騎士と一角獣   作:un

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四話 水面下の思惑

「えーと、本当にすみませんでした…」

 

 アディに強く抱きしめられているエルが深く頭を下げ謝った。

 ビームマグナムの試し打ちによる事件から数時間後、強力なビームの被害を受けた建物の修繕や駆けつけた野次馬達に説明をしたりと全員で事の対処にあたり皆顔に疲れが現れていた。

 

 幸いにも今日はお祭りの最中だったため大半の者が大きな花火だと勘違いし、これ以上に被害はなかったが、今回の事でユニコーンの調査は慎重に行うのと、ビームマグナムの使用は禁止の方針が固まった。

 

「ちくしょう、あんな強力なモン。一体どこのどいつが作りやがった? 国でも滅ぼす気かよ? しかも、あんなのがまだ14個も残ってんだぞ?」

 

 親方の目先には、ビームマグナムとユニコーンの背部の腰につけられたパックがあった。ビームマグナムの弾はEパックと呼ばれるエネルギーが蓄えられたパックを一つ消費することで一発撃つことができ、銃本体に取り付けてある4発と腰にある10発がまだ残っており親方がため息を出す。

 

「とにかくだ、あの白いのを動かすな。まだ騒ぎが起きたら面倒だからな、分かったな坊主!?」

 

 親方の怒声まじりの忠告をうけ仕方なく頷くエル。その後、親方や騎士たちは解散しエル達もそれぞれ自宅に戻った。

 

 屋敷に戻ったエルは父であるマティアスと、母であるセレスティナ。ラウリらと今日起きた事を話しながら夕食を摂る。学園の教官である父は昼間に起きた謎の光の正体がユニコーンだと息子から聞き手が止まるが、ティナはにこやかな表情を浮かべる。

 

「あらあら、エルはすっかり夢中みたいね?」

 

「はい!! とっても楽しみにしています!!」

 

「けど、無理はダメよ? 急に家にいなくて驚いたのよ?」

 

 

 エルはうなずき、やんわりとした会話する母と子を見て祖父と父は頭を悩ますのであった。その後、自室に戻ったエルは白紙とペンを取り出し何かを書いていく。

 

「まずは、緑色の機体…ザクと言いましたか? こちらはジオン系統の機体で、ジムやガンダムは連邦制でしたね」

 

 エルはユニコーンの中で見つけた「面白い物」を次々と紙に書いていく。

 

 エルが見つけた物とはUC(宇宙世紀)に作られたMSのデータであり、連邦・ジオン系統のMSのデータからさらに、ユニコーンを含めたガンダムタイプのデータまでありエルにとってはまさに「宝箱」でもあった。

 

 記憶に留めておいた機体の情報を紙に書き、分析をしていく。例えデータがあったとしてもUC世界のMSを、魔法世界であるこの世界で製造することはできないが、王に報告する価値があり後で報告の資料を作成しようと考えながら手を動かし続けること数時間。

 

「ジム・ネモ・ゲルググ・ドム…あぁ量産期も素晴らしいですが、やはりガンダムタイプは美しい。ワンオフ機体だけでも魅力的なのに、数々の伝説を作り人々から「白い悪魔」と呼ばれるなんて…」

 

 机の上がMSの情報が書かれた紙で一杯になる中。エルはユニコーンに似た額に二本のアンテナを付けた「ガンダムタイプ」が気に入ったらしくガンダムタイプの資料を丁重に机の中にしまう。

 

 何時間も作業した疲れと、あまり寝ていなかったため強い眠気が襲いかかりエルは手にペンを持ったまま寝落ちしたーー

 

 同時刻。オルター家の子供部屋にて、キッドは夢の中にいた。

 

「ここどこだ?」

 

 キッドは暗い宇宙空間を一人で立って呆然としていた。キッド自身「これは夢だな」としばらくして気づき、いつ覚めるのかと考えていると、遠くの方で何かが光った。キッドは光の方が気になり近づくと、二つの白と黒がぶつかりあっていた。

 

 一つはエルが乗っていたユニコーンだが、盾を複数持ち背部には白く長い物をつけた重武装の姿だった。さらにもう一つ、ユニコーンに似た黒い機体がまるで憎しみを抱いているかのようにユニコーンを攻撃していた。

 

「なんだ? ユニコーンが二ついる?」

 

 不思議な夢だな とキッドが思っていると黒いユニコーンに異変が起きる。額の角が割れ金色の光を放ちながらまるで獅子を思わせるような姿に変形した。そして、ユニコーンも黄金の光に答えるように赤い光を放ちながら同じく角が割れ変形した。

 

 これにはキッドが驚いていると、視界が徐徐に薄れていく。どうやら夢から覚めるみたいでキッドは二体のユニコーンを少しでも長く見ようと目を凝らすと、不意に黒い方のユニコーンがキッドの方を向き目が合いそこでベッドの上で目を覚ました。

 

「何だよ、アレは…」

 

 変な夢を見て汗をかき、キッドは小さくため息をついたーー

 

 

 ビームマグナムの事件から翌日。エルの指示の元、新型幻想騎士の作業にドワーフ達や騎士達の活気があった。機体の背中に腕をつけ背面に装備をつけるシステムや性能の大幅な改良など次々とこの世界にこれまでになかった技術を開発する中、ユニコーンの調査も同時に行われていた。

 

 時折、城から来た調査団達は、子供では無理だろうと言う理由でエルを抜いて自分達だけでユニコーンを調べるが、やはりエル以外には反応しないためエルがコックピットに入り起動させてからコックピットを調べるが英語で書かれ画面を見て調査団たちが顔を歪ませた。

 

 調査団の表情を見て内心苦笑するエルだが、英語ができるのはこの世界で恐らく自分だけでこの世界にはない単語を知る自分はどうやって彼らや王に報告したらいいのか悩んでいた。まさか、自分が転生した者です など言う訳にはいかない。何か方法を考える必要があると思いながらパネルを操作する。

 

 

 

 やがて月日が三日から一週間。さらに一か月と進んでいき新型の幻晶騎士

「テレスターレ」もだいぶ形になり、さらにユニコーンの調査で一つ新しい事が起きた。

 

「ハロ、ハロ!!」

 

「まってよ!! ハロ!!」

 

 格納庫内で、機械声を放つ緑の玉をアディが追いかけていた。周りの人間は「またか」と言わんばかりにため息をつき、ハロと呼ばれた機械の玉はユニコーンの傍にいたエルの所まで床を転がり移動した。

 

「アディ、ハロは調査で必要なのですから大切にしてくださいよ」

 

「うん、わかってる!!」

 

 エルは自身に抱き着くアディにため息をつき、足元にいるハロを両手で持つ。

 

 そもそも、このハロと言う機械がどうしてここにいるかと言うと。ユニコーンを見つけた場所を調査していた騎士が鉄のコンテナを見つけ格納庫に持ち帰ったのが始まりだった。コンテナの中には、いくつもの銃口を持った「ビームガトリング」やバズーカなど武器があり、さらにコンテナの端にあったこがこのハロだった。

 

 試しにエルが緑色の玉に触れると、突然動きだし周りにいた騎士達は剣を手にした。が、緑の玉は「ハロ、ハロ。バナージどこだ?」と言い地面を飛び跳ねるだけで危害がなく、さらにハロを見たアディが「可愛い」と抱きついた。

 

 しばらくして、この緑の玉は「ハロ」と名付けられた。そして、ハロを時折ユニコーンのコックピットに入れ、画面に映る英語を音読してもらう「翻訳機」の役割をしてもらっているがこの世界の者にとって聞きなれない単語が多くあり作業はあまり進んでいない。

 

 だが、ユニコーンとテレスターレは王国にとっては。いや、この世界にとっては未知の存在であり、二機の情報は王族だけでなく「不穏な影」達にも既に知られていた。

 

 

 夜。人気のない酒場にてフードを深くかぶった集団が、工房にいた学生の一人に金貨を渡し学生は静かにその場から去った。

 

「新型と言い、おかしな白い機体…どっちも手に入れれば、いい土産になるだろさ」

 

 怪しい瞳をした女性がつぶやき、怪しい空気が流れる。

 

 一方で、貴族達もエル達にから上げられた情報に苦悶を浮かべていた。

 

 新型機の性能は明らかにこれまでの物を超えていた。だが、ユニコーン関係で新たに発見された「ハロ」や新たな武装についてもどう扱えばいいのか判断がつかない。

 

 さらに、エルの動向も気になる者もおり。そうした経緯から、直接確認したいと声があがって雨風の強いとある日。

 

 新型とユニコーンの調査に関わった者達がテレスターレとユニコーンを連れ学園から離れて行く。

 

 そして、再び戦いが始まろうとしていたーー

 

 

 

 

 

 

 


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