有賀草悟はプロ野球選手になるようです   作:筆先文十郎

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タイトル通りスイーツに加入する新メンバーの男と現在スイーツ一軍レギュラーが誰なのかを読者の皆々様にお伝えする回です。

「ふぅん、こんな奴らが後々活躍するのかぁ~」と思っていただけると幸いです。


幕間 遅れてきた男とスイーツ一軍選手たち

3月末。スイートエンジェルズ本拠地、スイーツスタジアム。

美空星蘭(みそらせいらん)はまだヘッドコーチだった去年のシーズンを思い出していた。

「……酷かったわね、去年は」

遠い目で空を見ながら呟く。

失点を許す投手陣に繋がらない打線。ス・リーグ最弱の名前の通りの酷さで最下位だった。

5位グリフォンズとは9ゲーム差。1位ポセイドンとは40ゲーム差という散々な成績だった。

Aクラスだったのは美空が現役時代に一回あるだけ。それ以外は全てBクラスだ。

 

 

スイーツが優勝する前にスイーツ自体が消滅する。

 

 

それが多くの野球ファンが思うスイーツの印象だ。

だが美空の考えは違う。

(今年こそ優勝の旗はスイーツにたなびく!)

幾年も待ち焦がれていた時が、ついに訪れた。

最弱球団の汚名を持つスイーツにもスターと呼ばれる選手はいる。

一人はスイーツの守護神、響梅太郎(ひびきうめたろう)。プロ16年で通算180のセーブを積み上げたスイーツの歴代抑え投手最強といえるストッパーである。

ただ、彼は抑え投手だ。リードしている場面で登場する選手である。

勝利の道を確かにしてくれるものの、自ら勝ちを掴み取ることはできない。

いくら響が絶対的でも、チームが勝っている状況でなくては響の出番がない。

つまり、響がより輝くためには、他のスター選手が必要だということになる。チームを確実に勝ちへと導くスターと呼べる選手は二人いる。

隠九条憂男(いんくじょうゆお)

プロ4年目で初年度こそプロの壁を越えられず苦労したが、その壁を乗り越え今ではクリーンナップを務める長距離砲のアベレージヒッターである。

中宮寺優奈子(ちゅうぐうじゆなこ)

去年FAでスイーツに加入した女性選手で『肉を切らせて骨を断つ。骨を断たせて命を絶つ』をモットーとするス・リーグ最強の打撃陣、ファントムズのクリーンナップを務めた強打者である。

プロ14年で積み上げた本塁打数は220。当たればスタンドに飛ぶ、生粋のホームランバッター。そして移籍初年で初の本塁打王(43本)に輝いた。(ちなみにスイーツで初の本塁打王であり、女性ではかつてガーディアンズに所属していた男気剛拳(おとこぎごうけん)(45本)に続く二人目)

 

他の球団にも負けない最強の三、四番である。

スターと言えるほどではないが、二人に次ぐ活躍をしている選手もいる。

入江舞名(いりえまな)

女性ではあるが優奈子と憂男に次ぐ長打力を持つ外野手で足も速いことから主に五番(隠九条が五番の時は三番)を任せられる選手である。ミスも少なくまた状況に応じて進塁打などを打てるなど計算が出来る選手でもある。

年齢や金銭的な理由で選手が固定出来ない中、埋め合わせで使った結果、成長した若手もいる。

杉井貴士(すぎいたかし)

憂男と同期入団ということで彼を意識して打撃に力を入れていたが、打撃で彼に勝てないと悟ると自身が目指す方向性を修正。元々器用な人間だったためチーム事情をコロコロ変えられても素直にこなし、バントや進塁打など自分を殺して他者を生かす打撃を身につけた。

どこでも守れ、細かな作戦が立てやすくなる。レギュラーとしての実力もさることながら誰かが離脱した時の穴埋め的な意味でもスイーツに欠かすことの出来ない人材となっている。

古山博光(こやまひろみつ)

スイーツのエースだった鳳火呼子(おおとりひよこ)の人的保障で獲得したファントムズ第三捕手で、正捕手だった篠原習志の後を継ぐように正捕手に納まった選手である。

駒は(そろ)った。

優勝は自分達のものだ。そんな期待が美空の中に起こる。ただし

「投手さえどうにかすれば、ね」

美空は重いため息をついた。

先発投手は崩壊していた。

一番手投手という位置づけになる成田功(なりたいさお)

ただし最後の詰めが甘くたびたび勝利投手目前で点を取られるなど安定感ある選手とは言えない。

二番手投手には西河原善一郎(にしがわらぜんいちろう)

多彩な変化球を持つが、六回まで持つことは稀でそれまでに試合を決定付けてしまう失点をするのが特徴の投手だ。

三番手投手として外国人投手、チョロ・イング。

8勝をあげているが相手が二流投手だったから勝っただけでお世辞にも良い投手とは言い難い。それでも中4日でも投げられるタフネスで穴が空きがちなスイーツにとっては貴重な投手ともいえる。

候補と言えるのはドラフト1位で獲得した大卒投手、南部無頼(なんぶぶらい)

制球力の悪さから四球は多いがオープン戦では奪三振は全投手の中で一番多い。

あまり多くは期待しない。6~7回まで持ってくれればそれでいい。それが無頼に対する美空の評価だった。

それ以外の先発投手はその時に投げられる者を投げさせるとどうしようもないほど整っていない。

中継ぎも似たようなものだが、そんな劣悪な状況で。否、劣悪な状況だからこそ生まれた選手もいる。

岡本悦(おかもとえつ)

右投げの女性投手でコントロールはあるものの被弾率が高いために他球団なら一軍に上がれなかった。チーム事情で一軍に上げられた女性投手はそこで数多くの変化球を習得。体力がないため連投や回またぎはさせづらいがワンポイントでは計算できる数少ない投手である。

そして今年は二人の選手が計算できる選手として一軍にやってくる。

左の中継ぎとして久石譲二(ひさいしじょうじ)。そして本格右腕の冷泉冬狐(れいぜいとうこ)

(9回に響。8回に冷泉。先発は5回まで投げさせて状況次第で岡本と久石で何とかしのぐ。これがスイーツの継投パターンになりそうね。そして今年のスイーツは大技と小技を組み合わせた攻撃で相手を苦しめる。負けてもしぶとい。食らいつく野球を)

穴はあるが他球団とも互角に戦える戦力が整ったスイーツ。そのスイーツの快進撃を想像して、美空は笑った。

「楽しそうですね、監督」

そんな美空の後ろから、一人の引き締まった体つきの男が声をかけてきた。

新城護(しんじょうまもる)

38歳の外野手で、今いるスイーツの現役選手で唯一、投手・美空星蘭と共にプレイした古参である。

「そんなに楽しそうだったかしら?」

美空は照れを隠すように言い捨てた。

「ええ、全身から」

寡黙な男が嬉しそうに笑う。

「新城。貴方も楽しそうね」

「えぇ」

嬉しそうにグラウンドの選手達を見渡した後、感慨深く口を開く。

「ついにスイーツの在るべき姿が見られたのですから!」

「そうかしら?」

同じ思いだったがあえて美空は疑問で返す。

「違いましたか?」

生真面目な男には珍しく茶化すような口調で返す。

「そうかもね」

美空はとぼけた。

「……」

「……」

二人の間に永遠とも思える無言が続く。

「ねぇ、新城」

その無言を破ったのは美空だった。

「我がスイーツは『反撃のスイーツ』と呼ばれているわね。大体が反撃も及ばず、で終わるけど」

「そうですね」

新城は苦笑する。

「おそらく今年も反撃のスイーツになると思う。去年までと違うのは塁に誰かがいれば返せる選手が増えたということ。だからこそ終盤に代走で出れば帰還できる脚を持った選手が欲しい」

そうなる情景を思い浮かべて、美空はグラウンドのダイヤモンドを見た。

「……」

数年前に顎に死球を受けて以来、打撃が崩れてしまった新城は代走・守備固めとして現在まで活躍している。

新城は黙り込む。その理由を美空は知っていた。知っていたがあえて尋ねた。

「お願いできるかしら?」

「もちろんです。ご安心ください。スイーツのために相手守備陣を破壊する機動力破壊をお見せしましょう」

真面目な表情で新城は言った。そして、微笑む。

「なぁに。持たせて見せますよ。今年一杯くらいは……」

恐怖心から打者として役に立たない身体になっても、怪我や契約などで次々と選手がいなくなるスイーツを新城は支えた。

身体がボロボロなのは美空にもわかっている。

一瞬目を伏せた後、美空はバックスクリーンを見上げる。視線の先には旗をつけるポールが。

「見てみたいわね」

「何がです?」

「あそこに、スイーツのチャンピオンフラッグがたなびく姿が」

「……なるほど。確かに私も見てみたいですね」

「あの、美空監督。よろしいでしょうか?」

若い女性の声。外野手の入江舞名(いりえまな)の声に美空と新城は現実に戻される。

「どうしたかしら?」

感傷に浸っていたのをごまかすように、美空は真面目な顔で尋ねる。

「新入団の外国人と名乗る男を連行しました」

「連行とは、穏やかじゃないわね」

「確か遅れに遅れた外国人が今日くるとはミーティングで聞かされていたような?」

「と、とりあえず連れてきます」

そう言って一度二人の前から姿を消す。

数分後。手錠をつけられた端正な顔立ちの甲冑姿(かっちゅうすがた)の男が姿を現した。

 

「おおっ!我が美しき姫君!!」

 

「つまみ出せ」

「ハッ!」

舞名は男の鳩尾(みぞおち)に一撃食らわせると、動かなくなった甲冑男を外に連れ出す。

「な、なんだったのでしょうか。今のは」

「エイプリルフールかハロウィンだったのでしょう」

美空が謎の男を記憶から消去しようとした矢先。

 

「おおっ!我が美しき姫君!!お会いする日を一日千秋の思いで心待ちにしておりました!!」

 

どうやって戻ってきたのか、甲冑男が美空の前に姿を現した。

「……新城。警察にグラウンドに変質者が出たって通報して」

「待ってくれ。ミソラ、シンジョウ」

きりっとした声が通報しようとする美空を止める。

美空が振り返るとそこには銀髪の男性が立っていた。

ウィソ・ロッテンハイマー。

かつてスイーツの外野手として活躍した外国人選手で海外スカウトに転身。美空と新城と同時期に活躍した旧友である。

「この男が新加入の外国人投手、チャオ・ワンチェン(超・王臣)です」

「この変態が?」

「ああ、この変態が」

嘘と言ってくれと(にじ)ませる美空に、ウィソは残酷な事実を伝えた。

「おお!我が姫君!その美しいお顔をもっと見せて――」

普段から持っているのだろうか。舞名は美空に飛び寄ろうとした外国人にスタンガンを押し付け失神させる。

「どうしましょう監督?この男、すぐにでも排除しますが」

「そうね、お願いするわ」

「待ってくれミソラ!」

謎の外国人を連れて行かせようとする美空をウィソが止めた。

「変だとは思うがこの男を連れてくるのには本気で苦労したんだぞ!」

「まあこんな変質者を連れてくるのは大変でしたでしょうね」

興味なさそうに言う美空にウィソは続ける。

「じゃあ一つだけ。この男、チャオ・ワンチェンは複数のメジャー球団から複数年契約を熱望されるほどの実力者だ」

メジャーはプロ中のプロだけがプレイすることが許されるトップクラスの野球界である。そんな選手たちが集まるメジャーで複数の球団から複数年契約を申し込まれると言うのはよほどの実力者にしかありえないことだった。

「じゃあ聞くが、なんでそんな男がウチにくる?」

新城が尋ねる。

「メジャーからの誘いを断ったセリフです。『我が主はメジャーにおらず、日本にあり!』と」

ぽかんとする美空と新城。

そんな二人を見ながら笑い話をする口調で、ウィソは続ける。

「そして『我が主の下で働くための力を身につけるため』と彼はエベレストに登りました」

「「意味が分からん」」

美空と新城がそう言ってしまうほど、男の行動は理解できなかった。

「エベレストに登った後、彼はユーラシア大陸を徒歩で横断しドーバー海峡を泳ぎ、手こきボートでアメリカに渡りカナダ、ロシア、北朝鮮、韓国と歩いて渡り日本に向かって手こきボートで向かおうとした所を接触したというわけです」

「「……」」

二人は声が出なかった。

「まあ、頭の中身は保障は出来ないが、実力は保障できるぞ」

明るく言うウィソの言葉を聴きながら、美空は謎の外国人を見る。

(これをどう判断して信用しろというの?)

「信用していないようだな、ミソラ!俺はこの男と接触するのに――」

「待たれよ、ウィソ殿!」

抗議の声を止めたのは当の本人だった。

再び止めようとした舞名だったが、首下に当てられた刀で動きを止められてしまった。

「いきなりこのような変な男が現れて信用して欲しいというのは無理というものでしょう!」

((あ、変と言う自覚はあるんだ……))

美空と新城の心の声がハミングする。

「信用されるために必要なのは言葉にあらず……証明である!今からこの超・王臣、我が姫君にお仕えするに相応(ふさわ)しい実力を持っていることをお見せいたしましょう!!」

そう言うと王臣はマウンドに向かっていく。

「何だお前は!?今は俺が調整中だぞ!」

マウンドで古山を相手に調整を行っていた成田が怒声をあげたが

「超・王臣である!!」

「あ、そうですか……」

男の迫力に負け(というより関わりたくないという気持ちに負け)、成田はマウンドを降りた。

そして王臣がマウンドに立つ。

十分に肩を回し投球できる準備を整える。

「王をも超える臣下の力、存分にお見せしよう!」

男が気合を入れるや否や、男の髪が某アニメのキャラクターのように金髪に逆立つ。同時に甲冑ははじけ飛び、ユニフォームが姿を現す。

王臣が大きく振りかぶる。

ボールを握る右手が唸りをあげる。

放たれたのはストレート。だが浮き上がるかと錯覚するような伸びの火の玉のような、否。魂のこもった砲弾のような力強いストレート。

 

 

バシィィィンッッッ!!

 

 

 

捕球した古山の手が(しび)れる。

数多くの投手の球を受け止めてきた古山ですら受けたことの無い、衝撃とスピードのあるストレートだった。

「貴方は……とんでもないストレートを持っているのですね」

驚きを隠せぬ古山が、そう言いながらボールを返す。

王臣は、余裕の表情で言葉を返す。

「ハハッ。今の球がストレートに見えたかな?」

「なん……だと!」

(ストレートではないだと!?)

驚く古山に王臣は続ける。

「今の球はストレートではない。某が仕える尊き姫君の(さきがけ)となる、神をも殺す魔球。そう……(チャオ)(シェン)(チェン)である!」

(あ、ただの馬鹿か……)

古山はスルーすることに決めた。

「見ていただきましたか!我が主!!」

「ええ見たわ」

嬉しそうに近寄る王臣に、美空はきりっと顔を引き締める。その姿はまるで近寄ることすら許されない気高き女帝のよう。その姿に王臣は思わず立ち止まる。

「その前に私は聞きたい。私はスイーツを優勝に導きたいと考えている」

「承知!」

王臣は力強く答える。

「改めて聞くわ。貴方はただ私を狂信するファンの一人?それともスイーツの一人としてス・リーグの頂点を目指す仲間?」

その言葉に王臣の中にあった、浮かれていた気持ちが消えうせる。

王臣が日本に来た理由。それはインターネットで見た現役時代の美空に()かれたからだ。容姿もさることながら、投げるフォーム。諦めた選手達の中で一人、敵に向かっていくその姿に王臣は心を奪われた。

目の前で自分に厳しい言葉を投げかける女性は、映像の中で見た女性。否、それ以上に気高く、美しさを持っていた。

(我が姫君が必要としているのは投手である超・王臣であって、狂信する我ではない)

先ほどの変な外国人から一変、名将に付き従う規律ある兵士のように王臣は敬礼をし、答える。

「無論、スイーツと共に戦う戦士であります。美空監督(・・・・)!」

どこか変だが美空の下で共に戦う選手の誕生だった。

「……世も末ね」

「人格と才能は関係がない。とは言っても」

「卑怯ですね、ああいうの」

三人とも馬鹿馬鹿しいといった感情を(ぬぐ)えないが、共通して思うことはある。

新外国人(超・王臣)が使えるということ。穴が埋まらなかった先発がが整ったということに。

美空は新城をチラッと見ると、新城は微笑を浮かべた。

常識をはるかに逸脱する外国人の加入で、優勝への道が見えたと感じた。

ただしその光明は一瞬で消える。ウィソの言葉によって。

「ところでミソラ。チョロ・イングが緊急帰国したぞ」

「なんで?」

「給料と環境」

「なるほど」

それだけで美空は納得した。

弱小球団のスイーツは金がない。金がないから環境も悪い。だから育っても選手が外に出て行く。外国人投手は嫌気を指して出て行く。スイーツにとっては日常茶飯事のことだった。

「あと新加入するはずだった外国人が幼女への痴漢行為を働いて来日できなくなったぞ」

美空は大きくため息をつくが、次の瞬間気を取り直す。

(良いことも悪いこともいつも気まぐれにやってくる。大切なのは、良い事で喜び、悪いことで必要以上に沈まない事。そして自分のできる最善を、できる限りでやっていくことね)

「忙しくなるわね」

その言葉とは裏腹に、美空の顔は緩んでいた。

「ところで美空監督お願いがあるのですが」

ニョキッと美空の前に立った王臣に複雑な表情をする。

「……あの、いきなり出てこないでくれる?ビックリするから」

それは申し訳ございません、と頭を下げて王臣は続ける。

「一刻も早くチームに溶け込みたいので、自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか?」

「あ、そうね」

常識的なことも言えるんだ、という素振りは隠し、美空は選手たちを集合させる。

「え~、突然で済まない。今日チームに合流することになった超・王臣だ。皆仲良くするように……あと私に何か言いたげな視線を送るのはやめなさい」

選手たちに釘をさしてから美空は続ける。

「ではいっぺんに言っても覚えられないでしょうから、野手のレギュラーを自己紹介するわ」

「だったら打順ごとに説明した方がいいわよね」

と、背中まである黒髪で紫の口紅を塗ったオカマが高い男の声で会話に入る。

「じゃあ八千代(やちよ)からお願い」

美空の言葉に先ほど提案したオカマがコホンと咳ばらいをした。

「では、打順一番。八千代智那(やちよともな)、27歳。オカマだけど可愛いマイハニーがいるわ。ポジションはファースト。打率は規定打席達成選手の中で低い方だけど出塁率は高いわ。よろしく、イケメンさん」

「こちらこそよろしく頼む!」

投げキッスをするオカマに、王臣はピシッと敬礼をして答える。

(八千代さんの投げキッスを嫌がるどころか真面目に返しているよ、この人……)

他の人も思っていることを中性的な容姿のチャラそうな男が口を開く。

「じゃあ次は杉井貴士(すぎいたかし)、23歳。ポジションはセカンド。ポジションは主にセカンドを任されていますが、ピッチャーとキャッチャー以外ならどこでも守れます」

「なるほど、それは素晴らしい!」

「三番サード、隠九条憂男(いんくじょうゆお)。23歳。さっき紹介した杉井とは同期です。タイトルとかはありませんが、打つのには自信があります」

「なるほど、良い身体をしている!」

ウッと一瞬嫌そうな顔をする憂男に同情しながら長身の小麦色の肌の巨乳女性が続く。

「私は中宮寺優奈子(ちゅうぐうじゆなこ)。32歳独身。四番でポジションはレフト。通算本塁打は220。去年本塁打王になったので、どでかい花火は私に任せて」

「本塁打王!それは素晴らしい。大船に乗った気で行かせてもらいましょう!」

では、と先ほど王臣を取り押さえた女性が自己紹介する。

「五番センター入江舞名(いりえまな)。25歳の独身。自慢できる実績と言えば本塁突入アウトを三回成功させたほどの強肩かな」

「素晴らしい肩の持ち主だ」

今度は俺か、と苦労人顔の男が続く。

「六番ショート直木得留(すぐきえる)は別件のため外して。七番ライト白藤(しらふじ)(ひじり)。33歳既婚者だ。打撃も出塁率も守備も肩も一軍半レベルだが一軍半以下の投手には強い。一軍半キラーと覚えておいてくれ」

「なるほど、期待させてもらいます!」

白藤さん……なんという自虐的な自己紹介を。と思いながら日本人男性を平均化したような特徴のない容姿の男が続く。

「八番キャッチャー古山博光(こやまひろみつ)。28歳独身。タイトルはないですが去年後逸は1でした。安心して投げ込んでください、と言っておきます」

「なるほど。後逸が1とは安心して投げられるというもの。大いに期待させてもらいます!」

(よし、今度は俺が!)

気合を入れる投手、成田だったが

「一回では覚えられないでしょうから今日はここまでね」

あ、そうですよね……と気合を入れていた成田が意気消沈する。

「それじゃあ、皆。2018年、スイーツの年と言えるような活躍を期待している、解散!」

美空がそう言って締めた。

 

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