〇ゴールデンボール〇 ロックマンZAX2   作:Easatoshi

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第28話

 アクセルを施設内へ見送ってから暫く経った後、未だゼロはカンガルーとの格闘を繰り広げていた。

 肩にしがみつき、光の刃を突き刺して装甲を抉るゼロに対し、カンガルーの方はゼロを振り落とそうと、周りに味方である『ヤァヌス』の警備兵が居る事さえ構わず、何度も左右に身をよじり、コンテナへの体当たりを行うなど暴れ回っていた。

 

「しつこいデカブツだ! さっさとオチやがれ!」

 

 カンガルーの勢いに何度か振り落とされそうになりながら、それでも執拗に食らいつき暴れるカンガルーにビームサーベルを叩きつけていた。

 ダメージ自体は徐々に蓄積され、少しではあるが動きの鈍化や剥がれた装甲からのスパークに、焦げ臭い煙が上がるなど目に見えた変化は表れ始めていた。

 しかし撃破には至らず、装甲も厚くエネルギー兵器に対抗する薄膜のバリアまでも内部に張られ、2重に防御策を取られているカンガルーは動きを止める様子はまだまだ見えそうになかった。

 

「とっととくたばりやがれ侵入者め!!」

 

 そんなライドアーマーのロデオを披露するゼロに対し、パニックに陥る警備兵の一部がカンガルーの左側面から発砲した。

 

「おっと!」

 

 ゼロは咄嗟に身を屈めて攻撃を回避、放たれた弾がカンガルーの装甲に当たって弾ける。

 野次と言うには荒っぽいやり口がカンガルーの関心を引いたのか、一瞬動きを止め銃弾を放った警備兵の方へ振り向いた。

 

「この馬鹿! 注意を引いてどうすんだ!」

「あっやべ――」

 

 隣にいた同僚が肩を小突くも時すでに遅し。 暴走するカンガルーはしがみつくゼロの事も構わずに、次なる標的を警備兵達に向けた。

 猛然と突進し左腕を突き出すと、モーター以外にもう一つ腕に内蔵されたチェーンが延長、棘が回転を帯びたまま発砲した警備兵に襲い掛かった!

 

「う、うわっ――ぎゃあああああああああああああああああああッ!!!!

 

 哀れ名も無き警備兵、回転力を帯びたカンガルーの渾身の一撃を直撃し、文字通り粉砕されて物言わぬスクラップに変えられてしまった!

 肩を小突いた同僚も巻き添えを食い、あわや右肩から先をもっていかれながら吹き飛ばされる。

 

「お、おいマジかよ! 味方をやりやがったぞ!」

「まずいぞ! 今度は俺達を狙って――――」

 

 彼らにしてみれば味方の陣営にも拘らず、雑魚を蹴散らすように同士討ちをしたカンガルーは、引き続き今度は明確な敵意をもったかのように周りにいた他の兵士に牙を剥いた!

 

「う、うわああああああああああああ!!!! 逃げろおおおおおおおおおお!!!!」

「こっちに来るなあああああああああああああ!!!!」

 怖気づき、蜘蛛の子を散らす様に武器を放り出して逃走を図る兵士達を、狙いを定めた様にダッシュで距離を詰め、次々と自慢の棘を叩きつけ屠っていく。

 

「クソッタレ! もう敵味方関係ねぇってか!」

 

 狂ったように味方への大虐殺を始めるライドアーマーに悪態をつくゼロ。 

 自身を狙った警備兵からの誤射(フレンドリーファイア)が原因とは言え、明らかに味方を狙って執拗に攻撃を加える様子から、既に機体はクジャッカーからの制御下には置かれていないようだった。

 咄嗟の判断だったとは言え、アクセルを逃がすために先に操作系統を攻撃したのは失敗だったかもしれない。

 ゼロにできる事は暴走するカンガルーに食らいつき、少しでも攻撃の手を引き付けておく以外になかった。

 

「(クジャッカーめ、まともに機体を制御してやがらねぇな!? ……まさかアクセルでも追いかけてやがるのか!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼロの予想は当たっていた。

 

「ハッ…ハッ…アッー!

 

 所変わって独房エリア。 クジャッカーと対峙してから5分足らず、曲がり角から様子を窺っていたアクセルの尻に、またもクジャッカーのレーザーが突き刺さった!

 アクセルは尻を押さえて飛び跳ね、当たった所から立ち昇る焦げ臭い煙が鼻をつく。

 

 小さな孔雀の羽根の様な形のクジャッカーの『エイミングレーザー』は、あらかじめ対象を捉えておく必要があるものの、一度補足すれば素早く変幻自在の軌道を描きながら対象に襲い掛かる。

 とは言え本来このレーザーは一般的な成人男性の胴体とそう変わらぬサイズで、威力自体も一撃で相手を粉砕できる程にある筈だが、何故かクジャッカーは意図的に威力を下げ、こじんまりとした小指サイズの羽根状のレーザーだけを放っていた。

 

「アーツィ!! アーツ!! アーツェ!! アツゥイ!!」

 

 アクセルは防戦一方……何度も何度も死角から尻を集中的に焼かれ、その度に飛び跳ねながらただ逃げるだけに甘んじていた。

 そう、アクセルは今に至るまで全ての攻撃をチクチク♂と尻ばかりに受け続けていたのだ。 ただでさえクジャッカーに対してドン引きしていた所からの嫌らしい攻撃。

 アクセルからすれば先に捕捉された時点で不利は確定していたのに、一思いには殺さずねちっこく攻撃を加えられ、オマケにどこに隠れても正確に狙いをつけられる。 既に体力的にも限界で息切れも起こし、精神的にも追いつめられていた。

 

「ホホホッ! どこ見てるの? そんなに慌ててるようじゃワタシは倒せないわよ♂」

 

 ……なぶり殺し。 正にそれこそがクジャッカーの目的であった。

 

 クジャッカーの先制で照準を定められた時点で、どこに隠れても的確にレーザーで攻撃できる相手に戦局の主導権を握られていた。

 流石に武器の仕様上の問題なのか、常に狙いをつけられたままでなく定期的に照準は外れるものの、戦い始めてから程なくして憔悴しきっていたアクセルに、再度ロックオンをかけられぬよう立ち回る事は出来ずにいた。

 

「(ああもう!! 何で尻ばっかり狙うんだよコイツ!! マジ最悪!!)」

 

 焼かれた尻の痛みに胸糞の悪い思いを浮かべながら、それでも形勢を立て直すチャンスを伺いながらなんとか攻撃の手から逃れようとする。

 執拗に追いかける照準の立体映像を振り切ろうと走り続け、そして今『エイミングレーザー』の照準が消える。

 

「逃がさないわよ♂ このフロアにいる限りワタシの目からは逃れる事は出来ないわ♂」

「(ッ冗談じゃない!! こんな奴とまともに戦ってたらキリがないよ!!)」

 

 クジャッカーが再び自身を探し始めたのを物陰越しに見たアクセルは、最早この不利な状況でまともに戦う気は起きなかった。

 散々やられた後で尻尾を巻くのは悔しいが、今は『きんた〇』の奪還が先だ。

 アクセルはよくクジャッカーを観察する。 相手の目を盗み、逃げ切るに十分なタイミングを掴むまで物陰で様子を窺い――――

 

「(今だ!)」

 

 ――――クジャッカーが明後日の方向を向いた事を確認すると、自身が入ってきた独房フロアの出入口へ全力で駆け出した!

 

「ホホホッ! そこにいたのねボウヤ!」

 

 足音に気付いたクジャッカーが振り返り、すぐさま逃げるアクセルの尻めがけて照準を飛ばす!

 一直線に逃げるだけのアクセルは当然再度補足されるが、最早少しの攻撃に構っている暇もない。

 次のレーザーが飛んでくる前にさっさと逃げだそう。 ただ一心にひたすら走り――――出入口の通路にたどり着くなり絶望した。

 

「うっそぉ……」

 

 アクセルがやってきた時には十字路だった場所が、今はT字路に変化していた。 隔壁が降りていたのだ。

 難を逃れられるだろうと必死でやってきたはずの場所が壁に変えられ、歯を食いしばるようなアクセルの表情が一気に脱力した。

 

「無駄よ、隔壁ならワタシが先に下ろしておいたの」

 

 疲労の余り隔壁に向き合い手をついて膝から崩れ落ちるアクセルだが、そんな失意の中にある彼にクジャッカーは誇らしげに語る。

 弱弱しい動きで振り返ると、照準を自身の尻に合わせながらこちらににじり寄ってくるクジャッカーがいた。

 

「一思いにはイかせないわよ♂ ワタシは相手を弱らせてからが本番なの♂」

 

 アクセルは戦慄する。 獲物を狙う野獣の眼光をたぎらせ、嗜虐的な笑みを浮かべるクジャッカーの口元は舌なめずりをしていた。

 

「チクチク♂と攻撃を加えて弱らせて、最後にズドン♂と大きいのを一発♂ だから百発百中なのよ♂♂」

 

 一方十数mはある独房一区画分まで近づいた辺りで立ち止まると、クジャッカーは再び両手をかざす。 あの『エイミングレーザー』を放つ前動作だ。

 

「(またアレが来るの……? に、逃げなきゃ……)」

 

 焼かれた尻の痛みもあり、既に体の疲労はピークに達していたが、それでもあのねちっこい攻撃を何度も貰いたくないアクセルはやっとこさ重い腰を上げる。

 腰砕けのまま何とか横側に駆け出し危機を逃れようとするが、しかしクジャッカーにまたも補足された今となっては完全にただの悪あがきであった。

 

「さあどんどん逃げなさい♂ 抵抗されるほど燃え上がるの♂ ワタシを愉しませて頂戴よ♂」

 

 そしてまた、クジャッカーの両手から放たれたレーザーがアクセルの尻に突き刺さる!

 

「アツーェ!! ――――あああああああもうやだああああああッ!!!!

 

 逃げる事さえ叶わず腹の底から絶叫するアクセルの、カマを掘られ飛び上がるだけの追いかけっこが再び始まった。

 小さな羽根のレーザーが再び逃げ回るアクセルを追い回し、曲がり角を逃げ回るも難なく追跡される。

 

「(ダメだ!! いつまでも逃げてられない!! このままじゃ本当にヤられちゃう!! クジャッカーを倒さなきゃ!!)」

 

 体力と気力、そしてそれを上回る尻の限界。 退却も叶わない以上、最早自身が助かるにはクジャッカーを倒す以外になかった。

 

「(アツェ! ああしつこい!! 一体どうすればいいの!? アイツの隙を作る何かいい方法は!?)」

 

 もう一発羽根が突き刺さり、尻を焼かれる痛みをこらえながら文字通り必死で考えるアクセル。

 クジャッカーからすれば、相手の姿さえ一度でも補足できれば、後は勝手にレーザーが追いかけて行ってくれるだけだから楽な事この上ない。

 となれば、こちらが反撃に乗り出すにはまず、相手に補足されないようにする以外に方法はない。

 しかしアクセルは逃げ回る過程において、何度か隙を見てバレットによる不意打ちを試みた事はあったが、やはり相手の視界に入ってしまうだけでロックオンをされる以上、中々攻撃のチャンスを見出す事は出来ずにいた。

 

「(どうにかしてアイツにロックオンされずに済む方法があれば――――ん?)」

 

 何とかして厄介な『エイミングレーザー』の精密な照準から逃れられないか思考を巡らせていた時、ふとアクセルは懐の中の持ち物に気がついた。

 

「(……そういえばさっき、マシュラームとか言う奴のDNAデータ拾ったっけ)」

 

 アクセルはマシュラームのデータを回収していた事を思い出す。 恐らく『ヤァヌス』側の戦闘員だろうと当たりをつけ、拾っておけばどこかで敵の目を欺いたり、このレプリロイドの持つ『特殊技能』を生かす事が出来るのではないかと。

 

「(アツイ! ……『特殊技能』? そ、そうだ!! この手があった!)」

 

 それは先の判断の中で得たひらめきだった。 スプリット・マシュラームの持つその『特殊能力』の存在を思い出し、アクセルはようやく反撃の糸口を見出した。

 半ば相手の出方を窺う賭けになるが、現状を打開するにはそれしか方法がない。 

 とにかくそれを実行するには、今クジャッカーに向けられた照準を振り切る以外にない。 

 

「アツイ!! アツイ!! アツイ!! アツイ!! アー――――アツイッ!!」

 

 完全に真っ黒に焦がされ、反射的に「熱い」と口にするも既に感覚が無くなりかけているアクセルの尻。

 しかし今は耐える時だ。 照準が外れ再び相手がこちらを見失った時こそ、思いついた策を実行に移す時だ。

 行動のチャンスはこの攻撃が終わってからだ。 アクセルは自分に言い聞かせながら逃げ回り防御に徹し、クジャッカーの照準が外れるのを待った。

 

 

 そして相手からは直接見えない、独房のフロアの物陰に入ったと同時に照準が外れ――――

 

「(ッチャンス!!)」

 

 アクセルはマシュラームの残骸を体内のコピーチップを用いて解析、持ち前の『コピー能力』を起動させる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 策を閃くアクセルに対し、一方でクジャッカーの方は至極退屈そうに欠伸をしていた。

 

「あーあ。 まーた見失っちゃったわねぇ、あの子も中々頑張るわぁ」

 

 ただただ逃げ回っては物陰に出たり入ったりと、たまに反撃を試みようと独房の陰から銃撃を試みたりと、その全てを自身の分析力と鋭敏な知覚によって先読みしてきたクジャッカー。

 可愛い少年の必死の抵抗を微笑ましく見てきた彼だったが、そろそろ長引く戦闘にじれったさを感じるようになってきた。

 

「……焦らすのもそろそろ飽きてきたわねぇ。 いい加減一思いにヤっちゃってもいい頃合いかもしれないわ♂」

 

 弱らせてから強力な一撃を叩きこむスタイルだと彼は言ったが、そろそろあのアクセルとか言うハンターも、逃げ方が段々腰砕けになってきているのを見るに、既に尻の感覚が無くなってきた頃だろうと予想した。

 となれば、本命の一発♂を仕掛けるのはこの次だろう。 そう決断したクジャッカーは意図的に下げていた『エイミングレーザー』の出力を最大まで引き上げる。

 視界に投影されるレーザーの出力インジケーターをMAXまで振り切ると、全身にエネルギーが滾るような感覚を覚える。

 

「さあ出ていらっしゃい♂ そろそろ昇天させてあげるわよ♂♂」

 

 クジャッカーは逸る心を押さえながら、知覚センサーの高い感度を生かし、十字路の全ての方向へ気を張り巡らせる。

 最早どこに隠れようと、あらゆる方向に目がついているように感じ取れるクジャッカーの追跡を逃れる事は出来ない。

 不意打ちを仕掛けようと出て来た所で照準を合わせ、最期の一撃を叩きこんでやろうと思った――――その時である!

 

「――――そこねッ!?

 

 クジャッカーの敏感な知覚センサーに動体反応を検知! 丁度自身の背にしている方向に動きがあった!

 クジャッカーは素早く振り返り『エイミングレーザー』の照準を向け……そして驚愕する。

 

「うん!? あ、貴方は――」

 

 照準に捉えた先にいたのは黒いボディの少年ハンターではなかった。

 大きなキノコの体に手足と顔のついた、弱弱しい様子で曲がり角の壁に手をかける、自身が良く遊び相手になってあげている見慣れた顔のレプリロイドだった。

 

「ご、ごめんよクジャッカー……。 あのおじいちゃんに逃げられちゃったよぉ」

「マシュラーム!?」

 スプリット・マシュラームがそこにいた。

 

 

 

 




 ぬわああああああああああああん!! 書けば書くほどテキスト量増えるもおおおおおおおん!!

 ……もうすぐ終わりが見えてるのにゴールが遠のいていくみたいです。 ロックマンX的に言うなれば『後ろに動く女神像』さながらに!
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