〇ゴールデンボール〇 ロックマンZAX2   作:Easatoshi

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 文字数が現時点でようやくシーズン1に並んだ。 やっぱり1話当たり6000文字にすると話数が結構かさみますな。


 まあ、話自体はまだまだ続くのでこんなもんじゃないのですがw ……13話投下します!


第13話

 先陣切って命も尻の花も散らしたであろうゼロの尊い犠牲もあって、エックスとアクセルは難なく潜入を果たした。

 一旦中に入ってしまえば、警備員や有名人としてのエックス達の顔を知る人々の目に留まりさえしなければ、後は社長室に近づく瞬間さえ気を付ければ堂々としていればよい。 遊びに来た一般客に紛れる事が出来るからだ。

 

「ってかゼロの激突の割には……」

「ああ、全然騒ぎになってる感じがしないな。 ゼロらしき叫び声は聞こえたが」

 

 エックス達は無事に着地した後、最上階の男子トイレから聞こえたゼロの絶叫について、道の真ん中を歩きつつも周囲を気配りしつつも思考を巡らせていた。

 あれだけの激しい叫び声が上がれば、普通は警備員がやってきてもおかしくはない。 にも拘らず侵入から数分……慌ただしくなるどころか警備員の一人も見かけていない。

 エックス達の目前に広がるは、和の意匠が込められた鴬張りの床に木の枠で縁取られた漆喰の壁、そして映像記録が残らぬよう気を遣うべき幾ばくかの監視カメラ。

 こちらについては潜入用アーマーのビームマフラーの効果により、近づけばジャミング機能により一時的に攪乱する事が出来た。 恐らく監視室に映る映像はエックス達が通った間だけ砂嵐に包まれただろうが、まあさっさと通り抜けてしまえばただの不調と見なされて問題にはならないだろう。

 

 してエックスは偶に人ごみに紛れつつも、堂々と社長室のあるフロアに降りてきたが……目的地に向かってある程度進んだあたりで問題に差し掛かる。

 

「……あれは?」

 

 曲がり角に差し掛かったあたりで、向こう側に何かを見つけたエックスが、後ろを歩くアクセルを制止しつつ壁際に身を引いた。

 

「どうしたの?」

「アレを見ろアクセル」

 

 身を乗り出すように再びのぞき込むと、視線の先には何やら空港で見かけるのと同じような、上部に監視カメラのついた金属探知機能のある大きなゲートがある。 その左右にはガードマンが堂々とした佇まいで立っていた。

 ゲートの奥は金の装飾があしらわれた柱に浮世絵の描かれた壁など、侵入当初より見てきた屋内の作りよりも、一際手間がかかっているだろう豪華な廊下が奥に続いていた。 

 そんなゲートの前を、たまたま通りがかった他の一般客が中を覗き込むようにゲートに近づくと、すぐに2人がかりで入口前を塞ぐようにガードマンが身を乗り出した。

 

「申し訳ありませんお客様、ここから先はVIP専用エリアとなっています」

「VIPパスをお持ちか、MACエンジニアリングの社長以下、上級社員専用のIDがなければ通す事はできません……ご了承ください」

 

 丁寧な口調だが、厳格さを漂わせるように告げると、興味本位で近づいた客は萎縮したのか、文句を言わずにそそくさと立ち去った。

 離れた所で様子を窺っていたエックスは腕を組み、アクセルは頭をかいて悩んだ。

 

「聞いてないよ……入手した見取り図には書いて無かったよね?」

 

 先に確認した見取り図において、フロア内のエリアを大きく2つに分断するように、社長室に繋がる道がたったの1本に絞り込まれている部分があったのは知っていた。

 それがまさか中に入れる存在を選別するVIPエリアの入場門になっていたとは。 情報不足故に多少のトラブルは覚悟していたが、しかし悩んだ様子のアクセルにエックスがその答えを言う。

 

「VIP御用達のエリアだからこそじゃないか? あまり外出を公にされると困る人もいるだろうし」

「あー……」

 

 アクセルは納得した。 必然的に注目を集めるやんごとなき方々は、何処に行って何をするにも人目についてしまう。

 そんな彼らのプライベートと共に、彼らの存在を快く思わない手合いから守る意図もあって、こう言った隔離された特別なエリアは、現地に赴いて見て確かめない限りは存在があやふやにされている事が多い。

 更にこのフロア、なんとなしであるがどこか殺風景で誰かの気配をあまり感じられない。 目立ったものと言えばあのゲートだけなので、他に楽しみを見出したい一般客にしてみれば、特に意識をする事なくフロア自体スルーしてしまうだろう。 他人に関心を抱かれないよう、意図的に設計されている可能性が高い。

 

「ま、とにかく社長室はこの奥なんだよね? エリアの出入り口がたった一つだけってのは困ったよ」

「ああ、何とかしてここを通り抜けなければ……」

 

 無断で中に入っている以上、騒ぎを起こして顔を見られるのはまずい。

 警備員に危害を加えるなどはもってのほか、仮に安全に警備員をどかせて中に入ろうとしても、後ろにあるゲートが必ずレプリロイドの存在を感知するだろう。

 それどころかちょっかいを出す瞬間を、ゲートに取り付けられたカメラに見られる可能性がある。 備え付けのカメラについてはエックスのビームマフラーで攪乱できるが、先述の警備員の存在でまず気づかれる事なく近づくのが難しい。

 困り果てながらも先を急ぐ2人は考えた。 警備員は気絶させるとして、その瞬間を見られる事無くゲートを通過する手段はない物かと。

 

「見られないようにゲートを……あっ!」

 

 頭の中で考えを反芻する中、アクセルがアイデアを閃いた。

 

「どうしたアクセル、何かいい案はあったか?」

「うん、いっそゲートの金属探知機は鳴らしちゃおうと思って!」

「……?」

 

 エックスはアクセルの妙案に怪訝な表情を送る。 そんなエックスにアクセルは耳打ちした。

 

「僕のコピーチップを使うんだよ。 それで……」

「……ああ、そういう事か」

 

 やるべき事を小さい声で手短に話し、納得したエックスが身を離すとアクセルは右手を上に掲げた。

 するとアクセルの体が徐々に透けて背景に同化し始め、束の間の後にエックスが目の当たりにしたのは、アクセルの体の輪郭に歪んだ空間だった。

 

『ステルスモード』と言う、コピーチップを持つアクセルのもう一つの能力である。

 チップの持つ体を構成する部品をそっくり作り変えてしまう機能を利用し、光の透過率を高めるように体の構造を変化させる事ができる。

 専用に作られた光学迷彩ほど完璧な偽装ではないが、そこに誰かが立っているという先入観がない限り見破るのは難しいだろう。

 

 アクセルは透明な姿のまま廊下に出るとエックスに振り向いて伝える。

 

「それじゃ、首尾の方はお願い」

「分かった……少ないとはいえ客の往来がある、手早くやろう」

 

 エックスはうなずくと、アクセルは音は立てない慎重な……それでいて堂々とした足取りで守衛が立つゲートの前に向かう。

 1歩2歩、確実に接近するも、門を守る警備員は全く気付かない。 アクセルは辺りを見渡した、他の客の姿が見えない事を確認する。 絶好のチャンスだ。

 アクセルは何の苦も無く2人の間をすり抜け、そしてゲートをくぐろうとした。

 

 当然のように金属探知機は作動。 姿を透明にして光を屈折させるステルスモードでも、ゲートの厳重なセキュリティをかいくぐる事は出来ない。

 しかしそれはアクセル達にとっては狙っていた事だ。

 

「「何だ!?」」

 

 警備員が一斉にアラームが鳴り響くゲートを振り返る! しかし彼らの目には何も映らない。

 

「おい、誰もいないぞ……?」

「機械の故障か? ちょっと見てみるか」

 

 彼らからしてみれば、何の予兆もなくゲートの探知機が作動したようにしか思えないだろう。 2人して突如警報を鳴らすゲートを注視する。

 

「一体なんだってこんな事――ニヒャッ!?

ヒギィ!?

 

 その瞬間であった、2人の警備員の後頭部に小さい電撃が走ったのは。

 間抜けな声を上げて僅かに震えると、全身の力が抜け落ちた様に膝から崩れ落ち、もう片方はそのまま前のめりに倒れ込んだ。

 

「済まない、少し眠っていてくれ」

 

 廊下から移動してきたであろうエックスが、いつの間にか彼らの背後に立っていた。 特殊武器『サンダーダンサー』のチップがセットされたバスターを構えながら。

 この武器は電撃を前方に散らすれっきとした攻撃用だが、出力を最小にして至近距離で放てば、レプリロイドの彼らならば故障させずに一時的に機能をマヒさせる事ができる。

 加えて「おっといけない」と一言呟き、間髪入れず頭上にある監視カメラにも……こちらは通常の出力で電撃を放ち、金属探知機もろともカメラをショートさせた。 警報は鳴り止み、火花を散らしては焦げ臭さを伴う黒い煙があがる。 

 

「へへんっ、作戦通りだね。 さ、早くこの2人を片付けよう」

 

 物言わぬただのオブジェと化したゲートをくぐる、ステルスモードを解除したアクセルの表情は得意げであった。

 

「まだだ、あともう一つ――」

<こちら監視室、応答しろ! 警報が鳴った上にカメラが回ってないぞ! 何があった!>

 

 エックスが注意を促すと同時に、倒れた警備員の胸元から声が聞こえてきた。 どうやら無線機越しにカメラの監視室から連絡が来たらしい。

 エックスが無言でアクセルに対し首を縦に振ると、それに応えるようにアクセルは声のした警備員の胸元を見る。

 そこには「KB51」と言う刻印と共に、無線機らしき機械がついていた。 アクセルは無線を拾いながら、喉仏のあたりを揺すった。

 

<こちら監視室! どうした!? 異常でもあったのか!?>

「こちらKB51、ゲートの故障だ……警報が誤作動した上に電源が急に落ちた」

 

 応答を促す無線機に口を開いたアクセルの声は、いつもの少年の声ではなく、今しがた喋っていた警備員と同じ野太い声だった。

 これもコピーチップの機能を利用した変声機もどきのようなものであろう。

 

<そんな馬鹿な、そいつは導入実績の多い一級品だぞ?>

「原因は分からないが、現に使い物にならなくなってる。 何にせよ早急に修理が必要だ」

<うーむ……さっきのエニグマはっしゃの影響か? そう言えば他のカメラも映像が乱れたりしていたな>

 

 声のみならず喋り方まで完璧に真似をされると、向こうからは本物かどうかは判別がつかないだろう。

 とは言え、状況が状況だけに相手が訝しげに応対をしているのを聞くに、あまり会話を長引かせるとボロを出してしまいそうだ。 アクセルは半ば強引に会話を打ち切る事にした。

 

「とにかく今から少しチェックしてみる。 軽微な故障なら心得はあるが、手に負えなさそうなら再度連絡する」

<……仕方ない、状況は分かった。 いつでも整備員を出せるよう手配しておく――――OVER>

 

 正体に気づかれることなく、ひとまずは向こう側のスタッフを言いくるめる事は出来たようだ。

 

「これで堂々と通れるね」

「ああ、だがその前に2人を隠しておこう」

 

 念の為、エックスとアクセルは周囲に再度注意を払ったが、やはり他の人の姿は見当たらない。 案内板には何も書かれておらず、加えて主要な施設が他のフロアに集中しているだけあって、元々人通りの少ない場所なのだろう。

 安全を確認すると2人は気絶させた警備員達の脇を抱え、ゲート付近の近くの扉を開ける……中は段ボール箱や掃除用具などが所狭しと置かれている、物置らしき部屋の中の壁を背にするように座らせて扉を閉めた。

 そして壊したゲートを何食わぬ顔でくぐると、模様の描かれた廊下を突き進み、突き当りの両開きの大きな扉の前に立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 見えていた廊下からある程度の想像は出来ていたが、VIPエリアの設備は大したものであった。

 廊下の扉を開いた先にあるロビーらしき大広間に出てきたが、一般フロアで見てきたようななんちゃってジャパニーズとは違い……こちらはモダンテイストも取り入れた和風、おしゃれだがそれでいて派手すぎない落ち着いた佇まいに感じられる。

 厚手でエンジ色の絨毯引きされた床に、眩しすぎず優しげな燈色の照明、壁際に規則正しく置かれた黒塗りの椅子とテーブルは漆塗りされた艶のある黒、それらに座って談笑する人々も、どこか落ち着いて物腰の柔らかそうな雰囲気を漂わせている。

 段差のある畳の上には大きな色彩の淡い青の花瓶が置かれ、見るものをひきつけてやまない優雅な生け花からは香るほのかな甘い匂い。 これぞ正に日本の高級な温泉宿でのみ見られるような、豪華だが決して成金趣味でない上品な造りを前に、エックス達は高貴の2文字を全身の五感で感じ取っていた。

 

「……僕ら場違いだね」

 

 アクセルは息を呑みながらも素直な感想を漏らした。 やんごとなきムードに明らかに圧倒されているが、エックスは気圧される事無く堂々と足を進めた。 アクセルも慌ててエックスの後をついて行く。

 社長室はこのフロアから大きく3つに枝分かれしている廊下の1つ、真正面に見える特に幅広で……道中の中間あたりにて小さな日本庭園の見えるメインの通路を一直線、かつその一番奥に存在する事は分かっている。

 しかしなるだけ人目につかぬよう、エックス達は左回りに迂回するルートを選んだ。

 

 それでも何人かはすれ違い、こちらと目が合う人々もいたが……特に先を急ぐエックス達を呼び止める者はおらず、お互いに軽く会釈をする程度に留まった。

 自慢ではないが彼らとて有名人。 目が合えば何らかのアクションを求められるかもしれないと、アクセルは思ってはいたのだが、エックスからの「それはお互い様だ」の一言で合点がいった。

 成程、ここは多くの有名人が束の間の休息を求めてやってくるVIPエリア。 直接親交のある相手でなければ、必要以上に干渉せずそっとしておくと言う暗黙の了解があるのだろう。

 

 そうしている内に大回りを終え、ついには社長室の近くにやって来た。 大体の客は自室かロビー、あるいは今は反対方向に回り込んだ廊下中央の庭園周りに集まっているのだろう。 この社長室周りには誰かの気配は感じられない。

 さりとて警戒は怠らず、2人はひと際立派な作りで両開きの社長室の扉の前に立つ。 そしてエックスが扉に手の平を当てると、何やら目を閉じて小声で小さく呟いた。

 

「鍵は問題ない……動体反応は無し、熱源やレプリロイドのパルスも検知されない。 誰もいないな」

 

 どうやら部屋の向こうの様子を探っていたようだ。 潜入用に設計されたアーマーと言うだけあって、先読みの為に部屋の向こうでもある程度の目星をつけられるよう、精密なセンサー類をはじめとする様々な装備が施されている。

 それらを駆使して安全を確認したエックスは、他の客の視線を集めないよう手早く扉を開け、身を潜り込ませてはすぐ振り返りアクセルにも後に続くよう促した。 

 アクセルは黙って首を縦に振り、一応は背後を振り返りながら扉の隙間に入り込み、扉を閉じた。

 

 この間、エックス達の不法侵入に気付いた客や警備員はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――客や警備員『は』。 

 

 

 




 あんまりギャグの入らない繋ぎ回な話になった……やっぱトリックスターであるゼロの存在は大きいと再確認しました。
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