ゼロだけの時間   作:海棠

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もしもスタンド能力が一つだけもらえると聞いたら僕はやっぱりザ・ワールドが欲しいです。


第二部:ゼロのルイズはためらわない/Phantom Albion
Act8「いざ出発/Non c'è perdita di dubbi」


次の日の夜

 

「ところで、ミス・ツェルプストー」

「ん、なにかしら?」

「・・・どうやって行くんだろうか?」

「・・・そういえばそうね」

そう言いながらギーシュたちはヴェストリの広場まで歩いていた。ルイズとシエスタはすごく面倒そうな雰囲気を垂れ流しながら後ろをついてきていた。

 

「そういえばルイズ」

「・・・んぁ?」

「あなた、意外と優しいのね?」

「なにが?」

「お金を払うだけで済ませるなんて。あなたなら領地ぐらいとるものだと思ってたわ?」

「いや、最初は私もそれをする予定だったわ。だけど」

「?」

「私には帰る『家』があるの。そこを捨ててまで報酬が欲しいなんて思わないわ」

「でも、8600で済ますなんて君にしてはまだ良心的じゃないか?」

「は? 私は7500とか8600とか書いた覚えはないわよ?」

その場の空気が凍る。

 

「ど、どういうことだい?」

「言葉通りの意味よ。私はあの書類に8600という数字を書いた覚えはないって言ってるの。あなたたち、あの契約書の内容をきちんと見たのかしら? やれやれ、これだから目が節穴さんは困るのよね」

「ま、まさか・・・」

「えぇ。あそこにはきっちり12000って書いたわよ?」

すると周りが騒然となる。

 

「君、正気かい?!!」

「普通じゃない…」

「だますにもほどがあるわ…」

それに対してルイズはカチンときたが静かに言った。

 

「うっさいわね、これぐらい払ってもらわないと少なくとも私は張り合いがないのよ。あなたたちだってそうでしょう? 何か報酬がなければ、人間という生き物は本気で働くことなんてないのよ。聖人君子なんておとぎ話の存在でしかないわ。人は見返りを求めるのよ。それは金でも地位でも何でもいいわ。それに乗っかって何が悪いっていうのよ」

「だけどこれは姫殿下n「だからどうしたのよ。私は姫殿下だからって容赦はしないわ。彼女だって元をたどればただの人間じゃない」・・・ッ」

「・・・くるってる」

タバサがつぶやいた。不幸にもこれはその場にいる3人(キュルケ・ギーシュ・タバサ)の心の声だった。

それに対してルイズはニヤニヤしながら言い返す。

 

「狂ってる? そうかもしれないわ。だけどね、もしかしたらあなたたちの方がくるってるのかもしれないわよ?」

「どこが・・・」

「なんでそんなに命を捨てるような真似ができるのかしら? 私には理解できないわ。私だったら『名よりも命を惜しむ』わ」

すると全員が黙りこくってしまう。

はぁとルイズはため息をついた。するとそこに影が落ちる。

 

「「「「「?」」」」」

全員が上を見上げるとそこにはグリフォンがいた。

 

「あ、あれは・・・」

「グリフォンね」

そう言いながらルイズは時を止めた。

 

ドオォ――z__ン!!!!

 

とりあえず危険因子だしこの敷地内に侵入してるし迎撃しておこう。ルイズはそう思うと跳び上がってグリフォンの顔面をザ・ワールドで数発ぶん殴っておく。そして着地するとつぶやいた。

 

「そして時は動き出す」

するといきなり衝撃が来たグリフォンはバランスを崩して地に落ちた。ルイズはそれを見るとザ・ワールドをしまう。

それに乗っていた人物は慌てて呪文を唱えて浮くと地面に着地した。全員が杖を構える。

 

「待ってくれ! 私はアンリエッタ姫殿下の命令でここに来たのだ!」

すると全員が杖を下に向けた。・・・ルイズを除いて(・・・・・・・)

 

「自己紹介しようか。僕の名前はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。グリフォン隊の隊長をしているものだ」

するとルイズを除く全員が自己紹介をし始める。シエスタは爪を鋭くしながら、ルイズは杖を彼に向けながら後ろの方で待機している。

 

「僕の名前はギーシュ・ド・グラモン。由緒ただしきグラモン家の家系です」

「私の名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。ツェルプストー家ですがゲルマニアから留学してきました」

「・・・タバサ。ガリアから来ました」

すると全員がルイズたち二人の方を向いた。

ルイズたちは面倒そうに頬をかくと自己紹介し始める。

 

「・・・ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。ヴァリエール家の3女ですわ」

「シエスタです。色々ありましてルイズ様のメイドを務めさせてもらっています」

するとワルドはぱぁッと明るくなってルイズに歩み寄った。

 

「ルイズ! あぁ、会いたかったよ僕のルイズ!」

ルイズは吐き気がした。何言ってるんだコイツ、と。シエスタは恐ろしい形相をしながらルイズの一歩前に出た。

 

「・・・なんだい君は」

「これ以上ルイズ様に近づかないでもらえますか? 失礼なのは百も承知ですがなんだか気味が悪いです」

「それには同感ね。それに、私はあなたのことなんて知らないわ」

これは真っ赤な嘘である。ルイズはきちんと覚えている。だが今の彼女に彼は必要なくなっていたのだ。

 

「おいおい、冗談を言うのはやめてくれよルイズ」

「・・・気持ち悪ッ

「え、なんて?」

「なんでもないですわ」

ルイズは触ろうとしたワルドの腕を払いのけながら言った。

 

「私、知らない人には触られたくありませんの。少なくとも私はあなたを知りませんわ」

である。ルイズは彼を知っている。

 

「・・・まぁ、とにかく、僕は姫殿下からの命令で君たちをグリフォンで連れて行くように言われたんだ」

「そうなんですか?」

「あぁ、それでここまで来た。皆、乗って」

そう言われると3人は乗り始めた。しかし、ルイズとシエスタは一向に動こうとしない。

 

「・・・どうしたんだい、ルイズ?」

「書類は?」

「え?」

「あなたが先ほど言ったことを証明する書類はあるのですか? それぐらい持っているものでしょう? それを見せてもらわなければ、私は不安で死にそうですわ」

するとワルドは用意してましたと言わんばかりに書類を取り出した。そしてルイズに手渡す。

そして彼女はじろじろとその書類を見るとシエスタに手渡した。

 

「・・・これ、本当に姫殿下が書いたものですか?」

「どういうことだい?」

「・・・チッ。・・・もう一回言いますよ。これは本当に姫殿下が書いたものですか? そしてそれを証明できる証拠は? 私たちは姫殿下がこの書類を見ることなんかできないんですのよ?」

そしたら彼も書類の印を証拠とし、本物であることを示す。

が、彼女はあきれたように溜息をついた。

 

「姫殿下から信頼されているってことはそれだけ地位が高いということ、ですよね? 偽装することもできるのでは? あなたぐらいの地位ならできるでしょうし、何よりこれを証拠として出すのは馬鹿のやることです。

こんな奴に命を任せたくないわ。だから、私とシエスタは馬で行く」

するとワルドは面白いように顔を赤くしたり青くしたりした。3人はルイズとワルドを交互に見続ける。

 

「・・・ねぇ、ルイズ」

「なによ、キュルケ」

「あまりにも可哀そうだし…、一緒に行ったら?」

するとルイズは馬鹿を見るような目で呆れたようにため息をついた。

 

「あなた、これが国をかけた重大任務だということを忘れたのかしら?ピクニックに行くわけじゃないのよ?

そして私は何としてでも任務は達成しなければならないし、そのために不安要素は出来る限り排除するし、しなければならない。リスクは背負えば背負うほど足枷になるわ。そして勘違いしているかもしれないけど私は自分を過信しているわけじゃないわ。自分の能力は隠しておきたいの。あなたたちは自分の秘密を信頼していない(・・・・・・・)他人に見せたりする?

 つまりそういうことよ。わかったかしら?」

そう言うとルイズはワルドを見て言った。

 

「先導」

「え?」

「あなたは先導をよろしくお願いします。私たちは馬を行くのでその先導です。二回言わないとわかりませんか?」

「い、いや、わかった。努力しよう」

そう言うとワルドは3人に声をかけた。ルイズはシエスタと一緒に厩所に向かった。

 

「シエスタ」

「はい、なんでしょう?」

「あなたはここで帰りを待ってて」

「ゑ」

「これは貴族の問題よ。一平民であるあなたには荷が重すぎる」

「・・・ふざけないでいただけますか?」

「・・・」

「私はあなたに救われました。今度は私があなたに尽くす番です。ルイズ様」

「それが聞きたかった」

「え・・・?」

「ごめんね、ふるいにかけるようなことを言って。あなたの忠義がどれくらいか調べたかったのよ」

するとシエスタの目から涙がツツーッと流れ落ちた。

 

「・・・?」

「す、すいません。見捨てられてないと思ったら涙が…」

「泣くことは悪いことじゃないわ。泣くことは最大のストレス解消法なのよ」

そう言いながらルイズはシエスタを抱きしめた。

 

 

続く






ところで話が変わりますが平成ジェネレーションずFINALで出てくるライダー全員御リキャスト聞いて泣いて喜びました。東映さん仕事した。

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