〇ゴールデンボール〇 ロックマンZAX2 作:Easatoshi
第10話
3人が駆け込んだ作戦指令室は騒然としていた。
広大な室内の中心には、レーザー兵器のエネルギーを充填している『きんた〇』の立体映像が、アラートメッセージと共に詳細な稼働状況が表示され、壁際の端末の前に座るエイリア並びに多数のオペレーターが対応に追われている。
メンバーの中には普段は開発部にいるパレットの姿もあり、よく見れば主任のダグラスらを中心とする幾何かの開発部の面々も、指令室内をせわしなく行ったり来たりしている。
「状況は!?」
「エックス! ゼロ! アクセル! 終業間際に済まないが緊急事態だ!」
エックス達を出迎えたのは、せわしなくキーボードの入力作業を行うエイリアと、すぐ後ろに立つ総司令官のシグナスだった。
「既に聞いただろうが、ホタルニクス博士の開発したきん……衛星に搭載されているレーザー兵器が突如稼働し始めた」
「しかも攻撃目標が、ここハンターベース……だな?」
「そうだ。 何の前触れもなく突然充填シーケンスに入った。 先程レイヤーに攻撃命令の出所を探ってもらったが……」
コンピューターの前でキーボードを動かしながら、エイリアの右隣にいるレイヤーが言葉を継いだ。
「充填シーケンスに入ったというきん……もとい衛星のアクセス履歴は残っているのですが、残念ながら発信源を特定する事はできませんでした」
「まるで独りでに動き出したみたいですよぅ。 でも直前までは正常に稼働していたのに、突然誤作動を起こすなんて考えられないです」
「何てことだ……」
レイヤーに次いでパレットから、彼女たちの技量をもってしても衛星のアクセス元を辿れないと言われ、エックスは額を抑えて毒づいた。
「じゃあこっちからアクセスして、発射命令食い止めたりとかは!?」
「不可能よ」
アクセルの質問を、エイリアはバッサリと切り捨てる。
「多目的衛星だから通信をはじめとする通常の用途なら普通のネット回線でもアクセスできるけど、兵器みたいな防衛に関わる部分は機密性が問われるの。 だから衛星を管理する権限を持った人物の――――」
「高度なアクセス権限が必要って事?」
「そうね。 おまけに回線自体が専用の別系統になってるから、そもそも物理的にアクセスする事自体出来ないわ」
お手上げともとれるエイリアの言葉に、アクセルは肩を落としたようにうなずいた。
「自らの意思を持ったように暴走する『きんた〇』か、たまらねぇな」
「っ!」
「ぶっ! あ、ああ確かに。 まさか最初からきん……衛星を作ってる段階でそう言う仕込みがあったとかは?」
一瞬キーボードを打つ手が止まりかけるエイリア。 エックスが吹き出しそうになるもすんでの所で堪え、気を取り直したようにエイリアに問いかける。
「……考えにくいわね。 ホタルニクス博士だからこそむしろ、きん……じゃなくて衛星がそう言ったトラブルで兵器が作動しないよう、何重にも安全機能を徹底していると思うの」
「だが現に『きんた〇』は動いている。 それは確かだ」
「う"ん"!? ……ま、まあゼロの言う通りだ。 とにかく今は攻撃を何とかしないと。 何か有効な手段は?」
「ある。 特にエックスとゼロにとっては、見覚えのある物だろう。 エイリア」
シグナスはエイリアに声をかけると、彼女もそれに応えるようにキーボードを叩く。 宙に浮かぶ『きんた〇』の画像に被さるように、見覚えのある大砲の画像が表示される。
エックスとゼロは映し出された大砲の画像を注視する。
『エニグマ』……かつてシグマが傭兵をけしかけて地上へと巨大コロニー『ユーラシア』を落下させてきた際、それらを迎撃し破壊する為に用いた旧型のギガ粒子砲である。
「先述のようにきん……衛星の発射を止める事は出来ない。 ならばこちらも兵器を用いて衛星を破壊するか、最低でも相手の攻撃を相殺する」
「相手の『きんた〇』にこっちは大砲で応戦か。 随分と面倒を強いられるな」
「!!」
皆が衛星の名を口にするのを憚る中、遠慮なしに『きんた〇』と呼ぶゼロにエイリアの肩が震える。
「う"っ! そ、そうだ。 しかしだな――」
明らかに何かをこらえるエイリアを横目で見るシグナスは焦りかけたが、極めて冷静に努めながら言葉を続ける。
「例によってこの兵器は旧式故に劣化が進んでいる。 はっしゃするには――」
「必要なものを急いでかき集めなければならない……か。 で、時間の猶予と必要物資は?」
言わずともやるべき事を把握しているエックスに、シグナスはほくそ笑んだ。
「流石はエックス。 ……はっしゃまでの時間は10分弱、それまでにこれをかき集めて欲しい」
シグナスは右手を掲げると、更に文字の羅列が並んだウィンドウがエニグマの画像の上に重なった。
「成程、確かにこれは必要だな」
「これさえあれば『きんた〇』の発射に備えられ――」
「ちょっ! ゼロ、ちょっと……!」
ゼロの言葉をアクセルは慌てた様に遮った。 訝し気になるゼロにアクセルが耳打ちする。
「何だアクセル、どうした?」
「あんまりその……アレだよ!」
アクセルは小声でエイリアに目線をやる。 端末に向かい合う後ろ姿がわずかに震えていた。
この状況で入力作業をしないのは彼女らしからぬ有様だが、アクセル……のみならずその原因が何かは皆が知っていた。
「こんな真面目な時にデリカシーの無い事言っちゃダメだって! その……きん――――」
「フン。 たかだか『きんた〇』ぐらいでか?」
「ブハッ!!」
ゼロ以外は。 堪え切れず、ついに唾を飛ばす勢いで吹き出してしまったアクセル。
「俺は『きんた〇』の〇の中が『ま』とは言ってないぜ? それを『きんた
「〇を『まる』って読んだら伏せきれてないよッ!! てかそんな名前つける方がスケベってか変態じゃないの!」
「その通り、俺はスケベだ!!」
やはりいつもの下ネタに抵抗のないゼロだが、股間のアレのせいでいつもよりも変な自信がついているようだ。 周囲の呆れたような視線がゼロに注がれるも、当の本人は不敵な笑みを浮かべながら胸を張って公言するばかり。
そんな視線の中にエイリア達オペレーター3人のものは含まれていない。
何故ならエイリアは机に突っ伏して握り拳を震わせながらゆっくりと掲げ、嫌な兆候を見かねたレイヤーとパレットが大焦りで宥めているからだ。
「いいかアクセル! 男にとって『きんた〇』はシンボルだ! それを言葉を濁して隠そうとするとは、自分の大事な部分を包み隠してしまおうと言う事と同じだ! 故に俺は『きんた〇』を――――」
じっと堪えていたエイリアもついに堪忍袋の緒が切れ、叫びと共に掲げた拳をデスクに叩きつけ、読んで字のごとく木っ端みじんに破壊した!
瞬時に沈黙する一同。 止まないアラート音と無残な姿になったコンピューターの火花を散らす音だけが部屋の中に鳴り響く。
「いい加減にしなさい……あんまりしつこいと、怒るわよ?」
なるだけ落ち着いて話をしようとするエイリアだが、その血走った眼つきと息を荒げるような仕草から、はらわたが煮えくり返っている事が分かる。
が、当のゼロは飄々とした態度で堪えている様子はない。
「フッ……テレるなよエイリア。 たかが『きんた〇』に圧倒されているようじゃまだまだ――」
「エックス、やっちゃって頂戴」
「分かってる」
エイリアのお願いに、エックスは真顔で右手の指を曲げて音を鳴らす。
「OK分かった。 とりあえず自重はするから落ち着いてくれ」
これにはゼロも余裕を装うが、言葉を翻して小さく肘で両手を上げて降参する辺り、明らかにエイリアとエックスに気圧されているようだ。
エロが鳴りを潜めてまともになったと期待していたものの……エイリアはぶつくさとごちながら、壊してしまった端末の前からレイヤーの反対側へと移動する。
「ゴホンッ……と、とにかく時間は迫っている。 急いでリストアップした物資を調達してきてほしい」
「……了解」
すっかりペースを乱されたシグナスが軽く咳払いをしながら言うと、アクセルの気の抜けた返事につれられ、ハンター3人組は立体映像の浮かぶ台座へ進む。
近づくと映像は消え、代わりに光の輪が台座から浮かび上がり、それはエックス達の身長よりも少し高い所まで昇っては、筒状のフィールドを生成する。
彼ら3人が施設外部の……それよりも更に離れた場所へ瞬間移動する為の台座に仕組まれた転移装置、言わばワープポータルが発生する。
3人は迷う事無くポータルに乗り込むと、彼らを見守る様にこちらを見るシグナスやダグラス、そしてせわしなく転送の段取りを取るオペレーター達に振り返り、敬礼する。
エイリアにレイヤー、そしてパレットの声が重なると、エックス達3人は光の粒と化してこの場から消失した。
「……成功を祈る」
腕を背中に組みながら、シグナスは一人呟いた。
そして2分後――到着を知らせる警告音と共に、光の粒が人型をなして眩い閃光を放ったと思うと、物資を担いだエックス達3人の姿が浮かび上がった。
彼らは台座に一番近いシグナスに駆け寄ると、真っ先に彼に物資を差し出した。
「シグナス! 頼まれた人数分のコーラとポップコーンを買ってきた! チリドッグも!」
「でかした!」
「きちんとポップコーンはうすしおからキャラメルまで揃えておいたぜ!」
「でかした!!」
「エイリア達はコーヒーだったね! あ、総監のチリドッグはハラペーニョのピクルス入りだよ!」
「でかしたッ!!」
エックス達は持ってきた『物資』を、ご満悦のシグナスをはじめ、部屋で作業するエイリアやダグラス達にもてきぱきと配っていく。
「丁度いいタイミングだったな! たった今現場からの連絡でエニグマの発射準備が整った! ひとまずはいつでもはっしゃ可能だぜ!?」
そしてダグラスに彼の分となる最後のドリンクとチリドッグを渡すと、エックス達をはじめとする他のメンバーはエイリア達オペレーター3人の背後に陣取り、部屋の中央の台座に再度浮かび上がらせた、エニグマと『きんた〇』の映像を見つめる。
「きん……衛星兵器の発射までのカウントダウンが始まりました!」
「ついにこのときがきたぞ。」
レイヤーの告げる『きんた〇』の発射シーケンス。 映像に重なる衛星兵器のカウントダウンが20秒前から始まった。
絶体絶命のピンチなれど、しかしシグナス達は動じない。 チリドッグを齧り、数回咀嚼して飲み込んでは堂々としたその佇まいは、さながらエニグマによる防衛の成功を確信しているように見える。
「ハンターベースのうんめいをかけ、エニグマをはっしゃする!」
「エネルギー、パワー、はっしゃかくど、すべてOK!」
エニグマの最終確認を済ませたエイリアの発言と共に、シグナスはドリンクを掲げて告げた!
エニグマと『きんた〇』が同時に発射された瞬間を、エックス達はドリンクのストローを吸ったりポップコーンを頬張りながら、固唾をのんで見守っていた。
――――ほんのわずかな間の後に、大きな衝突音がハンターベースを揺るがした。 立体映像上に、互いに放ったエネルギーが大気圏の境目でぶつかり合う瞬間が表示される。
ゼロはポップコーンが零れぬようケースを器用に揺すって水平を保ち、アクセルは映し出される光と光の衝突に目を奪われる。
しばしの間を置き、大きな揺れはやがてゆっくりと収束し、映像内の2つの光も激しい閃光の後にゆっくりと消えていく。
ハンターベースへの被害はない。 今こうして買ってきたドリンクやポップコーンが、早くも無くなりかけているのが無事である何よりの証拠だろう。
シグナスは最後のチリドッグの欠片を呑み下すと、空になったコーヒーのカップを潰すエイリアに問いかけた。
「やったか? 防げたか? エイリア、どうなんだ?」
「成功よ! きん……衛星兵器のエネルギーは無事エニグマで相殺できたわ!」
「代わりにエニグマは耐用限界が来てしまいましたが――」
「もう十分役目を果たしたよぅ! ……総監、衛星兵器からの防衛は成功ですぅ!」
レイヤーとパレットの言う通り、エニグマの状態を表示するインジケーターは軒並みレッド、つまりは完璧に破損してしまったのだ。
しかし旧式の兵器で、ハンターベース防衛と言う大役を果たした事の意義は大きく、パレットの言う通りエニグマは大儀であったと言う事だろう。
それよりも今は、ハンターベースの無事を喜ぶ時だ。
イレギュラーハンター一同は丸めたゴミを天井めがけて放り投げ、大いに歓声を上げた!
「……ねぇ、僕も飲み食いしといて言うのも何だけどさぁ」
息で膨らませたチリドッグの包み紙を叩いて潰すアクセルを除き。
「ハンターベースの一大事にしちゃ緊張感なさすぎないッ!? 映画館に来た訳でもないのにポップコーンって何よ!?」
「そう言うな、開幕エニグマはっしゃは意外と成功するものなんだ」
腑に落ちないアクセルの肩を宥めるようにエックスが叩く。
「そうだぞアクセル。 必要な部品無くてもまー何とかなるもんだ」
「しくじったらどうするつもりだったの!? 僕ら蒸発してたかもしれないのにッ!!」
「まあ、残機数が減るな」
「軽スギィッ!!」
それを笑みを浮かべてゼロが諭すも、当然ながらアクセルは納得する様子はない。
アクセルは腕を回して同僚への不満を爆発させ、それを皆して笑いながら受け止める中――――。
「あら? これは……」
エイリアの受け持つ端末が、衛星にアクセスした何かを感知した。 エイリアはすかさずキーボードを入力、謎のアクセスの解析を試みる。
「どうしましたかエイリアさん?」
「何かありましたか?」
「……2人とも、ちょっと解析を手伝って」
気に掛けるレイヤーとパレットに対し、エイリアは2人にも謎の情報を転送し、3人がかりで解析に努めるよう指示する。
突如として再びキーボードをせわしなく叩く彼女ら3人に対し、ハンター3人組も反応する。
「――――ッ!! これは!?」
エックスが声をかけようとした時と同じく、エイリアは驚きの声を上げたのち、再度キー入力を行う。
「皆見て頂戴! たった今衛星へのアクセスをキャッチしたわ! それも管理者権限でよ!」
「何だって!?」
素早く動かした指先が最後の入力を終えると同時に、表示されていたエニグマの映像が消え、今度は『きんた〇』のアクセス履歴のリストが浮かび上がる。
履歴に残っていた情報の発信源を見た時、エックス達は驚愕した。
因みに作者はX5初回プレイ時、グリズリーだけ倒した状態ではっしゃ!!! して何と無事成功しやがりました。
てか他のステージロクにクリアしてないのに最終ステージってなんだよ……w