ゼロたちが来る数時間前の紅魔館
「おやつ~!おやつ~!」
紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは、吸血鬼である。
とは言っても見た目の通りまだ子供みたいなもので普段は年頃の少女のように身近なことでよくトラブルが起きる年頃でもある。それが一人ならまだしも姉妹がいるなら尚更だ。
この日、彼女は楽しみにしていたおやつを取りに厨房に向かっていた。
普段館を仕切っているメイド長の咲夜は、人里に買い足しに行っているため今日は自分で間食を取りに行かなければならない。
しかし、本日の間食。人里で話題のビッグプリンアラモードという一日数個限定の販売の洋菓子なのだ。
普段は、妖精メイドを無理やり取りに行かせる彼女でもこの日ばかりは自分の足で取りに行くと決めていた。
厨房に着くなり彼女は、早速器を用意する。そして、冷蔵庫にしまってあるプリンの器を取り出そうとする。
「プリン~プリ~ン!私のビッグプリ・・・・・・・・えっ?」
だがそこにはプリンの器がどこにもなかった。
不審に思った彼女はあちこちを探した出した。
器にわざわざ『レミリア』と自分の名前まで書いておいたのだ。なくなるはずがない。
五分もして厨房のゴミ箱に彼女の名前が書いてあった空っぽの器を発見。
「・・・・・・・」
これを見た彼女は怒り爆発。その直後に妹であるフランドール・スカーレットが怒りの形相で厨房に入って来た。
「「フラン(お姉様)!!」」
二人は同時に、お互いのことを睨み合う。
「「私のプリン(イチゴパフェ)食べたでしょ!!」」
二人の怒りは収まらない。
「「貴方(お姉様)が食べたんでしょ!!」」
「私は知らないわよ!貴方が食べたんでしょ!」
「知らないもん!お姉様が食べたんでしょ!!」
「・・・・・・っという流れでお二人は、言い合いになってとうとう弾幕勝負にまで発展してしまって今に至るというわけです。」
“こあ”こと小悪魔は、二人に説明する。
「・・・・・そんな小さなことで喧嘩していたのか。それも屋敷がふきとびかねない規模で。」
ゼロは、二人の喧嘩を見ながら言う。これが姉妹喧嘩だというのには限界があるような気がする。
彼女たちがレプリロイドだったら確実にイレギュラーに認定・・・・・・いや、見ただけでイレギュラーとして排除されてもおかしくない。
「姉妹同士で争うなんて・・・」
アイリスは、複雑そうな顔で二人を見ていた。ゼロには、なぜそういう風に見ているのか理解できていた。
彼女にも兄がいた。
その兄も軍人としてのプライドが高過ぎる為に融通の利かない一面があったが妹で会ったアイリスに対しては良き兄であった。ゼロが知っている限りでも二人が言い争う所は見たことがない。それ故に他の姉妹とはいえ争っているところを見ると苦しく感じるのだ。
「・・・・・・なんとか彼女たちの喧嘩を止めてお互いの話をちゃんと聞くという事はできないのか?」
「無理ですね。お嬢様たちは一度喧嘩すると雨が降るか、咲夜さんが止めに入るか、霊夢さんたちを呼んでくるかしないとやめませんし。後は・・・・・パチュリー様の魔法で喧嘩を中断させるぐらいなんですけど今の状態では紅魔館を破壊しない様結界を維持するのが精一杯ですので・・・・」
「あの・・・・・・その維持する方の役割。私が変わりますか?」
「「「えっ?」」」
三人は同時にアイリスの一言で驚く。
「この間戦闘用に改造されたとき『フォースバリア』の説明聞いたから時間稼ぎぐらいはできます。」
「何を言っているんだアイリス!?確かにパーセプターの説明では、空間全体を覆うということはできるがその分お前の体に負担がかかるんだぞ!」
「でも、私このままあの二人が争っているところを見たくないの。姉妹同士で喧嘩するなんて・・・・・」
アイリスの言葉でゼロは、何も言えなくなる。
確かにこの喧嘩が続けば建物自体が崩壊しかねないし、大きな騒ぎになりかねない。
しかし、パーセプターの話では長時間バリアを張り続けた場合アイリスの体に負担がかかってしまう。ゼロはそれが心配なのだ。
「・・・・・・別にそんなに長くかかる呪文じゃないから少しの間変わってくれるなら助かるわ。」
そんな心配しているゼロを他所にパチュリーはアイリスの提案に乗る。
「はい。」
「アイリス・・・・」
「大丈夫、心配かけるようなことまでにはしないから。」
アイリスは、パチュリーの前に立つ。
「私が結界を解くと同時にここら一帯をその何とかバリアで包み込んでその間に私は、呪文でレミィたちを止めるから。」
「分かりました。」
「いい?いくわよ。」
パチュリーは、一旦結界を解く。同時にアイリスは体内に内蔵されている『フォースバリア発生装置』を作動させる。波紋のように発生するバリアは結界に変わって吸血鬼姉妹を包み込む。
そんなことにも気づかない二人は、荒い息を上げながら決着を付けようとしていた。
「はあ・・・はあ・・・・フラン、貴方見ないうちに弱くなったんじゃないの?私よりも力があったはずのあなたが私よりも息が上がるなんて・・・・・・・」
「お、お姉様が強くなったんじゃないの?私は昔から弱くなってなんかいないのに・・・・・・・」
二人は、紅魔館が吹き飛ぼうともお構いなしにお互いのスペルカードを唱え始める。
「ここで決めるよ!スペルカード、『禁弾「過去を刻む時計」』!!」
「貴方こそ覚悟しなさい!スペルカード、『神術「吸血鬼幻・・・・・えっ?」
レミリアがスペルカード宣言をしようとした瞬間、彼女の頭に何か冷たいものが当たる。
「えっ?」
「何々?」
二人は、勝負を中断して上を見上げる。すると流水が二人に降りかかった。
「「きゃあああああ!?」」
二人は喧嘩していたことを忘れ、大慌てで逃げようとするがフォースバリアのせいで逃げられないことに気づく。
「パチェ~!!お願いだから出して~!!」
レミリアは慌てて言う。
「二人は何で慌てているんだ?」
「吸血鬼は流水に弱いのよ。つまり、人工的に室内に雨を降らせばたちまち大慌てというわけ。アイリス、もうバリアを解いてもらって結構よ。」
「はあ、はあ。」
アイリスは、バリアを解除すると膝をつく。ゼロは慌てて駆け寄る。
「大丈夫か?」
「うん。訓練だと自分を包むぐらいの範囲しかやったことがなかったから・・・・でも、少し疲れちゃった。」
「無茶はするなと言った筈だぞ。」
「ごめんなさい。」
そんなゼロたちを他所に服が濡れたレミリアたちは不満な顔でパチュリーのところへと来る。
「ちょっとパチェ!どうして邪魔なんてしたのよ!」
「・・・・・全く。レミィ、喧嘩するのはあなたたちの勝手だけど場所を考えてやってほしいところだわ。結界を張って被害を食い止めている私の身にもなってちょうだい。」
「だってフランが・・・・・」
「私じゃないもん!やったのはお姉様の方だもん!」
二人はまた喧嘩を始めようとする。
「あの・・・・・」
「「うん?」」
「私が言う事じゃないけどまず落ち着いて話をした方がいいんじゃないかな?」
アイリスの言葉で二人は沈黙する。
場所を変えてレミリアたちは、それぞれの話を始める。
レミリアのプリンの話も含め、フランもおやつとして食べる予定だったイチゴパフェの入れてあった箱が外に捨てられていたのが始まりだという。
彼女曰く、「外に捨てられているのなら一番の可能性は美鈴の可能性はあるものの美鈴は厨房に入る機会が少ないため低い。しかし、パチュリーも図書館に引き籠っているためあり得ない。そして、この場にいない咲夜を覗けば残った犯人の可能性は姉であるレミリアしかいない。」という事だ。
「・・・・・話も聞かずにお互い犯人だと決めつけるとはいかんことだな。」
ゼロは、レミリアとフランを見ながら言う。
「だって・・・・・」
「楽しみにしていたんだもん・・・・」
二人は不満そうな顔で言う。そんな二人に対してアイリスは優しい声で声をかけた。
「その気持ちはわかるけどちゃんと話さないで喧嘩をするのはよくないわ。」
「でも・・・」
「かけがえのない姉妹なんだから、お互いの話を聞かなくちゃダメなのよ?」
「「うっ・・・・」」
アイリスに注意されて二人は返す言葉がない。
(・・・・・・・なんかレミィたちが親に怒られている子供にしか見えないわね。)
パチュリーはその光景を見て何となくそう見えた。
「さあ、お互い疑ったことをちゃんと謝って。」
「・・・・・・お姉様、ゴメンなさい。」
「・・・いいのよ。私もちょっとムキになっていたから。私もゴメンなさい。」
レミリアとフランはお互い頭を下げて謝った。
「はい、これで仲直り。」
「・・・・・しかし、一体誰がこんなことをしたんだろうな?」
ゼロは、首をかしげながらふと思う。
「ただいま帰りました、お嬢様。」
そこへ一人のメイドが部屋に入って来た。
「あっ、お帰りなさい咲夜。」
(あの少女が美鈴が言っていた咲夜という上司か。結構温厚そうな感じがするが・・・・・・)
ゼロが咲夜を見ながらそう思った。
「なんか騒いでいたようでしたが何かあったんですか?」
「あぁ、実は・・・・・・・・」
少女説明中・・・・・・・・・・・
「そう言う事でしたか。」
咲夜は納得したかのように言う。レミリアとフランは不思議そうな顔で見る。
「実は、お二人のデザート、昨日魔理沙が屋敷に忍び込んだ時に盗み食いされたようなんです。仕方なく、それも含めて今日人里へ買いに行ったのです。」
「「・・・・・・・・」」
二人は、思わず顔を見合わせながら唖然とした。
「あっ、そう言えば昨日も何冊か図書館から持っていかれていました。」
小悪魔も思い出したように言う。しかし、一番驚いていたのはゼロたちの方だった。
「・・・・・いや、それは何か変だぞ?昨日家に戻ってきたときはそれらしき本はなかった・・・・・まさか・・・・」
思い出してみれば昨日は妖怪の山にイーグリードと模擬戦をしていたためいなかった。アイリスも寺子屋に行っていたので昨日の昼間魔理沙が何をしていたのかは知らない。その空白時間で行動していたとなれば・・・・・・・・。
「ゼロの奴、二人揃って遅いな。専ら咲夜とかに警戒されたか?」
日が暮れる中、家の中の見知らぬ部屋で魔理沙は、そんなことを言いながら何かを練成しようとしていた。よく見るとテーブルの床に隠し扉があった。
「へっへへ・・・・一昨日、霊夢を通じて萃香に地下室を造らせといて正解だったぜ☆ここなら盗んでいても閉じちまえばバレないからな。今日は数冊で我慢して明日出かけたときにまた取りに・・・・・おっ?」
魔理沙が地下室の扉を閉じたと同時に玄関からノックの音がした。
「やっと帰って来たか。どれどれ、どんな魔導書を借りて来て・・・・・・・」
魔理沙は玄関を開けた瞬間目の前が真っ白になった。
「魔理沙、お前は最早イレギュラーだ。」
「ごめんなさい、魔理沙さん。ちゃんと反省してください。」
「魔理沙~!よくも私のプリンを~!」
「魔理沙、酷いよ!フランのイチゴパフェを食べちゃうなんて!」
「魔理沙、今回は私が直々に返してもらいに来たわよ。」
「昨日は忙しくて言えなかったけどお嬢様たちのデザートを食べた罪、償ってもらうわよ?」
「・・・・・・・・・・・・・あれ?」
そこには、戦闘態勢万端のゼロ、アイリス&紅魔館組の面子が待ち構えていた。
その後、魔理沙が意識を取り戻したのは永遠亭の病室ベッドだったという。
全身包帯ぐるぐる巻きで。
ちなみに退院後、ゼロたちから「今後は、紅魔館周辺を見回るようにするから下手に忍び込まないように。」と忠告された。
う~ん・・・・・Xの漫画版中古で探してみたけど見つからない。
思えば、ロックマン系ってアニメ展開している作品少ないんだよなぁ・・・・・。
本作の連載再開について
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