プロ野球で女性が活躍できるようになって十数年。高校野球でも女性も男性とともに 甲子園に出場できるようになった。
彼女が入学したのは弱いとは言えないが強いとも言えないとある進学校だった。
高校2年の時、彼女は甲子園出場を果たした。
試合は2対0の完封負け。一回戦敗退したものの甲子園常連の相手だっただけに彼女の名を知らしめるきっかけとなった。
高校三年時は春夏ともに甲子園の出場はおろか準々決勝で敗退してしまったが、高校時代から弥子の才能に気がついていたスイーツはドラフト5位で彼女を指名した。
一軍昇格は果たしていないものの、二軍では一軍昇格間近な十分な成績を出している。
そんな彼女にはプロの世界に飛び込む前から抱える悩みがあった。それは女性にしては足が太いということである。その悩みの原因は彼女が高校時代に遡る。
彼女の学校は山の中にあった。ほとんどの学生はバスで通学しているが貧乏な彼女はバスで通学するお金がなく仕方なく自転車で通学していた。
マウンテンバイクなどではなく、ギアチェンジのなどない普通のママチャリである。彼女はそんな自転車で毎日学校に通っていた。
急傾斜の坂道は彼女に強靭な足腰を与えた。ピッチャーにとって大事な下半身を。同時に彼女のコンプレックスとなる足の太さも。
紅白戦以降、
そもそも冬狐は成人男性よりも体格がいい。小柄な弥子とは最初から土台が違っていた。
自分では死神の鎌は投げられない
そう悟った彼女はある日あることに気づく。冬狐のような上から下に落ちる投球が投げられないのならば下から 上に上がるボールならどうだ と。
思いつきとも言える考えからサイドスローからアンダースローに投球スタイルを変えた。
彼女は黙々と練習に励んだ。
そして冬狐から魔球『死神の鎌』教えてもらった半年後。
ズバンッ!
弥子が投げたボールが陽子のミットに収まる。
「……」
弥子の投げた球に、陽子は驚きを隠せなかった。
その夜。陽子は親友の冬狐に電話をかけた。
「冬狐。 私たちの2年間ってなんだったんだろう……」
「え?突然どうしたの、陽子」
いつもニコニコ見せる笑顔の裏で冷静に物事を見定める親友の放心した声に、名前と裏腹に熱い激情を持つ冷泉冬狐は戸惑うしかなかった。
青津弥子が一軍に上がる日は近い。
野村克也氏の訃報に「自分は何ができるのか?」を考え、「いままでほったらかしにしていたこの小説を進めることが野球に貢献することになり、かつ自分のできることではないか?」と考え短いながら投稿させてもらいました。
真に勝手ながら、この場を借りて野村克也氏のご冥福をお祈りさせていただきます。