インフィニット・ソング~繋がる無限の歌~&【異世界旅行】 作:金宮 来人
前回、先生が噛まれて感染した所からの続きですが、
此処からはオリジナルのルートになります。
元のシナリオから大きくかい離しますので、
読む際はそちらの事をご確認の上、ご了承ください。
では、授業を開始します。
朝になり俺は寝ずの番をして先生を監視していた。
「ん・・・ぅん・・あれ?私・・丈槍さん!?若狭さん!?恵比寿沢さん!?」
「落ちつけ。おはようさん・・だな。水でも飲んで落ち着いてくれ。」
佐倉先生に落ちつくように言いながら拘束を解き、用意していたコップに入れた水を渡して話す。
「え?・・織斑さん?」
「あぁ。とりあえず飲んでくれ。話はそれからだ。」
「え・・あ、はい・・苦い!?」
舌を出す様にしてソレをアピールした。なんだかそう言う反応は幼いよな。この人。
「手持ちの風邪薬を混ぜてみたんだ。」
「な、何故そんな事を!?怒りますよ!?」
「俺こそ怒っているんだがな。なぜ、俺が居ないうちに下に降りた?そのせいで何が起きたか覚えているのか?」
「え?・・あ、あれ・・私は・・はっ!?」
肩の噛まれた跡を調べているようだ。
「傷は縫合した。そもそも、感染は俺が持っていた神からもらった抗生薬を打った。コレで直せないのは運が悪かった時ぐらいだ。・・おそらくは、だがな。・・分かるか?お前等の軽はずみな行為で本当に貴重な物が無くなった。ソレは分かるよな?」
「・・貴方が持っていた一つしかない物なんですね?何故私に使ったのですか?」
「アンタが大人で、あの子たちを導いて行く責任が有るからだ。逃げるとは言わないよな?」
「・・逃げれるわけ無いじゃないですか。あんなにかわいい子たちを置いて。」
「それならいい。使う意味はあった。それだけだ。」
俺は風邪薬入りの水を飲む。苦い。
「コレは味覚が生きているかの実験用だ。もしも、それに気がつかなかったら、組織が壊死しているからな。一応、皮膚は調べた。表面上、壊死した個所は無し。女性の肌だとは分かっていたが、オレにしかできない事なので勝手にした。」
机に向けて歩き、さっきまで座っていた横の台にある『薄い本』を手に取る。
「そうですか。・・絶対に治ったのですね?」
「ソレは確かに。さっき血液の採取と検査をした。反応は無し。しかし、どうやらこの病原体は厄介なようだな?」
「ソレはどう言う・・」
「コレはどう言う事かな?」
俺の手にあるのは、『薄い本』。その表紙には、【職員用緊急避難マニュアル】。
さっきまで俺が読んでいた本だ。
「そ、それは・・。」
「内容は読んだか?・・いや、意地の悪い事は言わない方がいいか。」
開いた痕のあるそれを読んでいないわけがない。この部屋の棚の本を見つけて引き抜いたら隠すようにしてあったコレが落ちて来たのだ。
「・・α、β、Ω・・しかも、実験途中ならこの限りではない。このランダルコーポレーションと言うのは気が狂っている。しかも、コレが配布されているという事は国も関係しているんじゃないだろうか?」
「そこまでは知りません。しかし・・何らかの関係が国にあるとは思っています。」
「だろうな。」
そう言いながら本を閉じる。
「それで、俺が居ないうちに下に降りた理由を聞こうか?昨日はそれどころじゃなかったのでな。俺も流石にこうも不在なのは悪かったと思っているが、夕方には出てくると言ったはずだ。朝のうちに行ってくれれば予定は変更した。それもこれも無しに問題が起きたのだから、俺にはどうすればよかったのか分からない。なぁ?俺は此処に不要なのか?信用が置けないから無用か?言ってくれればすぐに去るぞ?」
「そんなことはないです!・・私が・・悪いんです・・。」
そう語り出した話は、初めはトイレに丈槍がいきたいと言い出したことから始まった。
トイレに行くとトイレに紙が無く、下のトイレに行くついでに購買部まで取りに行く事になったらしい。その際にオレに話すか、待つようにできないかと胡桃は言ったらしいが、佐倉先生が一階下だから大丈夫だろうと言ったらしい。それに行っている途中から雨が降り出した。トイレを済ませた全員が購買に入り必要な物を持って出たら、廊下はすでに奴らだらけ。慌てて戻ろうにも音に反応して反対のドアからも入って来た。
片方しかドアがない被服準備室に入り込もうとした瞬間、佐倉先生は足を掴まれてこけたらしい。そこで全員が手を伸ばしたが、佐倉先生が伸ばした腕を噛まれた。そこで、全員にドアを閉めて俺が出て来るまで耐えておけと言ってドアの前に陣取ったらしい。それからは意識がもうろうとなり、ほとんど覚えてないと・・。
「なるほど・・話は分かった。」
ため息をつきながら俺は本を開く。
「佐倉先生も行き着いただろうが、この病原体はおそらく2の例外だ。さっきの全部に当てはまらない。感染力は高く発症までは短い。コレはβだが、明らかに行動時間が長すぎる。βの派生または進化形だと予想できるな。一番面倒なタイプだ。おそらくは、三大欲求の食欲が一番大きく特化していて、それによる感染率の上昇、致死性の向上、更に栄養を取った場合に行動時間の継続が有るのかもしれん。だがコイツは、奴等に噛まれなければ何とかなる。しかし、αとβの混合主系統なら最悪だ。奴等の血飛沫や、体液からの感染、しかもα系列には死滅時期が書いてない。それなら広範囲拡大感染して、しかも多くの感染者を出しつつ奴等が減らない理由も頷ける。しかし、ウィルスと細菌では混合はできないはず。という事なら最終的に考えられるのはΩだが・・まったくの塗りつぶしで分からないな。」
「・・さすが、錬金術師と言うだけあって色々と考えられるのですね。」
「それこそが錬金術師たる宿命よ。生きて考え続け、死ぬまで考えをやめない。・・それよりも、俺がコレを書いた奴に言いたい事は唯一つ。」
「何ですか?」
「4.最後に・・そう書かれた蘭の【覚悟せよ】だと!?馬鹿にしているのか!!これをしでかしたのは貴様らだろうが!!何が美徳ではないだ!何が数百万人の命が掛かっている、だ!!ふざけるな!!」
キレた俺は本を叩きつけようと振り上げる。
≪ジリリリリリリン≫
「!?」
「・・奴か。・・もしもし。」
『使ったね?しかも自分じゃなくて他の人間に。』
「・・あぁ。」
『アレは君が使うべきものだった。ソレを勝手に他の人間に投与した。』
「分かっている。覚悟はした。もう使う事が出来なくなる事は分かっていた。」
『そうじゃなくて、他の人間に使った事も問題だ。あるはずの無い薬を助かるはずの無い人間に投与して助けた。コレは世界が歪められたのだよ?ペナルティを与える。コレは決定だ。』
「・・受けよう。内容は?」
『・・・自動人形は送らない。ISもだ・・。代わりに今から彼女たちの力の一部を送る。コレは神々の決定だ。覆る事のない決定だ。』
「十分だ。すまない・・。アイツ等の事、頼んだ。」
『・・では、今から君の実験室に送って置く。後で取りに行きたまえ。全員の属性と能力の込めた物が有るからソレをインストールすれば使える。』
「・・重ねがさね、すまないな。」
『もう・・ここまで承保させるの大変だったんだからね。それが分かればいいよ。』
「あぁ。ありがとうな。」
『じゃぁ、頑張りたまえ。』
「すまない。」
電話を置くといつの間にやら消える。
「い、今のは?」
「神さまからのペナルティの報告。俺の相棒達は送らないとさ。」
「そんな・・私のせいで・・。」
「使うと決めたのは俺だ。」
早朝から気が滅入る様な一日になりそうだと頭を抱えた。
「まったく・・本当にままならん世界だ。」
俺は謝る佐倉先生の頭を撫でて、落ちつかせる。
「貴女はここであの子たちを支える役目が有る。死に至るその時まで・・それが貴女の役目で、貴女への罰だ。・・それが分かったなら泣きやみなさい。」
そう言って頭を抱えると声を殺して泣きだした。
色々とたまっていた物があふれたのだろう。
「・・今は、今だけはゆっくりと休みなさい。」
そう言って頭をなで続けた。
今回書いてある薬は神さまの作った万能薬の様な物。
良く有るファンタジー物での一回しか使えない貴重な薬です。
ソレを使用したことは、神自体が用意したから良しとしても、
その薬を他人に使うのはアウトだった。
そう言う解釈でお願いします。
では次回。またね。