シャワーを浴び終えたパスパレのメンバーと合流した後、ファミレスへと向かったのだが......。
「海瀬さんもファミレス行くんですか?」
「お腹...空いたから......」
そう言えばそうか。もう夜だしな。
流石の海瀬さんでも空腹のときには眠くならないのだろう。足取りはしっかりしていた。
店に着いた後、しっかりと変装するのも忘れない。俺は伊達メガネで、海瀬さんはニット帽を目元深くまでかぶっていた。
「優斗達も変装するのね」
「全く知らない人に話しかけられるのちょっと......」
「注目......されるの...苦手」
「理由がアイドルらしくない......」
普段から変装せずとも誰からも声をかけられない姉さんが苦笑いしながら返すが、バレたときの辛さを是非知ってほしい。いつになるか分からないが。
店に入り、店員さんの案内を受けた後、席に座るのだが、そこで問題が。
「7人だと座れないわね......。3と4に別れれば丁度いいけど」
「あ、俺たちのことは気にしなくていいですよ。パスパレの皆さんで楽しんでください」
「広い方が......寝やすいし......」
「こんなところで寝ないでください」
折角パスパレのメンバーが揃って食事に来ているのだ。ここは部外者である自分たちは身を引くべきだろう。そう思って提案したのだが......。
「えー、優斗も一緒に食べようよー!」
どうやら日菜さんに引く気はないらしい。千聖さんの言う通り別れるのも手だが、俺と海瀬さんは一緒になるので(一緒になっておかないと海瀬さんが寝るため)、残りの枠は1人か2人。おそらく日菜さんと姉さんが一緒に食べると言い出すが、このメンツではいつものメンバーと特に変わらない。折角他のメンバーがいるのだから、普段話さないイヴさんや麻弥さんとも話してみたい気もある。
中々良い案が出ない中、新たに5人のお客さんが来たようだ。
その途端に、先程まで眠気に襲われていた海瀬さんの意識が覚醒した。
「優斗......Roseliaが...来てる」
「え? あ、本当だ......。そうだ海瀬さん、このままだと埒が明かないので......」
他の人には聞こえないように海瀬さんに耳打ちする。
俺の提案に頷いた海瀬さんは、席に着こうとするRoseliaの元へと向かった。
少したった後、海瀬さんはRoseliaの人たちと一緒に席に着いた。
どうやら成功したらしい。
「海瀬君に何を吹き込んだの?」
「吹き込んだなんて失礼ですね、千聖さん。海瀬さんはRoseliaのメンバーとそれなりに面識があるので、申し訳ないですけど相席を頼んだんですよ」
「本音は?」
「海瀬さんを白金さんに押し付けたかっただけです」
事務所内でも海瀬さんが言ってた通り、白金さんとはマッサージを頼める中だし、年が少し離れているあこちゃんとも接点がある。主にゲームを通じてだが。
その2人が海瀬さんの話をよく他のメンバーにもしているようで、以前あったときにすんなりと受け入れてもらえたらしい。
人数も丁度良くなり6人席に座った。
並びとしては、俺の左に日菜さん、右に姉さん。向かいに麻弥さん、左斜めにイヴさん、右斜めに千聖さん。という具合だ。
なぜ俺が真ん中で、しかもちゃっかり日菜さんが隣にいるのかは知らないが、この並びはまずい。これでは日菜さんからの攻撃を誰も止めてくれない。頼みの綱である姉さんは、日菜さんの行動が見えないため、期待できない。
「日菜さん、妙な真似したらコーヒーかけますからね」
「ぶー」
その後は俺の牽制が利いたのか、日菜さんが何かしてくることは無かったのだが......。
「むぅ...」
先程から日菜さんの機嫌が悪い。
おそらく、いや絶対に俺へのスキンシップが取れないことへの不満だろう。だがそんな不満顔をされても、それを許してしまうと俺への被害が出てしまうので許すわけにはいかない。
「そんな顔をしても駄目ですよ」
「むぅぅ......」
「うっ...」
ただの不満顔だった日菜さんの目には少し涙が溜まっていた。流石は天才といったところだろうか、かなり心を揺さぶられる。
「あら、ELEMENTのメンバーが女の子を泣かせるのかしら?」
「ぐっ!」
日菜さんの抑制をしてくれると信じていた千聖さんからのまさかの裏切りにより、追撃を受けてしまう。他のメンバーの視線もこちらに向いてしまい、本当に後が無くなった。
「はあ、分かりました! 1つだけですよ?」
「やったー! じゃあ、はい!」
「え?」
突然目の前に差し出されるフライドポテト。
まさか......。あーんをされろと?
「いやいや、ちょっと待ってください!? 流石にこれは駄目ですよ!」
「はい、あーん!」
「日菜さん! 話を聞いむぐっ!!」
口を開けたのが最後、ポテトを押し込まれ、周りのメンバーには写真を撮られる始末。
今日は散々だ......。
パシャっ!
本来聞こえるはずの無い後ろの方からシャッター音が。誰かと思い後ろを振り向くと......。
「いいもの......撮れた...」
「は、初めまして......優斗さん」
「海瀬さんに白金さん!?」
かすかに満足げな表情の海瀬さんと、白金さんがいた。他のRoseliaのメンバーはどうやら会計をしているようだ。
「って、海瀬さん! 写真消して下さい!!」
「......いいよ」
「え?」
海瀬さんはそう言うと、フォルダの画面を俺に見せながら写真を削除した。あれ、ほんとにいいの?紅葉さんとかなら嬉々として画像を流出させるのに......。
「じゃあ......俺たちは...もう行くから......じゃあ」
「ま、またね」
「あ、はい。お疲れ様です。海瀬さん、白金さん」
2人はそう言うと、残りのRoselisaのメンバーと共に店を出ていった。そう言えば海瀬さん、白金さんにマッサージしてもらうんだっけ。羨ましい......。
「私たちも行きましょうか」
「そうだね、それじゃあお会計してこようか」
割り勘で会計を済ませた後解散し、それぞれが帰路に着く。
今日は金曜日なので、明日が休日なのをいいことに日菜さんが俺と姉さんの所に泊まりに来ようとしていたが、流石に急すぎたのと、それは千聖さんが止めてくれたので何とかなった。
「今日はごめんね優斗。日菜ちゃんにも困っちゃうね...」
帰り道、姉弟なので当然同じ道を通る。その途中に、姉さんから日菜さんのわがままについて謝罪されるのだが......。
「そもそも、誰のせいだと思ってるの?」
「うっ! ごめん......」
正直、姉さんがレッスンでへばっていなければ予定通り買い出しをしていたのだ。姉さんにはもうちょっと体力を付けてもらいたい。
「俺明日絶対起きれないから、朝ご飯よろしくね」
「えっ! それは困るよ!! だって冷蔵庫の中空っぽだよ!?」
姉さんが絶望的な顔をするが、姉さんの言う通り、今我が家の冷蔵庫は空である。そのための買い出しを今日予定してたのだが......。
「じゃあ朝一で買い出し行くしかないね。姉さん?」
「お願い優斗~! 今から買い出し行こう!」
「嫌だ! 俺はもう帰って寝る!!」
「お願いだからー!!」
この後近くのスーパーで閉店時間に追われながら、急いで買い物を済ませ、帰りに疲れ切って歩けなくなった軟弱姉をおんぶしながら帰ることになった。
今回は少し短かったですね...
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