インフィニット・ソング~繋がる無限の歌~&【異世界旅行】   作:金宮 来人

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どうも、私です。
最近目がかゆいです。
そのせいなのか余計目が疲れます。
正直花粉症は大っ嫌いです。
これを書いている途中でも目をこする。
あぁ、花粉症って面倒だ。

それでは授業開始です。


第三十一時間目

「おい、起きてるか?」

そう言って青襲が入ってくる。まだ日も上がってない早朝だ。ようやく空が白ずんできたような時間にこいつはよく起きているもんだ。

そして俺はそもそも寝ていない。一晩中書類を確認してそれからパソコンで施設内の情報を見ていた。

そして分かった情報で、やはりここはP3レベル・・いや、BSL『バイオセーフティーレベル』3だった。

そして、おそらくだが何かしらのミス・・いやこの場合は手抜きと言おうか。

手洗いや除菌作業を怠ったために起きたのだろうと推測される。

普通ならこのような危険な実験は相当に厳しく管理するべきだ。

そもそもで、この実験自体がレベル4相当の危険な実験だったことは明らかだ。

それを隠してレベル3程度で行ったらこの状況になった。

それは当たり前と言っていいだろう。

そして、ランダル風に言えばΩ『オメガ』の細菌。これがアルファやベータと同じく研究していた中で一番やばいものだ。それを研究していてこの部屋を出る際に面倒くさがって手を抜いた。または内部できちんと衣服を着用しなかった為に感染した可能性もある。

つまり、どこかの馬鹿が、手を抜いて殺菌作業または感染防止・拡大を怠ったためにこの感染は広まった。

「・・と言う事だ。」

「それは・・救いようがない愚か者だ。」

説明すると、青襲はそう言って煙草を口にくわえた。俺は指先に火を灯して煙草に火をつけてやる。

「おぉ・・すまんな。」

そして俺たちはそのまましばらく黙った。

「・・・どう言っていいのかわからんな・・。」

「それは・・どういう意味だ?」

「こんな事態になったのはそんな馬鹿がいたからという事だろう?それについて言葉も出ん。」

「そいつも馬鹿だが、そもそもこんな実験している方が愚かだ。生物兵器でも作ろうと思っていたとしか考えられない。」

「まったくもってその通りだな。」

俺は近くの棚にあったインスタントコーヒーをカップに入れて、手から水と火の術式を組み合わせた錬金術でお湯を注ぐ。

「・・器用なものだ。」

それを見た青襲は少しあきれたような顔をしていた。まぁ、人類が夢に見た錬金術がこんな使い方をされているんじゃしょうがないだろう。

「俺は楽にするためならこれくらいする。どうせあまりこの世界にも居られないようだしな。」

そう言ってコーヒーをすすりながら、もう一つのカップを青襲に渡した。

「それはどういう?」

「もし、・・抗体で薬が作れた場合、それを散布して終わる。そうなれば俺はこの世界でのやるべき事は無くなる。お役御免だ。」

外を見ると朝日が上がってきた。少しまぶしくて目を細める。

「そう・・か。居なくなるのか・・。」

「おそらくな。俺の上司である神の気分次第だ。」

「なるほどな・・。そう言えば面白いものを見つけたぞ?」

そう言ってノートパソコンを出す青襲。

「面白いもの?」

聞き返すとパソコンを立ち上げてシステムを起動して端末をつなぐ。それはこの部屋にあった物だ。

「これで良し。・・『ボーモン』起動。」

『はい。起動 しました。』

「それは?」

「この施設の管理しているシステム。昨日座った、其処のパソコンの画面に起動コードとパスワードがあった。このパソコンは個人所有じゃなくて会社の備品だ。システムは入っていたからそれを使って開いた。」

「・・人工頭脳・・AIか?」

「どうなんだろうな?とりあえず、ここにあった端末で起動したから一緒にもっておけ。」

そう言って一つの端末を俺に投げて渡した。

『やあ。はじめまして。僕はボーモン。』

「ふむ、俺は一夏だ。」

『わかった。イチカ だね。』

「かなり性能がいいな。」

「昨日実験室をのぞきに行った時に、認証端末が起動してこいつが居たんだ。そのあと一回ここに来たんだが、お前は見えないからどこかに行ったのかと思ったんだ。」

「俺はこの部屋にいたが・・?ふむ・・あぁ、もしかしたら死角で見えない位置にいたのかもしれないな。あのあたりを見ていた時かもしれん。」

指をさすのは上司などが座る席のあたりだ。俺は夜目が利くから電気もつけないでいたしな。机の中の書類を探していた時なら屈んでいて見えないだろう。

「そうか。ならいいんだ。少し心配だったからな。」

「ふっ・・・。俺の心配するのか。意外だな。」

「なっ!?くっ・・、悪いか!?」

「いや、クールに見えてなかなか人思いだなと。優しいんだな。圭や狗三を見ていてくれていたと見える。」

「そ、そんなことは・・」

「ふふっ。まぁ、いいか。」

少し頬が赤いように見えるが、あまりいじめるのも悪いしな。

さて、この結果をどうしたものか・・。煙草の一本を吸い終わった青襲がまた一本取り出して口にくわえた。

「あいつらにこのこと教えるのか?」

そう言いながら煙草に火をつけてやる。

「・・ふぅー・・。どうするべきか、・・言うしかないだろうな。」

「だよな・・・・・。落ち込むと思うか?」

「当り前だろう。または怒りで頭が白くなるか・・。正直、言われたときは言葉が出なかったよ。」

そう言って髪をかき上げる。

「俺もこの結果を導き出して、頭がおかしくなりそうなくらいに叫びそうになった。」

そして、俺は額に手を当てて、

「笑えることに、そいつはおそらくこの認証パスを持っていた人間で・・」

そう言ってデスクを指さす。

「そこのパスワードを画面に張り付けていたやつだ。管理署の中にちょくちょく問題が挙げられていた。・・もう、呆れすぎて言葉も見つからん。」

そう言ってカップのコーヒーを飲み干す。

「本当に・・愚かしいな。」

二人して言葉をなくしたようにぼーっと天井を見上げたままデスクに座っていた。

 

そして、会議室を片付けてそこに全員を呼んで、今回分かったことを話すことにした。

その内容は今回の感染媒体の正体、Ωが細菌であること。細菌とウィルスの違い。この施設の事。そして、今回の感染が拡大した原因、この施設の研究者が手洗いをさぼったことで今回の災害が起きたという事。

「・・と言う事だ。」

「「「・・!っ・・」」」

全員が言葉を失っていたようだ。

「どうしてですかね・・怒りよりも呆れしか出てきません。」

「あまりにもバカバカしいからだろう。愚かと言ってもいい。」

美紀が頭を押さえつつ震える声でそう言ったから俺は答えた。

「それじゃぁ・・もうどうしようもないのかよ・・。」

胡桃がそうつぶやいた。

「そうでも無い・・。これを見てくれ。」

俺ではなく青襲がノートパソコンで映し出した。

それはこのあたりで起きた怪事件の新聞記事。

「かなり前から流出などが起きていたか・・もともとが土着の細菌らしい。そして、それで被害が起きてはいるが・・」

「・・その時は感染は拡大しなかった?」

「そうだ。つまり、感染が拡大しなかった何かがあるという事だ。しかも起きたのはこの地域内だけ。」

「それじゃ?」

「そうだ。この土地に答えがある。」

そう言うと全員が明るい表情になった。

「それに狗三と佐倉先生がいるからな。」

そう言うと二人は目を開いて不思議そうにする。

「はい?私ですか?」

「それにわたし?」

「あぁ、二人は感染したことがある。狗三は試作の薬ではあったが、現在症状は小康状態だ。佐倉先生に至っては完全に克服している。俺の持っていた薬があったからな。つまり・・二人の血から抗体を取り出しそれを培養できれば、完全な抗生物資となる。希望となるわけだ。」

そう言うと全員がさらに顔を明るくして喜んだ。

「ただし!・・結構な時間がかかる。それが間に合うかはわからない。・・最悪の場合には手を残しているが・・正直に言うとそれは使いたくない。俺としても正念場に来たと思っている。これからは時間との勝負だ。もしかしたら手伝ってもらうことがあるかもしれないから・・その時は頼む。」

俺は頭を下げた。

「大丈夫だよ、いっくん!」

「わたし等がちゃんと手伝う。」

「ここまで来たんだから一蓮托生です。」

「生きていられるのも一夏さんのおかげですから。」

「あの時救い出して貰って恩が返せていないですからね。」

「美紀ともう一度会わせてもらった事感謝してるし。」

「あそこで朽ち果てる運命だった私を助けてくれたこと、感謝してもしきれないんだからね。私をここまで連れてきたんだし、頑張るわ。」

「・・お前がそう言わなくても私はお前と同じことをする。つまりはそう言う事だ。」

そう言ってくれたみんなに頭をもう一度下げる。

「・・ありがとう。」

 




では、また次回。

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