有賀草悟はプロ野球選手になるようです   作:筆先文十郎

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野球選手が大好きなオカマ、八千代(やちよ)智那(ともな)が草悟の核心をつく話です。


智那と草悟

八千代(やちよ)智那(ともな)

男も女も好きなオカマであり、スイーツの先頭打者を務める男(女?)である。

打率は規定打席に到達した選手の中で下から数えて二番目の0.202。守備は一塁しか守れない上に平均レベル、肩や足も一般選手以下。だが去年の2017年の出塁率はリーグで一位。

草悟が一番に定着すると下位に打順を下げられたが、それでもスイーツに欠かせない存在として活躍をしている。

幼少の頃から自分は変わった人間だと思っていた。男なのに女の恰好をしたがる自分。一方で男も女も好きになってしまう。

人間だったら誰でもいいのか、と思ってしまうほど智那は男女が好きだった(ただし同世代~45歳)。

好きな男性を追いかけ、智那は野球部に入る。

オカマということもあって孤立していた智那だったが、そこで彼は運命的な出会いを果たす。当時監督だった松平監督(55歳)が彼を気に入ったのだ。野球選手としての能力は並以下だったが彼のある点に注目し彼を先頭打者に抜擢した。

智那の活躍に仲間たちも先入観を捨て彼の存在を認めた。

甲子園出場は果たせなかったものの、智那の活躍で野球部は県のベスト8に入るほどとなった。

そして運命のドラフト会議。意外性のあるドラフト選手を取ることで有名なスイーツの4巡目で獲得。特にここではないと入らないなどのこだわりがなかった智那はそのままスイーツに入団することになった。

打撃、守備、肩の強さ、足の速さ。どれもプロ野球選手では標準もしくはそれ以下。当然三軍での育成にされることになる。

大吾は彼がグラウンドの整備、料理の手伝いなど下働きを率先してする姿。そして松平も認めたある点を認め当時の一軍監督に智那を推薦。

一塁しか守れない智那を一軍監督は使おうと思わなかったが、スイーツ初のタイトルを獲得した大吾の推薦ということもあり数試合使う事にした。

そして知る。松平や大吾が認めた出塁率の高さと一打席当たりに投げ指す投球数の多さを。

実力を認められた智那は打てない、走れないながら出塁、または捨石としてスイーツの一番打者に任命される。

 

 

ある日のことだった。

一軍寮に戻ると、玄関先で智那がスマートフォンで野球の動画を見ていた。

動画を見ながら、ふふっと笑う智那を、草悟が横切る。

「ポセイドンの広田君と何かあったの?」

「!?」

不意に声をかけられ、否。その内容に草悟は言葉を詰まらせる。

「なんで!?……って顔をしているわね。じゃあネタ晴らし。有賀君。貴方、ポセイドンと戦う時、何か意識しているわね?」

「……」

「私ね。野球をする人が大好きなの。一軍選手から育成選手までね。全球団選手のポジションはもちろん生年月日、出身地、成績……当てられる自信はあるわ。出身校とかもね」

「……」

「ポセイドンと当たる時。有賀君は誰かを探している目をしているの。で、見つからなくて残念ともホッとしたとも言える複雑そうな顔つきになる。そこから有賀君に何かしらの接点があってかつ出会っていない人。この条件にあてはまるのって広田君しかいないのよね」

「気のせいでしょう。俺は広田投手とは高校違いますよ。出身地も違いますし」

草悟は否定する。草悟の言う通り高校は違う。広田は中学時代を評価されプロ野球選手を輩出している名門校にスカウトされたからだ。

出身地も違う。だが一度も会ったことはないとは言わなかった。

「……そう。ごめんなさいね」

智那はそれ以上追及しなかった。

「そうだ、最後に一言」

「まだ何か?」

あからさまに嫌そうな顔をする草悟に智那は優しく微笑(ほほえ)む。

「あまり悩み過ぎちゃだめよ。一人で悩み過ぎると視界も聴覚も考えも狭くなってしまうから」

「……肝に(めい)じておきます」

社交辞令でそう言うと草悟はその場を離れた。

 

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