インフィニット・ソング~繋がる無限の歌~&【異世界旅行】 作:金宮 来人
遠くからこちらへと向かって近づいてくる一つの点。
このあたりをすべて焼き尽くす【反応兵器】を見つめた。
「・・このようなことを一人でやらなければいけないとは酷だな・・・。だが・・いや、【だとしても】・・だったな。」
一人、屋上で呟き、首を振る。
「俺一人、たった一人【だとしても】、ここにいる人たちを救うための力を、持っているすべてを使う。」
銃のキャスターを展開し、そのままファウストローブを纏う。
曇天にでも輝く鎧は俺の心の輝きを示す。
「これこそ最後で俺が使える中でも、最高の錬金術式!【解析】【分解】【掌握】【再構成】を込めた最初で最後の世界の掌握よ!!」
銃と弾丸を両手に構えて、銃を開いて弾丸を装填する。
それこそがこの世界を変えるカギとなる。この思いこそが世界を変えるすべとなる。
「俺こそが世界を変える、世界で一人の錬金術師、錬金術師の王、すべての頂点に立つ【アルケミックマスター】の【イチカ・ダインスレイフ】である!!」
銃のキャスターに力を籠めると銃が変形しさらに出力が上がる。
「しかし、龍脈でもある【レイライン】が俺の通ってきた道にあったというのも、すべての布石だったとしか言いようがないな。」
巡ヶ丘学園の裏、聖イシドロス大学の脇の神社、ショッピングモール近くの石櫃、狗三の居たシェルター施設の裏手の小型の石台、圭の向かっていた駅近くのビル横の神社、そしてガソリンスタンドの会った通りの稲荷神宮。
すべての場所でレイラインのふさいでいた要石があるとは、なんとも言い難いものだ。
その要石をすべて壊した先がこのランダル・コーポレーション脇の縦長の石だというのもやはりすべては決まっていた道筋なのやもしれんな。
推奨BGM『死灯~エヴィヒカイト~』
「だとしても、俺はこれをやりきるために力を使う!!『解放の~♪』」
そう言って俺は力を開放すると、体から金色の粒子が放たれる。
歌によって力が増幅される。
それはすべてキャスター銃の銃口へと集まり、バレル内からも光があふれる。
「さぁ、幕だ!すべての愚かしい物語は終わらせるとしよう!そして新たな物語へと紡ぐための再構成で再生を!!」
空へと飛びあがり、銃を構えて殲滅兵器へと弾丸を放つ。
「今ここに!革命の炎を!!」
雄叫びをあげて放たれた弾丸は殲滅兵器へと直撃、その場で術式を幾重にも展開させて、爆発を包み込みその熱量さえもエネルギーとして術式の起動へと力に変わる。
弾丸に一番強固にしたのは力の吸収とエネルギー変換。それにより爆発はすべてのエネルギーへと変わり、術式の起動へと変わる。
だが、
「術式はもっても・・エネルギーが足りんとは思わなかったな・・。」
あれほどの爆発ですら、世界の分解と再構成へは足りない。
神出門『かみいずるもん』【鼓星の神門】と龍脈を操作して作った【レイライン】。エネルギー源は在ってもそれを変換する装置が少ないうえ、そもそもの規模が大きいのだ。当たり前だろう。エネルギー自体があっても増幅する設備が小さすぎるのだ。
ランダル・コーポレーションのビルを中心核に部屋をいろいろと改造しても、チフォージュ・シャトーの制御装置の機能からすれば四分の一にも満たない。元から小さなビルを使うには無理がある。予想の範囲には入っていたが、これほど最低値に近いとは・・。
しかし、それについては最悪の場合を考えて準備した。
故の【俺、自身】なのだから。俺自身をもとにしてバイパスを作り、さらにエネルギー自身も作り上げた増幅装置にする。しかし、負担が大きく賭けであることも確かだ。
『だとしても!』それが辞める理由にはならない!
「記憶の焼却を!!すべてを燃やして力と【換えろ】ぉ!!」
頭の中へ浮かぶのは、この世界で出会った人の事、大学での争い、みんなを救った事、みんなと巡り合った事、学園に来たこと。
それが次々と燃えて力と変わり、体中から金色の粒子があふれる。
それは空へと昇り、爆発で起きた術式へと注がれる。
それでもまだ足りない。故に俺は命の輝きさえも燃やす。
「この体も!命さえも!エネルギーとして、変換【かえ】尽くす!」
勢いよく更に金色の輝きがあふれる。
それは【四本の筋】となって・・。
「・・四本だと!?」
他の三本の光をたどると俺が使っている変換の術式陣の上に3人、【狗三夢子】と【青襲椎子】、【佐倉恵】が乗っていた。
「馬鹿者が!そこにいてはいずれ消えてしまうんだぞ!?早くそこから退け!」
俺は叫ぶ。
「無理だな。(・×・)」
「あぁ、無理・・だ。」
「いくら織斑さんのいう事でもそれは聞けませんね。」
そう言ってむしろ俺の肩や背中をつかむ。
「俺が消えても、元に戻るだけだが、お前たちは再構成する際にその力を使い果たしてしまっていたら、存在が消えてしまうんだぞ!?死ぬのが怖くないのか!?」
そう言うが三人は離れない。俺の顔を見て狗三が口を開く。
「私はもう死んでもおかしくない存在だった。・・いや、一夏が居なければ死んでいたんだよ。感染者になって・・無残にね。それを変えてくれたんだ。今更どういう事でもないさ。」
「狗三・・。」
次に袖を引っ張ったのは青襲。
「そもそも、私も一人で朽ちていただろう口だ。どうせあそこで死んでいたのなら、今でも変わらないさ。四人もいれば、どうにかなる。」
そう笑って、肩を叩く。最後に佐倉先生。
「私はあなたに救われ、生徒を救われ・・返せるものなど何もなかった。なら、せめて・・あなたが成すことの手伝いはさせてください。お礼をする機会をください。」
そう言って頭を下げる。
そう言われてどうにもできなくなった俺は、
「・・危険になれば陣の外へ投げ出す。そうなれば邪魔だけはするな。・・それまで力を借りる。・・・・不甲斐なくて、すまん。」
そう言って術式の構成を強める。分解の最終段階まで起動さえすればあとはすべて自動だ。解析は済んだ。次はレイラインを使っての分解、そして分解した後の掌握と再構成を残すのみ。
「さて、ラピスフィロソフィカスよ!命の輝きよ!その力をもって、守る力を!!はぁああああああああ!!」
「「くぅぅうう!!」」「ふうううううう!!」
金色の光があふれて空へと舞いがる。
推奨BGM【アクシアの風】
そして、俺は三人を突き飛ばして錬成陣から弾き出した。
「「きゃぁ!?」」「うわぁ!?」
アイギス以外の全部のギアを構える。
『Croitzal ronzell gungnir zizzl~、Balwisyall Nescell gungnir tron~、Imyuteus amenohabakiri tron~、Killiter Ichaival tron~、Granzizel bilfen gungnir zizzl~、Seilien coffin airget-lamh tron~、Various shul shagana tron~、Zeios igalima raizen tron~、Rei shen shou jing rei zizzl~』
これ以上は消えてしまう。消えるのは俺だけでいいのだから。
これは最後の絶唱。すべてのギアを使った絶唱。それを使って増幅した力を使う。
『・・・!!』『・・!・・・!?』『・・・・・。』
錬成陣の外に張った壁に三人が手を叩きつけている。
声は聞こえない。佐倉先生に至っては泣き出している。
だが、俺はすべてを終わらせる。その義務がある。それを行う力がある。
解析は済んだ。分解をあと少し残すのみ。そうすればあとは掌握と再構成に使う力は補充できた。
「世界を解析し、森羅万象をつかさどる錬金術師、その最高峰の力をなめるな!!」
さらに俺はけん玉とナックルのキャスターを展開し、それにも術式を展開、ラピスフィロソフィカスの力をさらに燃やして力へと、輝きへと変えていく。
「ラピスの力は、命の輝き!」
記憶が消える。この世界であったいろんなことが、消えていく。
「すべてを力へ変えて、今!」
大学のメンバーの顔、敵味方関係なく、燃えて灰になり、すべてが力と変わる。
「森羅万象の黙示録をこの手に!」
手を取り合った皆の顔も消える。近くにいた皆の顔さえ光でにじんでもう見えない。
「すべては今こそ我が手によって生まれ変わる!」
さぁ、終わりだ。〈始まりだ〉。
「さぁ、・・起動せよ!世界を変えるそのすべを!最終錬金術式、世界変換術式【ワールド・エクスチェンジ】!!」
すべての光は錬金術式に吸い込まれ、術式から光があふれた。
世界は分解され再構成される。
一度、生ある者も死に得た者もすべてが等しく分解される。
イチカ・ダインスレイフ・・織斑一夏以外のすべては分解されてすべてがエネルギーへと変換される。
そして、すべての記録を異世界に置いてきたそれから再構成を始める。
木も、花も、石も土も・・世界のすべてが再構成されていく。
龍脈、レイライン上からエネルギーがあふれてそれによってすべての物が再構成される。
さらに人さえも再構成されるが、その際に世界中の生きている人間や感染者の中から今回の災害にかかわる記憶だけと限定してエネルギーに変換した。
さらにランダルコーポレーションは変換したまま消去して、その会社の実験にかかわった人物の記憶はすべて消去した。
世界を戻すために織斑一夏はすべてを使う。
その命さえも燃やし尽くして、ラピスの輝きに変える。
そして、自分がかかわってきた人物を再構成して最後とした。
世界を分解、把握、再構成してそのすべては終わった。
この世界での織斑一夏の役目さえも・・。
◆
最近、学校が好きだ。
そう言うと変に思われる。
だけど、理科実験室には不思議なものがいっぱいある。
音楽室にはたくさんの楽器がある。
放送室は、学校中がステージに。
何でもあってまるで一つの国みたい。
でも、一番好きなのは友達が一緒にいる事。
みんな大好きな友達。
・・でも・・
最近少しなんだかさみしい。
誰かの事を忘れたみたいで少し・・ううん、すっごく寂しくなる。
りーさんやみーくん、くるみちゃんや圭ちゃん、めぐねえでも、狗三先生でもない・・。
誰かもう一人いた気がする。
頭を撫でてくれた‥大事な誰かが・・。
そう言ったらみんなが少し悩んだ。
「わたしも・・同じようなことがある・・。」
「私もです。」
「皆そうらしいのよ。なんでかしらね?」
くるみちゃん、みーくん、リーさんも同じようだし、みんなそうだって言ってる。
よくは分かんないけど、何かに押されるように最近進学を考えて、近くの大学に行こうと思って勉強してる。
オープンキャンパスで聖イシドロスって大学に行ってみたの。
よく知らないけどサークルっていう部活動みたいなのがあって、そこで親切にしてくれたトーコさんて人たちとも仲良くなった。
どこかで会った気がするって言ったら、向こうも同じようなこと言ってた。不思議な感じ。
・・たぶん忘れちゃったんだろうと思うけど、きっと誰かいたんだと思う。
そんな気がするから・・。
だから忘れちゃって、ごめんなさい。
そして、よくわかんないけどありがとう。
遠く青い空に、風船が飛んで行ったのを見つけた。それを見て空を見上げる。
「私たちはここにいます。元気でーす!!」
太陽に手を伸ばして叫んでみた。どうか思いが届くようにと。
ファイナルを無事に迎えることができましたこと、うれしく思います。
今回でこの話は終わりですが、まだ何か投稿したいなと思っています。
どうもありがとうございました。
また、どこかで。
では、卒業おめでとうございました。