今年のス・リーグは首位から5位まで7.5ゲーム差というまれにみる混戦になっていた。その中で多くの人々の予想を大きく裏切ることがあった。
1位。海神ポセイドン
2位。北方ファントムズ
3位。首都圏コスモスターズ
4位。スイートエンジェルズ
5位。金翼グリフォンズ
6位。防人ガーディアンズ
『ス・リーグのお荷物』、『6位はスイーツの指定席』と呼ばれていたスイーツが8月中旬時点で3位に1.5差の4位につけていた。
ガーディアンズは君先が草悟に打たれて以降調子を落とし二軍落ち。不動のセットアッパーを失ったガーディアンズも最下位に転落した。
だがスイーツも順風満帆ともいえなかった。
投手陣の精神的主柱を担っていたベテラン投手、久石がグリフォンズ戦で離脱。それによってスイーツは徐々に投手陣の歯車が狂いだし、後退していた。
左の中継ぎに選手の精神的な存在の離脱はあまりにも大きすぎた。
基本的に先発が持たないスイーツは中継ぎに負担がかかる傾向になる。8回に冬狐、9回に響という勝利の方程式につなぐ役目として久石ははまっていた。
久石が抜けたことで6、7回に点を取られるようになった。
冬狐と響以外に期待できる投手は岡本悦がいるが、彼女は体力がないことと被弾率が高い故にワンポイントリリーフという役目を与えられている。
久石が抜けてことで真っ先に影響を受けたのは岡本悦だった。
美空も彼女の負担を出来るだけかけまいと苦心していたが、投げさせないといけない。
久石が抜ける前は2点台だった防御率は、連投による疲労と被弾の影響で4点台後半に跳ね上がった。
冬狐と響は目立ってはいないが、疲労の色が濃くなっているのは投手出身の美空は見抜いていた。
だが有効な手段が見つからない。
問題点は明確なのに解決する手段がない。
表情には出さないものの、美空の心は暗くなるばかりだった。
そして次の相手は、ス・リーグ最強の打撃陣を持つファントムズ。
優勝を狙うスイーツにとっては三連敗は許されなかった。
★
『ファントムズ直衛、逆転のサヨナラホームラン!』
逆転勝利に沸くドームの熱気がテレビからも伝わるようだった。
「……」
優奈子はテレビをジッと見ていた。
テレビにはかつて同じチームメイトだったファントムズの正捕手、直衛景勝が映っていた。
ファントムズにいる間4番を務めていた強打者。
優奈子の一歩前を歩いていた男。優奈子は一度も4番にたつことが出来なかった。
笑顔一つ見せず仲間の手洗い歓迎を受ける直衛を優奈子は真剣な視線を向けていた。