 

 今日は良いこと尽くしだった。

 お金を拾ったりとか、くじ引きで当たったりとか。

 些細な事だが、僕にとっては幸せだった。  

 そう、浮かれていたんだろう。

 

 僕は前に人が居たことを知らずにぶつかってしまった。

 

 「ごめんなさい!」

 「アァ?」

 

 めんどくさそうなタイプだ。

 こういうのは言うことに従うか逃げるかが一番だけど、まあ、どうせ金をたかるんだから払ってやるか。

 

 「オイ、てめえ。なにしやがんだゴラァ!」

 

 ほらきた、にしてもテンプレすぎて逆に怖いな。

 そんな事を思いながら、財布を取り出そうとしたときだった。

 

 急に、拳が飛んできた。

 いきなりの事態に対応できる訳でもなく、その拳が顔にめり込んだ。

 

 ハアッ!?急に殴りかかってきた?

 こいつは周りの目もお構いなしか!?

 こんなことすればすぐに警察呼ばれるぞ。

 

 辺りを見回す。

 今の時間、僕が買い物をしている商店街は客で溢れかえっていた。

 しかし、違和感を感じる。

 此方を見ている人は居るものの携帯を出す気配はない。

 それどころか同情の目で此方を見ている。

 

 僕は一目散に逃げた。

 客の間をすり抜けながら逃げていく。

 

 「あら、可哀想に。高見家に目をつけられるなんて」

 

 周りから聴こえるそんな会話で思い出す。

 高見家、そうだ!天下の高見家だ!

 ここら辺一帯を縄張りにしてる名家じゃないか!

 父親は人格者だって聞くけど、息子はこんなに違うのか!

 

 とにかく、走る走る走る走る。

 捕まればどうなるか分からない。

 幸いめんどう事の嫌いな客が避けてくれる上に僕のほうが足が速い。

 

 不意に、誰かにぶつかった。

 

 「ッ!すみません!」

 

 そう言って走ろうとする。

 すると腕を掴まれた。

 

 「ッ!すみませんって言ってるじゃないですか!通してください!」

 

 それでも離さない。

 とうとう追い付かれ捕まってしまった。

 

 「よくやった。近藤」

 「ありがとうございます」

 

 高見が褒め、男...近藤が言葉を返す。

 

 グルだったのか。

 高見が数人の男を呼ぶ。

 

 そして、今に至る。

 

 

 「てめえが、てめえが悪いんだ!俺の機嫌のワリィときにぶつかって来やがって!勘づきすらしねえのか!」

 

 無茶言うな。俺はエスパーじゃねえ。

 

 ああ、自分の内臓がかすかに見える。

 

 「ふ、ふヒィハハハハ!死ね!てめえがワリィ!死んで償え!俺のせいで死ぬんじゃねえ!テメェが死ぬようなことしたのがワリィんだ!」

 

 それで、死ぬんなら今頃死人で埋まってるよ。

 クソ、息が出来ねぇ。

 死ぬのか?

 やだなぁ。死にたくねぇな。

 まだまだやりたい事だってあるんだ。

 

 ゲームしてぇよ。

 これがゲームだったらセーブ地点に戻れるんだけどな。

 ああ、あの格闘ゲーム。

 あれだけまだかクリアしてなかったよな。

 友達とやる約束してたのになぁ。

 今週発売のやつ、やりたかったのになぁ。

 

 死ぬ間際でゲームの事を考える俺も俺かな? 

 

 くっそ。死にたくねぇよ。

 なんでこんなのに殺されねぇといけないんだよ。

 

 段々と脳が機能しなくなってくる。

 手足が動かない。

 動かそうとすら思えない。

 指の一つも、唇の一つも動かない。

 ドク、ドクという心臓の音がなくなった。

 喉に蝋とが流されて、息が出来ない。

 血が巡らない。

 動かない。動けない。

 考えることすら苦痛に感じる。

 感じることもままならなくなっていく。

 

 

 死んだ。

 

 

 

 「知らない天井だ、って言ってみたかったけどいざ言ってみるとそこまで心に響かないな」

 

 目の前に広がるのは、白。

 白。白。白。白。

 純白一筋の床に。天井に。壁に。

 長い時間いれば精神が崩壊してしまいそうな混じりけ一つない白が目を埋め尽くす。

 

 「あ、起きた?」

 

 不意に声が聴こえた。

 右へ、左へ、上へ、下へ。

 首を動かすも声の主は見当たらない。

 

 「ああ、僕は君には見えないよ。まあ、僕にも僕は見えないんだけどね」

 

 あんたは誰だ?

 そう聞きたいが口が動かない。

 いや、口が動いているにも関わらず声が出ない。

 しかし、それは気持ち悪いものではなく。

 むしろ心地よくすら感じた。

 しかし、何でだ?さっきは喋れてたのに。

 

 「さて、君に対して一方的に話をさせてもらおう。」

 

 「まずは、僕について話そうか」

 

 「僕は概念」

 

 「この空間とともに生まれ今まで存在していた」

 

 「僕の仕事は世界を繋ぎ止めるというものだ」

 

 「これを見てごらん」

 

 フッと風のようななにが通りすぎ、目の前には様々な光が浮いていた。

 

 「世界はこの様に存在している」

 

 「一つ一つがバラバラに生まれ、繋がりを持つ」

 

 「世界と世界を繋ぎ止めるもの、それが君たち動物なんだ」

 

 「僕と同じように考えることができる君たちは僕の概念を取り込んでいく」

 

 「そして、世界を物語として、現実とは違うものとして存在を残す」

 

 「それが世界を繋ぐものなんだ」

 

 「ん?話が見えないかい?」

 

 「そうか、じゃあ単刀直入に言わせてもらう」

 

 「君が将来イレギュラーとなり、繋がりを消してしまうことが確認できた」

 

 「だから、殺した」

 

 ...殺した?

 死んだ、じゃなくて。

 殺した?

 

 「君がイレギュラーを起こす世界は膨大すぎた」

 

 「だから、唯一君がイレギュラーを起こさない世界に送らせてもらう。拒否権はない」

 

 ちょっと待ってくれ。

 本当になんだか分からない。

 

 「分からなくてもいいんだよ」

 

 「どうせ君は記憶を無くす。そう悲観するものではない」

 

 何だ!

 何が言いたい!

 記憶を無くす?

 悲観するな?

 意味が分からない。

 

 「さて、時間だ。残酷だが、これも世界の為だ。割りきってくれ」

 

 待て、待ってくれ!

 まだ、分からない事が!

 おい、あんたは!

 何が!

 どうなって!

 

 「じゃあね」

 

 

 

 

 

 目の前に広がるのは黒。

 黒。黒。黒。黒。

 純黒だった。

 先程とは対称的に。

 歩き回る。

 何故か分からない。

 走り回る。

 体が勝手に動き出す。

 疲れた。足が痛い。何故か喉までも痛い。

 何もかもが痛い。

 なのに、止まらない。止まれない。

 

 一筋の光が見える。

 走り出す。

 痛みも、疲れも忘れて。

 救われる。

 何が、何をか、が分からない。

 けれども、確信した。

 

 光にたどり着く。

 燃えた。

 熱い。暑い。篤い。厚い。

 灰になりそうなほどの痛み。

 

 光は身体を燃え付くし。

 

 再び彼は死を経験した。

 




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