碧陽学園生徒会の生徒会庶務男子と広報女子(凍結中) 作:ラインズベルト
「世界がつまらないんじゃないの、貴方がつまらない人間になったのよ!」
会長が無い胸を張ってまた本の受け売りを偉そうに語っていた。それに杉崎はなぜか頷き、深く考え出した。鍵は変なとこでマジメだからな……。
俺は世界がどうとか考えたことがない。今さら考える必要もないと思う。世界なんて不条理だ。いくら願っても、努力しても、成功しないことだって、山のようにあるんだから。
「じゃあ童貞も悪くないってことですか?」
「ぶっ!?」
杉崎の信じられない返答に会長はお茶を盛大に吹き出してしまった。汚なっ!拭いておこう……。俺はポケットからティッシュを取り出し、テーブルを拭いく。会長は涙目になりながら杉崎を睨む。
「どうしてそうなるのよ!?」
「甘いですね会長。俺の思考回路は基本、まずはそっち方向に直結します!」
「なにを誇らしげに!杉崎はもうちょっと副会長としての自覚をねぇ……」
「自覚ならありますよ、ここが俺のハーレムだっていう自覚なら十分―――」
「ごめん、副会長の自覚はいいから、そっちの自覚を捨てることから始めましょうね」
相変わらず二人はコントのようなやり取りをしている。面白いって言えば面白いかもしれない。
一人はこの生徒会の会長・桜野(さくらの)くりむ。どこからどう見ても小学生としか思えない容姿&頭脳のスーパーお子様。どうして高校3年生になれたのか不思議でならないが、全校生徒に人気のある女性だ。
もう一人は、この生徒会の数少ない男子の片割れの杉崎鍵(すぎさき けん)。見た目はかっこいいのに、常日頃からハーレムハーレム言っているせいかそこまでモテない二枚目半な男。一応、俺の親友でもある。
「杉崎も神崎を見習ったらいいよ。あと神崎、拭いてくれてありがと」
「いえいえ」
あ、言い忘れていたが俺の名前は神崎健吾(かんざき けんご)。役職は会長補佐。先生曰く、桜野会長だけでは心配だから、だそうだ。
まぁ、仕方無いと思う。あの見た目じゃあ……。まぁそれは置いておく。この生徒会室には桜野会長や杉崎の他に、生徒会役員がいる。
今のところ全く喋らずに、ポツンと隅に用意された椅子に座って、パソコンで作業をしている。彼女は庶務の姫川葵(ひめかわ あおい)。基本的に無口。かなりの美少女なのだが、態度はそっけない。
「かいちょー」
「なによぉ」
「好きです。付き合ってください」
「にゃわ!」
桜野会長に対する杉崎の唐突な告白に、桜野会長は取り乱し、ゴミ箱に投げ入れようとしていたであろう紙くずをゴミ箱から外した。
「なんで杉崎はそんな軽薄に告白できるのよ!」
「本気だからです!」
「嘘だ!」
「『ひ○らし』ネタは古いですよ会長…」
「大体杉崎にどこに本気があるのよ…生徒会に初めて顔出しした時のせりふ、覚えてる?」
「えっと…なんでしたっけ?『俺にかまわず先に行け!』でしたっけ?」
相変わらずこの二人はコントのようなやり取りをしている。いつもいつも飽きずによくやるよ。俺は興味ないけど、たまに面白いと思うからこのままでも良いんじゃないかと思う。
「あれ?違いますか?じゃあ…『ただの人間には興味ありません。宇宙人、未来人――』」
「危険よ杉崎!いろんな意味で」
「大丈夫です。原作派ですから」
「何の保障!?あとアニメの出来は神だよ!?」
桜野会長も見ていたらしい。まあ俺はどっちでも良いんだけどな。楽しめればそれで良くないか?とはいえ、本は好きだからよく読むが。
「皆好きです。超好きです。皆付き合って。絶対に幸せにしてみせるから。」
鍵がこの生徒会に顔を出した時の言葉を言う。俺と葵はその時いなかったけど。いきなりそんな言葉を発するのはさすがにどうかと思う。
「そうよそれ!まったく…誰でもいいから付き合ってなんて誠実じゃないわ!」
「一途なんです!美少女に!」
「括りが大きいわ!」
「希少種ですよー美少女。それによくないですか?最初から「俺は!ハーレムエンドを目指す!」って宣言するの」
「あんたはそこらのギャルゲ主人公とは基本スペックが違いすぎるわ」
「キモい」
確かに。葵や桜野会長の言うとおり、杉崎は主人公と言いがたい。てか言いたくない。
「……杉崎は主人公の友人かギャグ要員の方が似合ってるよな」
「おい健吾、葵!お前らなんでほとんど喋らないの!?そして俺の親友だよな!?酷くないか!?」
「「事実だろ(だよね)?」」
「そ、そうよ!神崎たちの言うとおりよ!」
鍵が「顔はいいのにー!」とか言っているが無視すれば良い。杉崎はろくなこと言わないから。
若干涙目になりながら鍵はゴミ箱の前にあった会長の捨てそこなった紙くずをゴミ箱に投げ入れる。
「…杉崎ってさ、さりげないところで優しいわよね…無意識に」
「え?…こういうギャップって好感度上がるでしょ?」
「狙い!?しまった!あたしの中の杉崎への好感度は若干上昇してしまったわ!?」
本当、最近見てて飽きなくなってきた。仲良いな、2人とも。そんな時、生徒会室の扉が開かれた。
「キー君、アカちゃんをいじめないの」
この人は紅葉知弦(あかば ちづる)先輩。おこさまな会長とは違い出るとこは出てる綺麗な先輩で、クールビューティーという言葉が合う人だ。ほんとに二人が親友って言われても不思議だよな。
「やだなぁ知弦さん、弄ってるんじゃなくて辱めてるんです」
「余計に悪質よ?それ」
紅葉先輩は半ば呆れたように鍵をみる。鍵はいつものようにシレッと言う。
「大丈夫です同意の下ですから。てか今日集まり悪いですね俺のハーレム」
すかさず桜野会長が「嘘だっ!」と叫ぶがスルーされてしまっている。
「ハーレムじゃなくて生徒会ね。それにキー君のそういうところ直せないのかしら?ねぇ、」
「分かってないですねぇ、、知弦さん。基本的に好感度は直接会わないと上昇しないんですよ。ほら、ギャルゲだって、よく移動場所でヒロイン決まるでしょう?」
「当然の知識のように言われても困るけど」
「スギにとって私たちとの会話はゲーム感覚ってことなんだね?」
「違うよ!?」
あ、違うのか。なーんだ、みんなに言いふらそうと思ってたのに。つまらないじゃないか。しかし葵がいつになく喋ってるな。
「俺が言いたいのはですね?生徒会室に来ないことには俺との愛を育めないわけで――」
「だから来ないんじゃないかしら。むしろ」
遮るように紅葉先輩からさらりと酷いツッコミが飛ぶ。知的でクールなイメージが強い紅葉先輩から飛ぶツッコミは、鍵にとって大ダメージになったみたいだな。
「でも、知弦さんは俺との愛を育みに来てくれたわけですね!」
「……………。……あ、うん、そうね」
酷い仕打ちに鍵は泣きそうだ、泣くなよ?それと、あの人追い討ちに出たぞ。否定よりも酷いダメージになるな、あれは。しかもなんか勉強し出したし。
「く……。しかしこういうクールキャラこそ惚れたら激しいに違いない!」
「あ、それは正解。私小学校のころに好きな人に1日300通送ったりして最終的に精神崩壊まで追い込んだりしたし…あなたはどうかしら」
細目で口元に薄ら笑いを浮かべながら鍵を見つめている紅葉先輩。そのことを聞いた俺たち四人全員青ざめた顔で知弦先輩を見る。
「分かりました…」
「あら、それを聞いても私を受け入れてくれるの?いま私の中のキー君に対する好感度がぐんと「知弦さんとは、体だけの関係を目指します!」……」
はぁ、こいつは馬鹿なんだな?どうしようもなく馬鹿なやつだな」
「やっぱお前俺を親友とか思ってないのか!?」
あれ?喋っちまったのか?え?ミスったな。
そんな鍵とのやり取りをしているうちに、会長がどこからかお菓子を出して食べようとしていた。
「「太りますよ」」
鍵とセリフが被った。まぁ誰しもが思う事だ。あんなに甘いお菓子を毎日のように食べてたらな……。
「ふ、太らないよ。私、太りにくい体質だし」
そう言いながら会長はお菓子を口の中に放り込む。その刹那、紅葉先輩と俺はアイコンタクトを交わす。よし、やるか。
「えっとこの問題は…『メタボリックシンドローム』ね、よし正解っと」
「近年多いですよね、太ってる人。俺の昔からの同級生にもいますし」
「…………」
この会話を聞いた会長が涙目の状態で椅子から崩れ落ちる。その間に俺は知弦先輩とほくそ笑む。ま、痛い目に遭ってほしくはないし、これでいいはず。
そのとき鍵がこっちを引きぎみに見ていたように見えるけど、気のせいだろう。そして鍵が桜野会長に近づいていく。
「会長、心配しないでください。もし、もらい手がいなくなったら……」
「え、す、杉崎、太って醜くなった私も好きでいてくれるの?美少女じゃなくても?杉崎……あなた……」
「もらい手がいなくなったら、その時は……仕事に生きればいい」
「リアルアドバイス?!」
「俺、陰ながら応援しますから!ブログに匿名で励ましのメール送りますから」
「陰からなんだ!匿名なんだ!太ったら見捨てるんだ!」
「頑張れ!俺のハーレムに留まるために!」
「あ、なんか急に太ってもいい気がしてきた」
そうこうしていると、また生徒会室の扉が開いて残り二人のメンバーが入ってきた。