インフィニット・ソング~繋がる無限の歌~&【異世界旅行】   作:金宮 来人

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どうも、お久しぶりです。
しばらくの間、精神的な病気で書ける状況じゃなくて更新せず申し訳ありませんでした。
今はもう大丈夫となりましたので少しずつですがまた更新していきたいと思っています。
ご心配をおかけしたこと、又更新してなかったことについては申し訳ありません。

それでは授業を開始いたします。


第十九時間目

一度の感染者の襲来。それを片付けた後で見張りの交代をした。

それから、丈槍とゆっくりとした時間を過ごした。

お互いに眠くならないように静かに、でもいろんな事を話した。

あまりコイツと二人で昔話をすることは無かったからあまり知らなかったとは言え、俺の過去や俺自身に興味を持つのは意外では有った。

「・・という事でテロまがいな事が有った時に学園長よりの依頼で、妹のマドカと一緒に歌ったという訳だ。その時は・・【こんな風に】・・力を使ったんだ。」

その眼の前に赤い錬金術で炎の羽を見せる。青い錬金術で巨大な雪の結晶を浮かべた。

「す、・・すっごい!!凄い、凄いよ!いっくん!」

「・・ふふん。これでも俺達はそれなりに人気は有ったんだから当たり前だ。」

珈琲をまた啜りつつ、見せた術式を消す。

「いっくんって、凄いけど・・どうしてそんな力を使おうって思ったの?」

「力は使ってこそ力。だが、使い方でその方向性は大きく変わる。そこに意志も執念も思いも無くただ振う力は、悪意のある力と同じで暴力にしかならん。俺はわざと弱者になる事でソレを見極めて使い方を学んだ。そして、友と慕う奴、仲間たちや家族の為に使う為にこの力を使うすべを探した。そして、見出したのが【俺は友達を、仲間を、家族を≪護りたい。≫】という思いだった。その目的の為にいろんな物を開発して≪守る≫装備を造り上げた。それが俺のオリジナルギアの【アイギス】だ。」

そう言って赤い宝石を見せる。

「楯を持っていた奴だよね?」

「そうだな。『護る、守る、衛る。』これがこのギアの根本だ。だからこその楯であり、俺自身が守るべき楯となる存在になる。その想いを現せたギアなんだ。」

あの頃の想いを思い出して少し感傷的になってしまう。

「イチカ!ダイスキデス!」「「「「イチカ!」」」」「イチカくん」「イチカさん」「イっくん」「兄さん」

そんな声が聞こえてくるようだ。

まぁ、この仕事が終わればこんな人生も終わるだろうから、最期までやりきるか。

そう思った。

そんな事を考えていると急に耳に音が入る。

『ピピン・・シャラン・・』

「む?この音は・・」

「今の音って何?」

丈槍の言葉に返事をせず、俺は駆けて行く。あの音は感染者が掛っただろう音だが、音の方角があまりこの時間帯に人の居ない方角からだった。

あの方角に有るのは小学校や過疎地区の方角だ。仕事帰りなどのサラリーマンが使うような道でもないので感染者が生前の通りに通ることはあまりないと思っていたんだが・・。

そして、そこにはやはり感染者が居た。但し一体・・だが・・。

「・・おいおいおい!?本気か!?マジなのか!?」

その感染者に俺は止まった。別に見知った姿とかそういうのじゃない。

そいつの胸にある『ソレ』に俺は眼が止まった。

すぐさま感染者を【キャスター銃】の剣状態で切り裂いて地面に落ちた『ソレ』を拾い上げる。

「・・これ・・急ぐか・・。」

キャンピングカーまで全力で走って戻る。

「全員起床!緊急案件発生!全員起床!」

声をあげて全員を起こす。

「ど、どうしたの!?いっくん!?」

丈槍が俺の腕を掴んでそう言ってくる。

「緊急事態だ。・・生存者がいるかもしれない・・。」

「本当に!?」

「・・これを見ればわかる。」

キャンピングカーに電気が灯る。

「織斑さん・・どうかしたのですか?」

「緊急事態って・・どうしたんだよ?」

「ふわぁ・・寝たばかりだったんだけど?」

「一夏さん、何かあったんですか?」

「眠いんだけど・・。」

「圭ったら・・。で、何かあったんですか?」

全員が顔を出してくれたので机に『ソレ』を置く。

「「「「!?」」」」「・・マジか・・。」「これ・・本当に・・?」

『ソレ』とは【なめかわ小学校にいます。水と食べものがほしいです。】と書かれていた。

「文字からしても子供・・場所からして小学生の生存者がいるかもしれない・・。」

「一体これを・・どこで?」

「近くに来た感染者の首にかけてあった。・・正直いつからソレが書いてあるのかは分からないし、いつ頃の話かもわからない。少なくとも、雨が降ったり濃い霧が出たりした時よりも後の事だろう。朝つゆや雨で濡れた跡が無い。数日以内の可能性は高い。」

そうしていると丈槍が地図を取り出す。

「今は此処、そして・・ナメカワ小学校と言うのは此処だよ。公園からもすぐ近くだね。」

その地図を全員が見る。

「・・俺は一応皆の判断に従おうと思う。これを見たら見ないふりは後味が悪過ぎる。しかし、客観的に考えると生存者のいる可能性は低いだろう。小学生なら少しの傷をほって置く可能性もある。それから発症する可能性は高い。だとすると生存者は壊滅しているだろうが・・皆はどう思う?一応でも生存者がいるか分からない小学校に行くか?それとも危険は冒さないようにしてこのまま大学に行くか?」

「どうしよう・・私は行った方がいいと思うんだが・・。」

胡桃がそう言って皆の方を見回す。他も悩んでいるようだ。しかし、

「行くべきよ!!行くしかないわ!」

そう言うとあからさまに顔色を変えた若狭が、『バンッ!』と机を叩いた。

「・・どうした若狭?」

「・・るーちゃん・・」

そう呟いて俯く若狭。全員が顔を見合わせる。

「・・もしかして、その書いてある『なめかわ小学校』に知り合いが居るのか?」

「そうよ、妹が・・るーちゃんが居るわ。」

俺は苦渋の表情になる。だとしたら生きている可能性は低いが・・。

「まぁ、そう言う事なら行かなくちゃね!」

丈槍がそう言って帽子をかぶる。移動時の物がつまったリュックを背負って準備をする。

「・・そうだな。この暗さなら俺はに乗って一緒に移動しよう。外の物を片付ける。全員準備をしておいてくれ。」

そう言って外を片付ける。カラーコーンなどを外して車に乗せる。そして、車に戻ると丈槍がナビゲーションをして胡桃が運転を始める。小学校へ向けて走り出してしばらく、学校近くまで来て広い辺りに車を止めた。校門は閉まっているし開けると音がする可能性が有る。その音を聞いて静まった夜中に感染者が集まってくる可能性を考えるとこれ以上の危険は冒せない。

「救出班は俺と胡桃、若狭と丈槍が校内に入る。圭と美紀、佐倉先生は車の警護を。トランシーバーを持って行くから何かあればそれで通信。作戦内容は生存者の確認だ。間違っても深入りし過ぎないようにしろ。・・生存者の居る可能性はかなり低い。だが、ゼロではない。だからと言って希望的観測はするな。若狭、お前に言っている。妹が心配なのかもしれないが、可能性としては生きていない可能性の方がずっと高いんだ。もし、・・もしも、妹が感染者になっていたら、・・俺が神の元へ送ってやる。ずっと彷徨うよりもいいはずだ。もしかしたら、お前を求めて動き回っている可能性もあるし、どうにか優しい人に助けられている可能性もある。・・だが、絶望して生きるのをあきらめるのだけはやめろ。お前は生きている。もしも妹が駄目でも、お前には生きる権利と此処まで生きてきたからこそ、生き延びる義務が有る。」

若狭の肩を掴み、眼を合わせてそう伝える。若狭は眼をそらさず・・それでも視線は揺れていた。

「・・辛いだろう、苦しいだろう。それでも、俺達は生きている。それならば残された者は精いっぱい生きるんだ。そうじゃないと、居なくなった奴の事を知っている奴が居なくなる。誰も覚えていない、覚えていた奴が誰もいなくなった時、それが【真の死】の瞬間だ。生きて居た証が無くなる。記録は有っても記憶には無い。誰なのかもよくわからない。ソレは生きていたと言えない。誰かが覚えて生きて行く。それがその人が死んでも【意味のある死】なんだ。・・俺はずっと記憶の蓄積をした分で必要ない分は記憶の焼却で力として使って来たが、大事な人の記憶は一ミリたりとも消したことはない。・・どうか気を確かに持て。大事な妹だったら、もし此処に書いた生存者じゃなくても、どこかで生きているように祈れ。それが今お前に出来る事だ。」

「・・そう・です・・・ね。ありがとうございます。」

瞳の揺れが収まりキッチリと心が決まった様な顔になった。

「もしも生きていたら、絶対に助ける。どれだけ祈っても今からできることは限られているんだ。」

 

車から降りて俺はギアを出す。

「『Balwisyall Nescell gungnir tron~』♪」

そう詠う。

纏ったのは【ガングニール・拳】だ。アイツの使っていた繋ぐ力。

「・・俺はこの力で守りたい。いや、ブン守る!」

≪グッ!≫と力を入れて拳を握る。

いつも通りにシャベルを構えて肩をまわす胡桃と眼を合わす。頷くとニヤリと笑い、

「それじゃ、行くぞ!」

「うん。」

「・・待ってて、るーちゃん。」

俺達は校内に向けて駆けだした。

 




またしばらくちょっとずつ書いていくつもりなので、更新が不定期になりますがよろしくお願いいたします。
せめてこの作品だけでも完結させたいと思っています。

ではまた次回。

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