姉弟でアイドル   作:かるな

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 だんだん涼しくなってきましたね。




日常4

 

 ピピピッ!

 ピピピッ!

 ピピピッ!

 

 ガンッ!!

 

 

 

「痛っ......!」

 

 

 

 あのファミレスの件から2日経ち、今日は日曜日。本来ならゆったりと11時ごろまで寝たいところだが、自己主張が強い目覚まし時計に邪魔され、6時に起こされる。そんな時計に恨みを込めて音を止めるも、かえりうちにあい、痛みで目が覚める。

 

 

 

「朝ご飯、作らないと......」

 

 

 

 丸山家の食事は当番制である。朝が早く夜遅くに帰ってくる両親のために、俺と姉さんが始めたのだ。昨日は姉さんが作ったため、今日は俺の番である。

 

 俺たち姉弟の部屋は2階にあるため、1階の台所へ向かうのだが、その前にやることがあるのだ。

 

 

 

「姉さん、入るよー」

 

 

 

 返事を待たずに、姉の...“丸山 彩”の部屋に入る。よくあるラノベみたいに着替え中にバッタリ、なんてことは無い。なぜなら姉さんが自力で起きれるわけが無いからである。

 

掛け布団にくるまり、幸せそうな顔で寝ている姉さんを見ると、起こすのが躊躇われるのだが、そんなことを言ってる場合ではない。今日パスパレは午前中にレッスンがあるらしく、遅らせるわけにはいかないのだ。

 

 

 

「姉さん起きて」

 

 

 

 取り敢えず姉さんの肩を軽く揺さぶってみる。こんなことで起きはしないが、一応起こすときのルーチンになっている。

 

 

 

「むにゃむにゃ......」

 

 

 

 まあ起きないわな。今度は強く揺さぶってみる。

 

 

 

「分かったよ日菜ちゃん~。1日だけだよ~。むにゃ……」

 

 

 

日菜さんが夢に出てきてるのか。あの水色の悪魔にとりつかれてちゃ夢見も悪いだろう。早急に起こす必要がある。

 

 ん? まだ続きを言いそうだな。ちょっと聞いてみるか。

 

 

 

「1日だけなら、優斗を好きにしていいよ......むにゃ...」

 

 

 

ゾクッ!!!

 

 

 

「起きろっ!!」

 

 

 

「はふっ!」

 

 

 

 突如聞こえてきた謎の言葉に悪寒を感じ、つい布団越しに姉さんのお腹を叩いてしまった。姉さんの口から空気が抜けたような声が聞こえたが、そんな場合ではない。こちらは身の危険を感じたのだ。しょうがないだろう。

 

 

 

「うぅ...もうちょっと優しく起こしてよ......」

 

 

「ごめん、姉さんがうなされてたから焦っちゃったよ」

 

 

「そうなの? う~ん、結構楽しい夢を見てた気がするんだけど......」

 

 

「とにかく、支度しなよ。午前中はレッスンがあるんでしょ?」

 

 

「そうだった!」

 

 

「朝ご飯が出来るまでには来てよ?」

 

 

 

 その後、支度を終えた姉さんと一緒に朝食を済ませ、事務所へと向かった。

 

 

 

「じゃあ姉さん、俺こっちだから。レッスン頑張って」

 

 

「ありがとう。優斗も頑張って」

 

 

 

 姉さんと別れた後、ELEMENTの集合場所となっている部屋を目指す。道中で千聖さんと麻弥さんに会い、いつもの軽い言い合いが始まり、麻弥さんがお互いを宥めるといったやり取りをしていた。

 

 

 

「おはようございまーす」

 

 

『おはよー』

 

 

 

 俺を除いた4人は既に集まって……あれ? 海人がいない…。

 海人とは、俺と同じ高1の“四谷 海人”。性格は結構明るく、語尾を伸ばしながら喋るのが特徴だ。

 

 あいつが遅れるのは......珍しくはないな。

 

 

 

「相川さん、海人はどうしたんですか?」

 

 

「さっき連絡が入ってね。寝坊したらしいよ」

 

 

 

 どうやら割と普通な理由だった。なんだつまらん。でも遅刻はマズイよな…。最近は遅刻しないようにあれこれ手を尽くしてたけど、やはり休日の午前中は厳しいものがあるか。あいつ一人暮らしだもんな。

 

 そんなことを思いながら海人を待っていると、不意に扉が開き、一人の女性が缶コーヒーを片手に入ってきた。

 

 

 

「全くあんた達は、何でこう遅刻が多いのよ......」

 

 

「真由さん...」

 

 

 

 この女性は“橘 真由”。俺たちELEMENTのマネージャーだ。年は22歳で、18歳のときにこの事務所に就職。その後実力を認められ、若くしてその地位に付いている。年がそこまで離れていないということもあり、だいぶ親しみやすいのだが......。

 

 

 

「あんた達、あたしが若いからって甘く見てるんだよね?」

 

 

 

『......っ!』ブンブンッ!

 

 

 

 一斉に首を横に振る俺たち。いつもは気前が良く優しい真由さんだが、怒らせるとかなり怖い。その証拠に、先程まで寝ていた海瀬さんがしっかり起きているほどだ。

 

 

 

「はあ......海人は後でシメとくとして、先に連絡事項があるわ。再来週放送予定の音楽番組あるでしょ? それに前座として呼ばれたわ。簡単に言うとオープニングの盛り上げ役ね。最近のあんた達の活動を見て上が掛け合ってくれたらしいわよ」

 

 

「ほんとですか!?」

 

 

「よっしゃ! 久しぶりのテレビだ!!」

 

 

「また...注目...される......」

 

 

「姉さんからの無言の圧力にさらされる日々が......!」

 

 

 

 喜ぶものが2名、怯えるものが2名。

 そんな状態だが、別にテレビに出るのを心から嫌がっているわけではない。ただ俺の場合は、本番前に精神が持つかどうか......。

 

 

 

「そんなわけで、この事ちゃんと頭に入れといてね。それと、もし今度レッスンや打ち合わせに遅れるようなら......」

 

 

 

 真由美さんはそう言うと、飲み干したらしい缶コーヒーを右手に持ち、目の高さまで上げると.........。

 

 

 グシャッ!!!

 

 

 

『......っ!!』

 

 

「分かった?」

 

 

『......!』コクコクッ!

 

 

 

 真由さんの笑顔と犠牲になった缶コーヒーの前には、全員が頷くしかなかった。

 だってさ、あの缶コーヒー......スチール缶だよ? 何あのバカぢから。

 

 そんな中、またもや突然ドアが開く。入ってきたのは......。

 

 

 

「いや~、遅れました~。あれ? まだ始まてない感じですか?良かった~、起きた時はどうしようかと思いましたよ~」

 

 

『.........。』

 

 

 

 場の空気が一瞬で凍り付き、その後、遅れてきた海人がどうなったかは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「普通あそこまで怒るかな~」

 

 

「お前が寝坊したんだから自業自得だろ?」

 

 

 

 打ち合わせが終わった後解散した俺たちだが、俺と海人はカフェによることにした。どうやらこのカフェ、海人の行きつけだと言う。店の雰囲気は落ち着いた感じで、中々ゆったりできるいい場所だ。

 

 

 

「なあ優斗。何を頼むんだ?」

 

 

「無難に紅茶とシフォンケーキのセットかな」

 

 

「じゃあ俺は~......ショートケーキとロールケーキとガトーショコラと~...」

 

 

「待て待て待て、頼み過ぎだ! お前一人暮らしだろ!?」

 

 

 

 一体何個頼むつもりなのだろう。いつもは俺らと普通の量を頼むのに...。もしかして下宿先では食べまくっているのだろうか。それよりも、そんな金はどこから出てくるのか。

 

 

 

「注文お願いしま~す!」

 

 

 

 そんな俺の心配などお構いなしに、店員を呼ぶ海人。ほんとにあの量を頼む気なのだろうか。

 

 

 

「お待たせしました!......って、海人君!?」

 

 

 

 注文を取りに来てくれたのは、俺らと同じくらいの年だと思われる女の子だった。茶髪で、髪の長さは肩に届かないぐらい。声の感じからして、穏やかな性格だろう。しかもどうやらこの子は、海人と知り合いのようだ。くそっ! 海瀬さんといい海人といい、何でこいつらの知り合いの女子はこうも......。やめとこう。なんか悲しくなってきた。

 

 

 

「久しぶりつぐみ~。来たよ~」

 

 

「海人君、昨日も来たばっかだよね?」

 

 

「お前......まさか前も結構な量食べたんじゃ......」

 

 

「ん~...。ケーキ5つしか食べてないけどな~」

 

 

 

 こいつには一度、健康管理の講習会でも受けさせるべきだろう。この事を千聖さんが知ったら......。

 

 

 

「海人君って、ほんとモカちゃんに似てるよね......」

 

 

 

 モカ? またもや海人の知り合いだろうか...。

 

 

 

「モカってのは誰なんだ?」

 

 

「そう言えば優斗には話したこと無いんだっけ~。じゃあ紹介するよ。この子がつぐみちゃんで~、“After grow”っていうガールズバンドのキーボードやってて、んでもってモカちゃんって言うのは、同じバンドの子でギターやってるんだ。因みにメンバー全員高校1年生~」

 

 

「初めまして。“羽沢 つぐみ”です! 海人君が言ってたように、After growでキーボードをやってます。よろしくお願いします!」

 

 

「俺は丸山 優斗。海人と同じELEMENTのメンバーで、高校1年。こちらこそよろしくね、羽沢さん」

 

 

 

 

 今度、Aftergrowのライブ見に行ってこようかな。

 

 この後、海人と羽沢さんと俺を含めた3人で軽い雑談をし、気付いたら日が暮れていた。

 こうして、俺たちは久しぶりのゆったりとした時間を満喫したのだった。

 

 

 





前言撤回熱いです。

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