有賀草悟はプロ野球選手になるようです   作:筆先文十郎

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古山博光の憂鬱その2~完結・古山博光の憂鬱

~古山博光の憂鬱その2~

「なあなあ博光。魔球を考えたから受けてくれ!」

「……投げてみろ」

古山は防具をつけて腰を落とす。

「いくぞ!」

「ん?」

古山は違和感に気づく。

(こいつは右投げ右打ち。なのに右手につける左利き用のグローブをつけている……まさか!)

古山の予想通りだった。

西河原は振りかぶって、グローブでボールを持ったまま、投げた。

ボールは転々と転がりホームベース手前で止まる。

「どうだ!このようにグローブで投げることで手で投げることの出来ない動きが加わり――」

「ボーク!反則球!!」

西河原の説明は烈火のごとく怒る古山の怒声にかき消された。

 

 

 

~古山博光の憂鬱その3~

「なあ博光!俺が作った魔球、見てくれ!」

スイーツの正捕手、古山(こやま)博光(ひろみつ)は残念そうな顔で再び同じチームで戦うことになった相棒・西河原(にしがわら)善一郎(ぜんいちろう)を見ていた。

「……」

見てくれと言われ、古山は防具をはめて腰を落とす。

その後西河原はバッターボックスにバットを出したマネキンを置く。

「じゃあ行くぞ!」

振りかぶった西河原が投げる。投げたボールはいたって普通のストレート、のように見えた。

 

バーンッ!

 

ボールはバットを(つた)ってマネキンの頭部を破壊した。

「どうだ、博光!この魔球直角(ちょっかく)は!?」

(アストロ球団の殺人L字投法じゃないか!)

というツッコミを入れたい気持ちを我慢にして、古山は総評をする。

「善一郎。お前がさっき投げた魔球直角。あれは正直すごい。あんな軌道を描く球を俺は診たことが無い」

「だろ?」

嬉しそうにはしゃぐ相棒に、古山はピシャリと言った。

「でもこれ、打ったバッターが大怪我負うよな?お前は相手打者の選手生命を、最悪命を奪ってまで魔球直角を投げたいか?」

「……」

その一言に、青ざめた顔で固まった。

これ以降、西河原善一郎が魔球直角を投げることはなかった。

 

 

 

~完結・古山博光の憂鬱~

「なあ、博光」

「却下だ!」

元ファントムズの第三捕手で現スイーツの正捕手、古山博光は高校時代バッテリーを組んでいた男の言葉を言う前から否定した。

「な、なんで……」

「どうせまた魔球だろう?前々から言っているだろう。地道にやれ!向こうを見てみろ」

博光が指を刺す。そこでは自分達より若い選手が一生懸命投球練習を続けていた。

「投手ならば自分だけのオリジナルボールを投げてみたいと思う気持ちは良くわかる。だがそんな物は一部の人間しか出来ない。冷泉さんの暴投と言える高さから急角度で落ちる“死神の鎌”も日野さんと血が滲む努力を数年やってやっと出来たものだと聞いている。お前みたいなプロで投げられる程度の才能と無駄な努力をしている人間に出来るもんじゃない!」

「無駄な努力とはなんだ!数多くの野球漫画を読んで魔球習得の参考にしている俺に対する言葉か!!」

「それが無駄な努力だといっているんだ!!」

「あうううっ!」

どこから取り出したのか、博光は巨大ハリセンで善一郎の頭を叩く。

「いいか。魔球なんて夢物語を語る前に先発としての仕事を全うしてから考えろ!ただでさえ中継ぎに負担をかけているんだから、最小失点で切り抜けて後続の投手にバトンタッチするくらいにはなれ。というわけでいいから投球練習をするぞ」

そういうと古山は西河原に新品の滑り止めのロージンバックを手渡す。

「くそっ、あんなに言わなくたっていいじゃん!」

感情に任せて西河原はロージンバックを力任せに叩く。

「うぐっ!?ゲホッゲホッ!?」

ロージンバックの粉が大量に舞い、咳き込む西河原。

「大丈夫か?」

腰を落とす博光が心配そうにホームベースから声をあげる。

「ああ、大丈夫だ。じゃあストレート投げるぞ!」

大きく上を上げた手を振り下ろす瞬間、

「バッ……クシキュンッッッ!!」

強烈なクシャミと共に投げ出された球は

 

 

バシシシィィィィィィンンンッッッ!!!!

 

 

唸りを上げてキャッチャーミットに収まった。

「ッ!?――――」

古山は言葉を失うしかなかった。160km近いストレートを投げる無頼、超・王臣を初め、多くの投手のボールを受け止めたことのある博光ですら想像につかない彼らのストレートを上回るストレートだった。

 

 

 

こうして西河原善一郎ただ一人の魔球が完成した。

 

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