有賀草悟はプロ野球選手になるようです   作:筆先文十郎

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一軍に再び戻るため草悟が新たな道を探す(武器を手に入れる)回です。
最後ギャグに走ってます。


第八話 大吾と草悟

二軍落ちが決まった翌日。

草悟は三軍監督・荒木(あらき)大吾(だいご)の部屋を訪れていた。

「三軍に戻りたいだと?」

開幕一軍に残れなかった若手は、二軍で実績を上げることで一軍への道が開かれる。

若手選手の強化と故障選手のリハビリの意味合いが強い三軍にいてもあまり意味が無い。

一年目での一軍入りを目指す草悟が戻ってくる理由は、無いはずだった。

「俺は二軍で通用する実力が欲しいのではない。一軍で戦える実力が欲しい」

「なるほどな」

普通なら何をいっているのだ?と言いそうだがこの男なら納得する。

「二軍は嫌か?」

「嫌だ」

「一軍で戦う実力を身につける練習だけがしたい。そう言いたいのだな」

「ああ」

草悟は自分の代名詞と言える55を譲り渡した大事な存在。孫といえる存在だ。「置いてやる」と言いたかった。だが三軍でやるべきことを草悟は身につけている。

「二軍に行け。それがお前の生きる方法だ」

「……」

草悟はジッと大吾を見る。置かせろ、瞳は語っている。

「草悟。ワシは指導者だ。打撃ならまだしも野球は守備や連携、細かい動きを覚えなければならない。三軍(ここ)ではそう言ったことは教えられん」

「俺より実力のない連中とやって、俺に得があるのか?」

聞く人が聞けば激怒は必須の言葉を高校を出たばかりの未成年が言い切る。

「ではお前には康友や弥子は不要か?」

「え?」

「あの二人は草悟、お前以下の実力だ。お前の理屈だとあの二人は不要だろう?」

「違う!」

草悟は否定した。入団前なら躊躇せずに「必要ない」と言っていたはずだ。

そして草悟は気づく。実力ある自分が自分より実力がない連中と一緒に練習をしたくないと言ったのに、自分より下の康友と弥子を必要と感じたという矛盾に。

「草悟よ」

孫を諭す祖父のように、大吾が優しく言った。

「二軍に行け。そこで己を磨け。……機会がくれば、時期に一軍に上がれる」

「……はい」

頭を落とす草悟の肩に手を置く。

餞別(せんべつ)だ。グラウンドに来い」

 

グラウンドにバッティングマシンをセットすると大吾はバッターボックスに立つ。

「始めろ!」

草悟にマシンを起動させる。

「よく見ろ、草悟。これがお前にやる餞別だ!」

大きく曲がるカーブ。大吾は右足を大きく上げて片足だけで立つ。そしてタイミングに合わせてバットを振りぬいた。

打球はフェンスに直撃する。

「歳は取りたくないな」

打点王を取った時の自分を思い出し、ため息をつく大吾。

「い、今のは……」

「ワシの奥義。一本足打法。緩急を使い分けるピッチャーに対応するために修練した打法だ。きっとお前の役にたつだろう」

うんうんと大きく頷く。

「二軍の休みの日。ワシの元を訪れるがいい」

その時二人は気づいていなかった。バッティングマシンが次の球をセットしていることに。

「ワシがみっちりと指ど、ウウウゥゥゥッッッ!?」

マシンが放ったストレートが大吾の急所に直撃したのだ。

「――――!!」

あまりの痛さに地面に悶絶(もんぜつ)する大吾。人を殺せそうなほど鋭い視線は「草悟殺す!」と書かれてあった。

「そ、それでは荒木監督!ご指導ありがとうございました!!」

大吾が動けないことをいいことに、草悟は一目散にその場を逃げ出した。

 

 

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