〇ゴールデンボール〇 ロックマンZAX2 作:Easatoshi
本作品は整合性・時系列無視のメタネタ、下ネタ、不謹慎等、3点そろった壊れギャグ満載な二次創作です。
原作『ロックマンX』とそれらマルチメディア展開による作品の数々とは一切関係ありません。 加えて版権元のカプコン様、及びに関係者様を誹謗・中傷する意図もございません。
あくまでジョークの一環として、例によって「エックス達はそんなこと言わない」と笑い飛ばして貰えれば幸いです。
第1話
「おいエックス!! 俺やっといてくれって言ったじゃねぇか!」
「いいなんて言ってない!!」
「……何やってんの?」
昼下がりのハンターベース。 壁面に備えられた大きな液晶テレビと、その反対側の壁一面のガラス窓に外のビル群が見える。
青々と葉の茂る観葉植物と、大きめのライトベージュの机やソファーが設置され、普段は勤務の隙間を縫って休憩をとるハンター達が談笑をしている。
4Fの建物の角に設けられている休憩スペースで、ゼロがエックスに何やら食って掛かっていた。
面倒なデスクワークを終え、こりにこった身体の節々を癒そうと、すっかり重くなった身体を引きずってやってきたアクセルが、目の前で繰り広げられる同僚の喧嘩を見て一言呟いた。
アクセルは休憩所を見渡した。 他の隊員もいるにはいる。
体のけだるさから自分以外の誰かが注意してくれると期待し、ひとまずは様子を窺ってみたものの、皆して剣呑な空気を漂わせる2人に気圧されて、間を割って止めに入ろうとする者はいない。
「(……めんどくさいなぁ)」
周囲の不甲斐なさにアクセルはため息をついた。 ようやく一仕事を終えたと言うのに、ここにきて仲間の仲裁をさせられるとは。
うんざりした気分を覚えながら、至極かったるそうに一触即発のエックスとゼロに歩み寄った。
「やめなよこんな所で。 一体何してるのさ?」
「……アクセルか、丁度いい。 聞いてくれ」
声をかけてきたアクセルに2人して振り向き、最初に声をかけたのはゼロの方だった。
「エックスの奴、俺がパトロールで出る前に頼んでおいた、タイムセールの商品の発注忘れてやがったんだぜ? 一応俺自身もやっといたが、抽選だからそもそも手に入るか分からねぇし、エックスのアカウントでも頼んだって言ったのにな!!」
「だから、そもそも俺はいいって言ってないだろ?」
大手を振って捲し立てるゼロ。 対してエックスは困った様子で頭を押さえていた。
どうやらゼロが欲しいと思った商品を買う手続きはしたものの、抽選で手に入る確率が低いとの事で、エックスにも発注を頼んだようだが、しかし彼は注文を渋って放置した為に、ゼロを憤慨させてしまったらしい。
アクセルは首を傾げる。 頼まれ事を断るもそれはエックスの自由だが、別段商品の発注ぐらい仕事の合間にだってできる筈なのに。
頑なに反対するエックスの心理を、アクセルは測りかねていた。
「……エックスも今日は室内勤務だったんでしょ? なんで断ったの?」
アクセルの問いかけに、エックスはため息をついた。
「いくら安くたって……仕事用の端末で」
目頭を押さえ、言葉をつづけ……エックスは腹にあらん限りの力を入れて叫ぶ。
「しかも俺のアカウント使って『大人のおもちゃ』なんか買えるかッ!!!!」
「ファッ!?」
衝撃のカミングアウト。 ゼロが普段からおバカでエロな事に余念を欠かないのは知っていたが、まさかそれを相方にまで求めるとは。 思わずアクセルは素の反応をしてしまった。
「別にいいだろそれぐらい! 減るもんじゃねぇんだし!」
「「 よ く な い ッ ! ! 」」
ゼロの開き直りに、エックスとアクセルは声を揃えてツッコミを入れた。
アクセルにとって、何故エックスがゼロの要求を蹴ったのも全て合点がいった。 少なくともゼロの言い方を聞くに、要求を受け入れられなくても仕方のない話である。
対して赤い彼の方はやはりというか、納得いかない様子で食って掛かる。
「仕方ねぇだろ! 1000個のみの限定生産で人気が殺到したから、少しでも手に入れる確率上げてぇんだよ!」
「えっ……。 何それ、昼間からそんなの取り合いになってんの?」
「勘弁してくれ!! 他人に『大人のおもちゃ』買わせるなんて嫌がらせか!?」
第3者の介入に落ち着きを取り戻すかと思いきや、むしろ火に油を注ぐ形になってしまった。
こんな状況でエックスとゼロは、お互いに立場を尊重するなどできる筈も無く、また喧嘩の仲裁に入ったつもりのアクセルも、理由を聞いてただ何もできずにたじろく以外になかった。
先に休憩所に来ていた他の隊員達にしてみれば、折角の休憩時間に延々と騒がれるのはたまったものでないだろう。
「とにかく俺は謝らないぞ! 欲しいなら自力で頑張ってくれ!」
だが、幸か不幸かエックスは一番最初に矛先を収め……というよりは、一方的に口論を打ち切った。
自分に落ち度はないと強く主張しながら、エックスは不機嫌なまま強引に話を切り上げるように踵を返し、休憩所の出口へと足を進めた。
取り付く島もないと言った様子を見せるエックスを、しかしゼロはそんな相方の襟首をつかむ勢いで手を伸ばす。
「おい待て! 話は終わってないぞ!」
「ゼロ! やっぱ『大人のおもちゃ』買わせるなんて無理があるよ!!」
これ以上いけない、と言わんばかりに後を追おうとしたゼロを、アクセルが腕を差し出して制止する。
ゼロからすれば、邪魔をするアクセルの腕を払いのけようとさえしたが、揉み合いになっている間にもにエックスは一度も振り返らず、さっさと部屋の外へと出て行ってしまった。
言い争った3人を見て、周りにいたハンター達も身を寄せ合って話をしていた。
「……またあの3人揉めてるよ」
「折角ゼロさん凄いハンターなのに、アレがなけりゃなぁ……」
どうやら『大人のおもちゃ』なる単語に起因するあまりにしょうもない喧嘩の理由に呆れかえっているようだった。 小声ではあるが、アクセルとゼロの耳にははっきりと聞き取れた。
喧嘩のせいでただでさえ不機嫌になっている中、聞き捨てならないと感じたゼロは、こそこそ陰口を言っている連中をひとしきり睨みつける。
すると野次馬と化した他の隊員達は、ゼロの野獣の眼光に慄いたのか、そそくさと反対方向を向いたり、あるいは自販機でE缶を買う振りをして我関せずを装った。
「(小声で話すぐらいなら止めに入ってくれりゃいいのに……)」
事なかれ主義者達に冷ややかな視線を送りながら、一気にくたびれるアクセル。 逆に文句を言われる隊員達にしてみれば、とんだとばっちりである筈なのだが。
一方で文句を言うべき相手がいなくなり、ゼロはすっかり冷めきった態度でアクセルの腕から身を引いてため息をついた。
「やってられるか、バカバカしい」
「……バカな理由で騒いどいて。 いつも言ってるけど、よく仕事中にまでエッチな話持ち込めるよね」
「それが俺のポリシーだ! ……てかアクセル、何か勘違いしてねぇか? 第一『大人のおもちゃ』ってのは」
変なところで胸を張るゼロに、アクセルは「聞きたくない!」と一言、呆れながら言葉を制した。
とにかく今は休ませてほしい。 今のアクセルにとってこれ以上、ゼロと変に熱の入った会話を続けるつもりは毛頭ない。
何かを言いたげだったゼロは、言葉を遮られて顔をしかめるも、彼もまた口論の疲れも相まって意気消沈したのか、言葉を続けるのをやめ、すっかり怒る気力も失い大人しくなった。
騒ぎの張本人ではあったが、それはさておき休息を取ろうと、壁に備え付けられた大型テレビの前にあるソファーに腰を掛ける。
ライトベージュの本革の感触が、疲れたハンター2人の腰を柔らかく包み込む。 適度な弾力が、彼ら二人を仕事との関係ない脱力の世界へと誘う。
仕事の時には考えられない気の抜けた表情で、テレビから流れてくる映像を文字通り機械的にただ眺めていた。
そんな中、テレビにかかっていた一つの番組の内容に2人は注意を引き付けられた。
<それでは次のニュースです>
大きなテレビ画面には、キャスターと思わしき男性が報道内容を読み上げていた。 一室に来るなり言い合いをしたので気づいてなかったが、どうやらニュース番組がかかっていたようだ。
キャスターの背後に移っていた画面が切り替わると、そこには地球が左に映るような構図で、建造中の何かが宇宙空間に浮かび上がっている映像に切り替わった。
<先のレプリフォースの騒乱において破壊された防衛衛星に代わるべく、予てから建設されていた新型の人工衛星が、来月末に完成する見通しとなりました>
「うん?」
「ああ、アレか……」
ニュースを見て知っている素振りを見せるゼロに、アクセルは尋ねた。 彼にとってはロックマンXシリーズに脂が乗ってた時の話であった為、懐かしむようにゼロは目を閉じ、過去の事を思い出してしみじみと語る。
かつてレプリフォースがクーデターを起こした際に、本拠地として用いた「ファイナルウェポン『デスフラワー』」。
エックスはスパイをやってた裏切りデブと、ゼロは小指を立てるコレと死闘を繰り広げ、遂にはやはり黒幕だったシグマもろとも、最終的に木っ端みじんに破壊した衛星だ。
そんなデスフラワーだが、今のニュースを見るに後釜となる衛星が再び造られているようだ。
<新型衛星は軌道エレベータ―『ヤコブ』を使い、宇宙空間に資材を運んで製造され、完成まであと半年はかかると見積もられていましたが、開発協力として名乗りをあげた、新興企業『MACエンジニアリング』のバックアップもあり、大幅に着工期間を短縮する事が出来たようです>
「フン、随分景気のいい話だな」
「MACエンジニアリング? 聞いた事がないグループだね」
興味なさげなゼロに、キャスターの読み上げた内容をオウム返しするアクセル。
耳の覚えのないグループが当たり前のようにニュースに出てきた事を受け、アクセルは首を傾げた。 この手の国を挙げたプロジェクトには旨味にあやかろうと、まっとうな団体から怪しげな手合いまで、まさに玉石混交な連中が投資話を持ち掛けてくるが、自ら率先してプロジェクトをスムーズに進行できるよう手配できるとは、このMACエンジニアリングと言う会社、中々大したものではないか。
そうアクセルが思っている間に、キャスターは続けて報道内容を読み上げる。
<それに伴い、一般公募の中から選ばれた名称の発表を兼ねた、新型衛星の完成披露会も来月に開催日を繰り上げる事となりました>
「ふぅん……そう言えば、以前にもダグラスやパレットがそんな事言ってた気もするなあ」
衛星の名前の件を聞いて、アクセルは以前にも技術部門に勤める同僚2人が似た事を言っていた事を思い出す。 記憶とたった今ニュースから得られた情報が結ばれ、ひょっとしてこれの事だったのかも、と納得する。
それはさておき、ニュースキャスターが完成披露会と言うワードを口にすると、スタジオの風景から何やら告知画面に切り替わる。
内容は、新型衛星が名称の一般公募について、応募の締め切りをあと半月に短縮する旨と、応募先のアドレスが描かれていた。 入賞者には完成披露会への招待と、会場となる某5つ星ホテルの1泊2日の宿泊権が貰えるとの事。 小型端末を持っていれば、今このニュース番組に送信すればその場で名称を応募する事が出来るとも書かれている。
ゼロは画面の応募要件を見ながら、口元に握り拳を当てて考えるような仕草をする。 いつになくニュース画面を食い入るように見るゼロを、横で見つめるアクセル。
「どうしたのゼロ? ニュース見て何か思う所でもあったの?」
アクセルが問いかけると同時に、ゼロは側に置いてあったタブレットを手に取ると、アクセルの見ている方向からは見えないような角度で端末を持ち、無心とも思える様子で素早くタッチパネルをつつき入力する。
怪訝な顔をするアクセル。 そんな彼をよそに、ゼロは指先で一つ一つ入力するような動作を取る度に笑みを浮かべ、今にも吹き出しそうなのをこらえるような表情のまま、遂に打ち込みを終えたタブレットをテレビ画面にかざし、最後の入力を押す。
ニュース番組の画面の右上に『情報が送信されました』とテロップが表示された。
ワンテンポ置き、我慢の限界を迎えたのかゼロがその場で腹を抱えて笑い始めた。ソファーに座ったままうずくまり、ひじ掛けを何度も叩く。
まるでナイトメア現象の際に現れたニセモノのような大笑いを上げ、隣にいたアクセルをして大いに驚かせた。 恐る恐る、アクセルはゼロに問いかける。
「ゼ、ゼロ? 今一体何を送ったの?」
「くくく……いや、なんでもねぇ」
その大笑いのどこが何でもないと言うのか。 アクセルはたった今、ゼロがタブレットをいじって送信した、情報の中身が気になって仕方がなかった。
タイミングから察するに、さっきの衛星の名称の一般公募がらみかと思ったが、どこにゼロが面白おかしく笑う要素があると言うのか?
何となしに嫌な予感がぬぐえなかったが、休憩しに来て気苦労の種を増やしたくないアクセルは、知らぬ存ぜぬを通す事とした。
「(やめとこ……僕は何も知らない)」
どの道データは既に送信されているし、中身を確かめる術もない。
本人に問い詰めた所で答えを得られるとも思えないし、万一中身を知った後の事などどうするか、そんな事を一々考えるのも面倒な事この上なかった。
心中穏やかでない気分ではあるも、頭を振って嫌な考えを切り離し、過呼吸を起こしてソファーに寝そべるように突っ伏して悶絶するゼロを尻目に、アクセルは思考を停止した。
最も、その答えは1か月後に、否応なしに知らされる羽目になるが。
ア イ ツ ら が 帰 っ て き た 。