フハハハ。
「は?」
副教官に投げ飛ばされた俺は壁の上部に落ちた。
そして、未だに何が起こったのか理解できずにいた。
「え?」
自分は一体何をした?_超大型巨人を殺そうとした。
そして、飛び出した。誰からの許可も取らず。そこに自分の上官はいたのに。
助けを求めることも出来たかもしれないのに。
自分のせいで、副教官は死んだ。死んだところは見ていないが、落ちた衝撃もあるだろう。仮に生きていてもそこから帰還するのは絶望的だろう。
自分の命を賭けた戦闘。しかし、代償は他人の命。
「おい!エレン!」
わけが、わけがわからない。
「エレン!」
自分を庇った?じゃあ、自分が出ていなかったら?副教官は死ななかった?
「ハッ!」
コニーが心配そうな顔で俺の肩をゆすっている。
「呆けてる場合か!今ははやく巨人をなんとかしないと・・・。」
「ト、トーマス・・・。その、副教官は・・・」
きっと生きているはず。だって副教官なのだから。
訓練中は適当な所に座ってぼんやりとし、夕食のときにはイベントを盛り上げ、なにかミスをしたときには、「とりあえず教官に見つからないところで話そう。」と少し焦った顔で真っ先に言う人。
副教官という立場ではなく、俺たちの目線で話をしてくれる人。
きっと、副教官としてはいい人ではなかっただろう。でも、俺たちにとっては・・・とても、とても頼れる人、というか・・・そんな感じの人だった・・・。
「・・・。」
「グ・・・、クソォッ!」
「エレン、副教官を失った気持ちはわかる・・・、わかるが、今はそれどころじゃない。悲しむのは後だ。今は・・・」
エレンにトーマスの声は聞こえない。
信頼する人を失った、怒り。悲しみ。
巨人がいなければ、巨人がいなければ・・・・・・
「奴らを・・・駆逐する・・・!絶対に!」
壁は壊されている。こうしている間にも巨人は壁から入ろうとしていた。
「オイ・・・。もう壁は壊されちまったんだ!早くふさがないとまた巨人が壁から入ってくるぞ!」
「何をしているんだ訓練兵!」
立体軌道装置を装備した兵士がやってくる。
「超大型巨人出現時の作戦はすでに開始している!ただちにお前らの持ち場につけ!そしてヤツと接触した者がいれば本部に報告しろ!」
「副教官が・・・。」
「そんなことは後だ!今は作戦に集中しろ!」
「そんなこと?!仲間が一人死んでるんだぞ!そんなこととはなんだ!」
「巨人が壁から入ってくる!一人の兵士の死より、大勢の市民の命を考えろ!早くしろ!」
「くそっ!」
そんなことはわかってる!でも、副教官は・・・。
「よぉーし。久しぶりにいきますかぁ~。」
「「「「は?」」」」
「んん?な、なに?」
ま、マキト、副、教官?
*****
いや、久しぶりに死ぬかと思った。つっても3回ぐらいしかないけどな!
1回目、車にひかれそうになる。
いや、あれは轢かれてたな。うん。完全に吹っ飛んでた。骨折れたし。
2回目、巨人に突っ込む。
こりゃこの世界に来てからの話だ。能力手にいれたことに一時期興奮して、自傷系の技をつかって勢いよく頭から巨人に突っ込みました。
いやまぁ、無事貫通したんだけどさ!いやじゃん!体内で巨人の骨バキバキいわせながら貫通するんだぜ!?
3回目、炎系の技を使う。
巨人の貫通できることがわかって、『フレアドライブ』を使いました。はい。巨人は死にました。
俺の服も昇天しました・・・。1ヶ月間くらい俺付きの女性兵士に口きいてもらえなくなりました・・・
「ふ、副教官!なんで!?」
「『みがわり』、な。」
「え・・・?」
まぁ、その反応だわな。『みがわり』とかこの世界で誰がやるんだよ。
「まぁ、いいじゃん。はやくいかねぇと、また壁がやばいぞ。」
「え・・・。あ、ハイ。」
「ホラ!はやくはやく。さっさとせんかい!」
にしてもさっきのは少しヤバかったな。『みがわり』だす余裕があったからいいが・・・。
HP4分の1削れるとかいつぶりだ?
*****
「アルミン!大丈夫か!」
「だっ、大丈夫だこんなのすぐ治まる!」
アルミンが錯乱している。
混乱じゃなくてよかったな。・・・笑い事じゃないけど。
「ししかし・・・まずいぞ現状ではまだ縦8Mの穴をすぐに塞ぐ技術はない!塞いで栓をするって言ってたあの岩だって・・・結局掘り返すことさえできなかった!」
「アルミン。落ちつけよ。」
「こんな落ち付いてられない!現状を分かっていってるんですか!」
わかってるさ。だから言ってるのに。
「穴を塞げない時点でこの街は放棄される・・・ウォール・ローゼが突破されるのも時間の問題・・・そもそも、巨人がその気になれば・・・人類なんていつでも滅ぼすことが出来るんだ!」
「アルミン!落ちつけ!!」
「ッ!!」
アルミンって興奮するとこうなるのか。要注意だな。
・・・少しでも守れるといいが。
「アルミン。現状をわかってるなら早くそのガスボンベをしめろよ。街を放棄するなら俺たちの仕事はなんだ。住民の避難を一刻も早く完了させることじゃないのか?」
「は、はい。」
「わかるなら、はやく。俺副教官が巨人のエサにしちゃうぞ!」
「えぇ・・・」
「まぁ、安心しろよ。お前らは俺が守ってやる。」
「くさいですね。」
「なんで!?」
*****
「それでは訓練どうりに各班ごと通路に分かれ・・・・・・・・」
前衛が駐屯兵団。
中衛が訓練兵団。
後衛が精鋭の駐屯兵団だそうで。
普通前衛は精鋭班が行くべきじゃないの?あ、でも住民を守るなら後衛なのか・・・?どっちがいいんじゃこれ。
ふと見るとミカサがエレンに近寄っている。
表情からするに、愛の告白じゃなさそうだな。つまらん。
「戦闘が混乱したら私のところに来て。」
「は!?」
はい?
敵前逃亡は死刑らしいぞ。
「何言ってんだ?オレとお前は別々の班だろ!?」
「混乱した状況下では筋書き通りにいかない。私はあなたを守る!」
「お前さっきから何を・・・」
ミカサがエレンを守るのはいいんだけれども。
普通、男女逆じゃね?向こうのバカップル見てみろよ。
「ハンナ、君は僕が守るから。」
「フランツ・・・。うぅ・・・。」
俺はあれが正しい姿だと思う。
「ミカサ訓練兵!!お前は特別に後衛部隊だ。ついてこい!!」
「・・・!!私の腕では足手まといになります!」
「!?お前の判断を聞いているのではない。避難が遅れている今、住民の近くには多くの精鋭が必要だ。」
「し・・・しかし!」
そっか。デスヨネ。住民の周りには精鋭必要ですよね。
壁に覆われてても街はそれなりに広いんだから、すべての巨人を抑えきれるとは思わない。
「オイ!いいかげんにしろミカサ。」
ゴツッとエレンがミカサに頭をぶつける。
目を覚まさせる目的なんだろうが・・・痛そう・・・。俺はHPどんくらい削れるかな・・・。
「人類滅亡の危機だぞ!!なにテメェの勝手な都合を押しつけてんだ!!」
「・・・・・・・・・。」
ミカサが申し訳なさそうな顔するのはエレンにだけだな。
さすが家族。
「悪かった・・・。私は冷静じゃなかった・・・。でもどうか、死なないで・・・」
「死なねぇだろ。そいつは。」
「・・・」
エレンとミカサが不思議そうな顔をしている。
「だって、ねぇ。あんだけ、夕飯のときに演説かましてたやつが、初陣で死ぬとかまず無いな。死んだらマヌケすぎる。」
「・・・。それでも私は・・・。」
「わぁかった。安心しろ。副教官直々に守ってやる。」
「ッ・・・。」
「安心して、お前が死ぬんじゃねぇぞ。わかったか?」
口を結んで、頷くミカサの表情は、さっきよりもいいような気がした。
出来る限り守ってやろう。
駄文だけど、頑張りますよ。