スケジュールとか。
みそわかめさん、ご指摘ありがとうございます!
先輩である日菜さんに抱き着かれながら部屋に戻る道中、俺は持っていた飲み物を仕方なく鞄に入れた。そして何気なく上着のポケットを漁っているとある物を発見する。それをポケットから出し、中から銀紙に包まれた小さな粒を1つ取り出して後ろにいる日菜さんへと見せる。
「日菜さん、ガム食べます?」
「食べさせて!」
「面倒なのでやっぱり無しで」
「ごめんって、ちゃんと自分で食べるから!」
日菜さんはそう言いながら俺の手からガムを受け取ると、幸せそうにガムを食べる。前々から思ってたけど、好きな食べ物がガムって珍しいと思う。しかも女子で。まあおいしいかと言われたらおいしいけどさ、好きな食べ物かって聞かれたら別じゃない?ジャンルとして。
「ふぅ、やっと着いたー」
「そんなに歩いてませんよ。あと、レッスン始まる前にはちゃんと戻ってくださいね。千聖さんに怒られるの嫌なんで」
「分かってるって。それじゃ、おじゃましまーす!」
ドアの前に着いた途端に、日菜さんは俺から離れ、部屋の中に入る。俺も続いて中に入ると、先程まで寝ていたであろう海瀬さんも含め既に他のメンバーの準備は整っていた。
「ずいぶん遅かったな優斗。それにいつもの氷川まで」
「やっほー、こーよー!」
「“もみじ”だ!いい加減覚えろ!!」
「やーだー」
この2人のやり取りはいつもこれから始まる。普段は何でもすぐにこなせる、いわゆる天才と言われる日菜さんだが、地図記号だけは覚えられないのだ。紅葉さんの名前を覚えられないのは意図的なのか分からないが、この人でも覚えられないのなら(覚える気の無いなら)諦めるしかないだろう。
「それじゃ、皆そろそろ始めるよ。日菜さんもパスパレの所に戻るように」
「はーい」
相川さんがそう言うと、素直に部屋から出ていく日菜さん。基本的に俺らの言うことを聞かない日菜さんだが、相川さんの言うことは素直に聞くのだ。これが3年生の力なのだろうか。
今から俺たちのアイドルグループ、“ELEMENT”のダンスレッスンが始まる。
まだ何も言ってなかったが、俺たちはアイドルだ。
「はい皆、お疲れさま」
『し、死ぬ......』
2時間のレッスンを終えたのだが、相川さんを除く4人は虫の息だった。なんだよあの鬼コーチ。俺らを殺す気だろ・・・・・・。なんせ腕立て100回、腹筋100回、スクワット100回、背筋70回を3セット。その後に振付の確認。昔から運動をしていなかった俺たちにとってはきつすぎる。海瀬さんなんか終了と同時に倒れてたし。
最近周りからの認知度が上がってきたので、ダンスを披露することも増えた。それに伴って体力の増強をしているところだ。
「じゃあ取り敢えずシャワーを浴びに行こうか」
『ういっす......』
一切疲れを見せない相川さんの提案に、俺らは消え入りそうな声で返事をする。
相川さんは化け物なのか・・・・・・?
「ふぅ~、気持ちよかった~」
「明日・・・・・・絶対、筋肉痛」
「海瀬、白金ちゃんにマッサージでもしてもらったらどうだ?」
「帰ったら家事やんないと」
「さて、皆揃ったし今日は解散で!」
今日はレッスンだけで終了。たまにこのレッスンの後に打ち合わせが入ったりするが、正直疲れで起きていられたときは無い。
ELEMENTのリーダーである相川さんの号令により、それぞれ荷物を持ってそれぞれロッカールームから出る。
みんなが帰る中、俺は一人で別の部屋へと向かっていた。
部屋の前まで来て札を確認する。そこにはPastel*Palettsと書かれていた。レッスンの時間は終わっているはずなので、邪魔にはならないはずだ。
「失礼します」
一言だけそう言うと扉を開ける。そこには案の定、パスパレのメンバーがいた。
「あれ? 優斗君じゃないですか!お久しぶりっす!!」
「はい、お久ぶりです。麻弥さん」
この人はドラム担当の“大和 麻弥”。年は俺の一個上で、かなりの機械オタクである。普段は眼鏡をしているのだが、バンドのレッスン等になると外している。
「あ、ホントです!ユウトさん、今日はどうしたんですか?」
こちらはキーボード担当の“若宮イヴ”。年は俺と同じで、ハーフの帰国子女である。日本の武士道に憧れているらしい。
「今日は姉さんを迎えに来たんです。姉さん、早く帰るよ。買い出しだってしなきゃならないし」
姉さんと言うのは、今壁に寄りかかりながらぐったりとしている“丸山 彩”、自称ふわふわピンク担当であり、ボーカル担当。さらに俺、優斗の姉でもある。
「優斗、おぶって~」
「彩ちゃん、しっかりしなさい」
「ねえ優斗、この後ファミレス行こうよ!」
「日菜さん話聞いてました? 買い出し行くんですけど」
姉さんは相変わらずだし、日菜さんは自由人だし、その二人を監視している千聖さんにはホント同情しますよ・・・・・・。ま、麻弥さんとイヴさんも結構癖が強かったりするんだけどね。
「そうだ、どうせなら皆で行こうよ!」
「日菜さん、お願いですから話聞いてください」
「まあまあ優斗、彩ちゃんもこんなだし、相川さんからさっき連絡貰ったけど、今日はかなりきつかったのでしょう?その後にご飯を作るのも大変でしょうし、たまにはいいんじゃないかしら?」
「はぁ、分かりましたよ」
今回は俺が折れて、日菜さんの要望に応えることにした。他のパスパレのメンバーもファミレスに行くのは賛成のようで、心なしか会話が弾んでいる。
レッスンが終わっていると言ってもまだシャワーを浴びていないらしく、メンバーが戻って来るまで待つことにした。
待ち始めてから数分後、ドアがノックされた。シャワーを浴び終えるにはまだ早い。おそらくマネージャーだろう。何か連絡事項があれば俺が代わりに伝えるつもりでいた。
だが、入ってきたのは予想外の人物だった。
「あれ、海瀬さん? どうしたんですか?」
なんと来客は海瀬さんだったらしい。他のメンバーと共に帰ったと思っていたのだが、どうやら残っていたようだ。
「一番早くシャワー室から出て・・・・・・休憩室で寝てたら・・・置いてかれた」
「他の誰かに言っておいたんですか?」
「言ってない・・・」
「そりゃ置いてかれますよ!!」
というかこの人、一番最初にシャワーを終えたそのまま休憩室行ったなら、相川さんの号令聞いてないのか。この人普段、寝てるか眠そうにしてるかだもんな。あまり喋らないし、こういうことが起こってもしょうがないだろう。
「ん? 海瀬さんが残ってる理由は分かりましたけど、なんでここに来たんですか?」
そういえばこの人がここに来る理由はまだ聞いていない。他のメンバーは俺がここにいることを知らないし、俺だって伝えていない。かといって海瀬さんがパスパレのメンバーと仲がいいかと言われるとそう言うわけでもない。せいぜいすれ違った時に小声で挨拶するくらいだ。
「優斗と・・・・・・帰ろうと思って。いつも、氷川に引っ付いてるから・・・・・・もしかしたら、今日も・・・狙ってるかと思った」
「逆ですよ! 日菜さんが俺に引っ付いてくるんですからね!?」
「自意識・・・過剰」
「違います!!」
普段海瀬さんとここまで話さないため、この人が人をいじるとは思わなかった。そう言えば、今日の海瀬さんはいつもより眠そうではない。さっきまで寝てたからだろうか。いや、この人に限ってそれは無い。仮眠を取ってもと常に睡魔に襲われている。もしかして・・・。
「海瀬さん、何かいいことでもありました?」
俺がそう聞くと、海瀬さんは右手でV字を作り・・・。
「燐子が・・・・・・マッサージ・・・してくれるって」
「マジですか?」
「マジ」
何だこの人、羨ましすぎるぞ! あの“Roselia”の“白金 燐子”さんにマッサージしてもらえるなんて!! てかさっき紅葉さんの言ったことほんとに頼んだのかよ!?
「羨ましいなら・・・・・・優斗は、氷川に・・・頼めばいい」
「嫌ですよ。あの人絶対に面白がるじゃないですか」
「でも・・・氷川以外に、優斗を触ってくれそうな・・・・・・女子はいない」
「かなり傷つきましたよ、それ」
他にも一応姉さんがいるが、マッサージなんて出来たものではない。逆に俺がしてるぐらいだ。
これ以上海瀬さんと話していると残った体力を全て持っていかれそうだ。姉さんたち早く帰ってこないかな・・・・・・。
前回のアフロのイベでは蘭ちゃんをゲットできなかったので(バンドリ始めたばっか)、次の千聖ちゃんのイベでは頑張ります!
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