一人の少年が、目の前の何かを守ろうとする話ß 作:青猫ハマト
受験終わったので、少しずつ更新していきたいと思います。
「はぁ、はぁ、ここまで来れば安全だろう」
偶然にも僕をあの狂暴生物から助けてくれた冒険者らしき人物、ライクは数百メートル程僕を担いで移動した。
後ろを見てもあの化物は見えない。
なんとか逃げ切れたらしい。
ふむ、まさか急にあんなのから襲われるとは思いもよらなかった。
勿論、テンプレと言うものを僕が危惧してなかった訳ではない。
だが、いくら何でもあの不意討ちはひどいではないか。
「ところでリク」
「あ、はい。何でしょう」
「お前、なんであんな所にいたんだ?」
さて、困った。
こういった時のために返答を用意していた僕だが、本当に異世界に来るとは考えもしなかったため、7割、いやむしろ9割くらいは忘れている。
というか、暇潰しで異世界に来たときのことを考えていたなんて僕はただ痛い奴じゃないか。
友人が僕のノートを見て顔をひきつらせていた理由が今分かった気がする。
さあ、散々長考している僕だが、考えている間は時間が進まないなんて特殊な状況なんてものはなく、刻一刻と進む時の中で、僕の前にはおそらくなかなか返答がないことを不審がっているような顔の恩人がいるわけだ。
つまり、僕に考える時間はあまり残されていないということであって、そのくせ何も考えていない僕もいると言うわけだ。
万事休すと思われるこの状況。だが、僕には秘策がある。
異世界で変な所にいたことを不思議に思われる?
なら、簡単だ。
「すみません、なにも覚えていないんです」
命の恩人に対して嘘を吐くのは少々いたたまれない気分ではあるが、自分の為だと言い聞かせ、自身を正当化させよう。
「記憶がないのか?何も?一から十まで?」
「はい、一切。もう何にも」
「一切。全て。万物。何もかもってことでいいんだな?」
「はい」
何だろうか彼の質問は。
「そうか。ああ、そうだ、そこの瓶を開けてくれないか?」
「あ、はい、わかりました」
なんだこの瓶。複雑な構成だな。
「ああ、そうだ少年」
「なんです?」
「嘘は良くないぞ」
「...!?な、なんのコトデス?」
「万物を忘れておいて言葉が喋れること、そしてたじたじながらも複雑な開封口の瓶を開けれること」
前言撤回。こいつやばい。
「あ、あはは。すみません」
「ふむ、認めたな。まあ、半信半疑だったが」
「え」
「別にいくらでも誤魔化しようがあるだろ」
、、、確かに。言葉の綾だっていえば何とでもなるな。
うん。前言撤回。僕がバカなだけだったようだ。
だが、そうか、そうくるのか。
不味いな、気まずくなるじゃあないか。
僕の秘策、記憶喪失が使えないとなると、本当に万事休すだし、渾身の必殺技が軽くはね返されたことで、次に何を言えばいいのか分からなくなり、とにかく気まずい。
おい、誰かこの重い空気を破ってくれ。
僕がそんなことを考えていた時だった。
目の前の空気が光出した。
うん、確かに重い=暗いみたいな考え方もあるし、それを破るかのような光は僕の要望に応えてくれたようなものだろう。
だけれどもだ。
このタイミングでこれは酷い気がする。
どう考えても転移のようなものだろう、これは。
これでは逃げたと思われ、誤解に誤解を招くような状況に陥るではないか。
僕の懇願虚しく、目の前は暗くなった。