〇ゴールデンボール〇 ロックマンZAX2   作:Easatoshi

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 話もいよいよ大詰めですが、なんやかんやあって30話目に入りました!


 それでは投下します!


第30話

「待てマック!! 今ここでケリをつけてやる!!」

「そう焦るな! お前のいい死に場所へ案内してやってるだけだ!」

 

 施設内の廊下にて追跡劇を繰り広げるマックとゼロ。 階段を上り廊下を走り逃げ回るマックを追いつめては、天井に備え付けられた防衛用のセントリーガンからの射撃に晒される。

 更に側面の扉や横道からマックが通り過ぎた直後に飛び出し、こちらに銃撃してくる警備兵の妨害をゼットセイバーで退けながら、つかず離されずのデッドヒートを繰り広げていた。

 放たれた弾幕がゼロのすぐ側を掠め、脚と肩に焦げ目を作り、頬に軽い火傷を負う。

 

「そこをどけ!! 邪魔だ!!

 

 銃弾の嵐に怯まず行く手を塞ぐ敵兵を横薙ぎに一刀両断! 上半身と下半身が泣き別れする敵兵。

 乱戦の合間を縫って投げられた手榴弾をはじき返し、ゼロの近くで炸裂させるつもりだった兵士の一人は再度投げ返す事も出来ず目の前で爆発する。

 来る敵全てを返り討ちにしているゼロだが、しかし先程のカンガルーとのもみ合いでかなり消耗しており、付け加えて兵士の防衛を掻い潜りながらのマックの追跡に、次第に全身にダメージを蓄積させていた。

 息切れに体が重くなっていくも、衛星『きんた〇』を手中に収めんとするマックを取り逃がすつもりも更々なかった。

 

「ゼロ! 3人の中でも特にお前だけはタダでは死なさん!」

 

 ゼロのバスターの射撃を掻い潜り、同じくバスターで反撃するマックは語る。

 

「折角ベンチャー企業の社長としてやっていけたのに、お前は俺の夢を一瞬で灰にしてくれた!」

 

 それはかつて在りし日の栄光と転落。 そして悪の道へと引き込む原因となった『MEGA MAC』炎上。

 マックにとっては、終わりとある意味で新たな始まりの全てが集約されたあの事件。 

 

「そんな俺に対しお前とエックスは口を揃えて『何も知らない』と来たもんだ……わざわざタイマーまで設定して俺の城を燃やしやがって!!」

「ちょっと待て! 俺は時間を見計らったりは――――」

「フン! 謝罪より開き直りか……まあいい、聞くに堪えん貴様の言い訳もすぐ終わる!!」

 

 まるで聞く耳を持たぬマック。 実際クジャッカーから逃れる為に火を放ったのは確かだが、ゼロとしてもスパ施設の全焼は意図したものではない。

 それはさておき、しばし追走劇を繰り広げ施設内の階段を登り切った後、最上階と思わしき階層の一直線に続く廊下に差し掛かった時、いよいよゼロの脚力をもってしても中々追いつけないマックが、更にもう一段階スピードを上げ突き放しにかかる。

 

「あの扉の先が屋上だ! そこで決着をつけようじゃないか!」

 

 次第に開いていくマックとの距離感。 扉に先にマックが辿り着くと、自動扉が両側に開き外の明かりが廊下に差し込んだ。 日の光が上手く差し込む時間帯と位置取りなのか、外の眩しさで屋上の景色は窺えない。

 開いた扉を潜り抜け、屋上からの光の中にマックの姿が溶け込んでいく。 マックを迎え入れた扉はゼロをも誘い込まんと開きっ放しになっている。

 

「――上等だ! そこで白黒はっきりさせてやるぜ!」

 

 この先の屋上で決着をつける。 マックから送り付けられた挑戦状を受けんとするゼロは、誘われるがままに扉を潜り抜けた!

 

 

 

 ――――それは眩い陽の光に当てられての事か、それとも目先に広がる屋上の光景に目を奪われての事か。 ゼロはマックを追わんとした駆け足を止め、驚愕の表情でその場に立ち止まった。

 

 屋上の敷地のひと際高く頑丈に作られていた土台の上に、人の身の丈など足元にも及ばぬ大きさで佇まい、ジャングルの緑の中において異彩を放つ、丸々とした一凛の銀の花が天を向いて咲き誇っていた。

 地球の周りを取り巻く人工の星々と電波のやり取りをすべく作られたそれは、パラボラアンテナと呼ばれるものであった。

 その巨大な建造物を背にマックはしてやったりと笑ってこちらを見下ろしており、彼の足元の……ゼロが出て来た屋上の出入り口を取り囲むように、散々ゼロを手こずらせたカンガルーが5機も待ち伏せていた。

 

「地獄にようこそゼロ」

 

 屋上で待ち構えていたマックが指を鳴らす。 するとゼロが振り返る間もなく背後にあった自動扉が閉鎖され、施錠状況を知らせる緑のラップが赤に変わる。

 同時に屋上を取り囲むフェンスの上に電磁バリアが張られ、何人たりとも侵入者を寄せ付けない……もとい逃がさない様に全ての経路が完全に塞がれた!

 

「……決着をつけると聞いたが?」

「死に場所を用意してやるとも言ったぞ。 わるいがお前と正面切って戦っても勝ち目はないのでな」

 

 顔をしかめ皮肉を言うゼロに対し、一方でマックは全く悪びれぬ様子で余裕の口ぶりで物を言う。

 

「やり合ったお前なら分かっているだろうが、この基地に配備されてるカンガルーは、通常の量産機よりもかなり手を加えた特別な奴だ。 果たして今度は生き残れるかな?」

「ガチガチに塞ぎやがって、お前こそ自分の逃げ場を無くしたんじゃないのか?」

「そりゃ考える必要も無かろう、逃げる必要なんかないのだから……お前こそ強がりを言いやがって、精々惨めったらしく死に様を晒すんだな!」

「クッ、言ってくれやがるぜ!」

 

 ゼロは毒づいた。 先程叩き潰したカンガルーも中々に手を焼いたが、それでもライドアーマーに乗った敵を、これまでの任務の中で幾度となく倒してきたゼロが何故苦戦したか。 やはりと言うかあの機体は『ヤァヌス』の手が加わり、見た目こそ変わらないが装甲をはじめエンジン出力、及び全ての性能が強化されていたのだ。

 この辺は攫った科学者を働かせたのもあるのだろうが、元々は彼らもMACエンジニアリングを母体とする組織。 技術力は折り紙付きなのだろう。

 そんな厄介者が今は5機も待ち伏せしている。 マックの余裕綽々な物言いもあり、これで悪態をつくなと言うのはいささか無理があった。

 

「さあ、遊びは終わりだゼロ! 俺の恨みを思い知りながら死んで行け!! やれ!! クジャッカーッ!!

 

 勝利を確信するマックは腕をかざしながら、自分の右腕たるクジャッカー相手に無線で指示を飛ばした。

 

「……クジャッカーだと?」

 

 敵の攻撃が来ると身構えかけたが、しかしマックの呼んだその名を聞いてゼロは強張った表情から一転、はっと素面に戻ったような呆気にとられた顔になった。

 自信満々なマックの呼びかけに、遂に強化されたライドアーマーが一斉に動き出す――――

 

 

 

 

 

 

 ――――筈も無く、気合のこもったマックの叫び声だけがむなしくこだました。

 

 しばし沈黙と白けた空気が場を支配する。 完全に自身のペースに引き込めたと思ったマックは、動き出すと思っていたカンガルーの沈黙と言う、予想外の出来事に目線を泳がせていた。

 

「――――今のは発声練習だ。 今度こそお前の命が終わる時だ。 覚悟しろ!!

「お、おう」

 

 普通なら気まずいことこの上ないムードだが、めげずに仕切り直しを宣言するマックに、両者の温度差を際立たせるが如くゼロの返事はいつになく歯切れが悪かった。

 

「フハハハハッ!! 年貢の納め時だ!! やってしまえクジャッカーッ!!!!

 気を取り直し再度クジャッカーへの呼びかけを試みるマック。 口上を変え新たな意気込みでカンガルーをけしかける。

 何とも言えない微妙な雰囲気をかき消すかの如く、叫び声をあげる主人(マック)の言葉が待機するライドアーマーを――――

 

 

 

 

 

 ――――動かせる訳もなく、マックの魂の呼びかけはまたもや騒がしい基地内の銃撃音と、変わらぬ様子のジャングルの草木のざわめきと鳥の囀(さえず)りにかき消されてしまった。

 二度も無視(シカト)を決め込まれた事実に対し、マックは流石に動揺を隠しきれず、額から滝のように汗を流し始めてしまった。

 マックのやる気だけが空回りするかのように、一向に動き出す気配を見せないライドアーマー。

 それはもう、さっき以上に気まずい空気が流れる訳だが、余りのマックの痛々しさに見かねたゼロはいたたまれぬ様子で忠告する。

 

「……一応言っておくがな」

 

 ……マックと相対するまでのわずかな時間、アクセル達と情報を交換したゼロは全てを知っていた。

 気合も十分だったマックに冷や水をぶっかけかねない、彼が自信満々に用意した待ち伏せが発覚した今となっては残酷な事この上ない事実を。

 困惑するマックに対し、ゼロの声は正に腫れ物に触るかのようによそよそしく、どこか申し訳なさそうに残酷な事実を突きつける。

 

「クジャッカーならアクセルにケツの穴開けられておっ()んだぜ」

「えっ?」

 ゼロの告げた紛れもない真実に、マックは疑問符と言うにはあまりに間抜けな声を上げた。

 それはどことなく現実を受け入れられずにいると言うか、もっと具体的に言うなれば……かつて自身を看板作家に押し上げた代表作が、実写化するや否や現場のパワーで、キャラから脚本まで別の作品と化した映画を見せられたある漫画家のように。

 ……して、言った本人は嘘偽りはないものの、マックはゼロに言われた事を確かめるべく腕部の無線機を操作し、今度はクジャッカーのいる現場の映像を投影する。

 

 ――――そして後悔した。

 クジャッカーは独房フロアにいたが、地面に顔から突っ伏して倒れており、膝を曲げて突き上げられた尻には焦げた大穴が開いて昇天していたではないか!

 わざわざ尻を浮かせたようなこの姿勢は恐らくは、射撃を受けた際に飛び上がりそうになったままショック死を迎えたのだろうが、とにかく余りに受け入れがたい現実にマックは完全に放心していた。

 彼をしてまともにやり合ったら敵わないと、勝てばよかろうの精神でライドアーマーを集結させた手間が、完全に無駄になってしまったのだから。

 否、無駄になっただけならまだ良い。 そもそもが逸る心にほだされて逃げ場のない屋上まで誘い込んでしまったのだから、自分も逃げられないこの状況でゼロの様な特A級ハンターと、真っ向勝負を挑んだ所で勝ち目はない。 

 早い話が詰みであった。

 

 転じて絶体絶命のピンチとなった状況にマックは項垂れ、ぶつくさと何やら言葉の羅列を呟いていた。

 痛ましくも異様なマックの様子に近づきがたい雰囲気を感じていたゼロは、迂闊に手も出せず攻撃を躊躇っていたが……突如としてマックは呟くのを止め、ピクリと肩を震わせた。

 

「ククッククククッ……」

 

 直後からの薄ら笑い。 次々と状況に翻弄されるマックを見てきたゼロにとって、今の彼の笑い方は、体の中からこみ上げる何かを必死で堪えるような、さながら気が触れて狂気を孕んだかのような笑みに見えた。 

 

「ククククク……このライドアーマーが切り札だと思ったら大間違いだ」

「ファッ!?」

 

 噴き出す感情を抑えるような笑い声からの、舌の根も乾かぬ内に前言を撤回するマックに、今度はゼロが驚き慄いた。

 

「失望するなよゼロ! これは只の余興だ!! 俺の狙いはお前の緊張をほぐして全力を出しやすいよう、アテが外れたフリをしてやっただけだ!! 言わば『敵に塩を送る』と言う奴だ!!」

「只のヤケクソだろうが!! 物は言い様だなてめぇ!!」

 

 どうやら狂気に囚われたと言うのは間違いでは無かったらしい。 不気味なまでに乾いた笑顔で、どう贔屓目に見ても無理があるマックの強がりに、自他共に認める馬鹿であるゼロをしてトチ狂った物言いとしか思えなかった。

 ある筈も無かった切り札に固執し、逃げ場さえ自ら塞いだ背水の陣において、マックが取った次の手は――――。

 

「遊びは終わりだ!! 覚悟しろやああああああああああああああああッ!!!!」

 

突撃だった。

 高台から跳躍し、半狂乱になって飛び掛かってくるやけっぱちのマック。 動かないライドアーマーに自ら乗り込む訳でもなく、愚直なまでに一直線に飛び掛かる彼に、ゼロは非情な決断を下す。

 

「てめぇが往生しやがれぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」

 

 これ以上は問答無用! 一撃の元に終わらせる事にした。 バスターを突き付けて降下するマックに真っ向から飛び上がり、セイバーを振りかぶった!!

 無慈悲なまでに勢いよく振りぬかれた緑の光の刃がマックの胴体を薙ぎ払う!

 

「ビィィィムサァバァァァァァァァァッ!!!!」

 

 横一文字に一閃!!

 通りすがりに倒された警備兵と同じように、マックは断末魔の叫びを上げながら胴体を両断され、切り付けられた勢いで吹き飛ばされ巨大アンテナの土台に叩きつけられた!

 マックの分かたれた上下の体が頑丈なコンクリートの土台を破砕させ、その衝撃でアンテナを支える鉄骨が揺らぐ。

 

 

 ――――これにて決着。

 

 悪あがきに走ったマックに引導を渡したゼロは着地すると、セイバーの光を納め背中のサーベルラックに収納した。

 

「ご、ごがが……また俺は、お前の剣技に敗れるのか……」

 

 めり込んだ土台のコンクリート片に埋もれ、瀕死の重傷を負ったマックの消え入るような掠れ声。

 それはかつてDrドップラーの起こした反乱の際……ゼロとマックは今と同じように敵同士として相対し、ゼロの瞬殺に終わった事があるのだが、その倒され方と言えばやはりビームサーベルによる一刀両断だった。 違いと言えば斬られた方向の縦と横の違いぐらいか。

 ゼロは自らが成敗したマックの元へ足を進め、虫の息のマックと目線を合わせ膝をつく。

 

「何故だ、何故俺が負けなければならない……グフッ……会社にしろ秘密結社にしろ……一から組織を作って必死で切り盛りしてきた俺に対する仕打ちが、これなのか……」

「いやまあアレだ。 ぶっちゃけ詰めは甘いし直ぐヤケクソ起こすからこうなったんじゃね? 何か悪堕ちしたのもある意味必然だったかもな」

どの口が言うか!? そもそもが俺のスパ施設焼いた事が全ての発端だろうが……!!」

 

 口から赤いオイルをこれでもかと吐きながら、あらんばかりの恨みつらみをゼロにぶつけるマック。

 これには流石にゼロもバツが悪くなったのか、それとも隠すだけ無駄だと判断したのか、死に行くものへの手向けとして素直に白状する事にした。

 

「悪かった。 確かに俺は『MEGA MAC』炎上のきっかけを作ったかもしれん」

!? 実際に……全焼までしたんだぞ! それを他人事みたいに――――」

「だがそれは、襲い掛かってきたクジャッカーを撃退する為に、アイツの弱点である火の技を使ったからなんだ。 全焼したのも侵入の際にうっかり天井に大穴開けてしまってな、スプリンクラーが作動しなかったからで、決してお前が疑ったように見計らったようなタイミングでやらかした訳じゃない」

ファッ!? な、ならあの俺のラーメンタイマーの時間は、何だったんだ?」

「……何のことだ? 俺はタイマーなんて知らねぇぞ?」

 

 あくまでわざと焼いたと信じて疑わないマックへ、正直に全てを話すゼロ。 するとゼロの言葉にショックを受けたのだろう、マックは口を開けたまま茫然とする。

 廃ビルで拘束された時にも聞いたが、マックはしきりに自分達が証拠隠滅の為にスパ施設を燃やしたのだと思い込んでいるようだった。

 しかし実態はゼロはクジャッカーを撃退する為に『龍炎刃(りゅうえんじん)』を放ったのと、同時期に社長室を探索するアクセルが部屋にあったラーメンタイマーを、何の気なしに作動させていた時とタイミングがかぶっただけであった。

 トイレの隣が温泉用のボイラー室だったのと、天井を破ったが為にスプリンクラーが作動しなかった。 そう言った悪条件が重なったと言うのが事のあらましだった。

 崩れてきた天井に潰されたショックからの思い込みから、壮大な勘違いをしてしまった事を知ったマックの心境や如何に――――。

 

「――――って!! 結局お前らが無断で敷地に入るから起こった事じゃないか!!」

 

 まあ、結局は彼の言う通りイレギュラーハンター側の不法侵入が招いた事であるが。

 

「え、いやほら、俺クジャッカーに襲われそうになった被害者だし」

「侵入者のお前らを捕まえようとしたついでだったんだろうが!! アイツ警備隊長だったし!! やっぱお前らが悪いわ!!」

「チッ、ばれたか」

「反省の色ねぇなオイッ!! ――――ゴホッ! ゴホッ!!

 

 清々しいまでに一切悪びれず、当然のようにあっさりと受け流すゼロに、マックの正論など届くはずもなかった。

 マックはあらんばかりの力を込めて叫ぶも、しかし重傷を負った身故にその声は体の痛みと吐血に遮られてしまう。

 いよいよもって死期が迫っている彼だが、意識が薄れかかっていると言うのもある為か、ここにきて彼は怒りの波が引いていくかのように、穏やかに薄ら笑みを浮かべ語った。

 

「……だ、だが……大した奴だよお前は……土壇場でも開き直れるその図太い精神こそが、俺に足りなかったものかもしれん……な……」

 

 これでもかと恨み節をぶつけてきたマックだったが、一方で人生の全てを引っ掻き回されようとも、いかなる時も堂々としてみせたゼロのメンタルの強さだけは認めたようだった。

 

「ゼ、ゼロよ……俺はもう終わりだ……手向けとして一つだけ教えてくれ」

 

 マックは冥土の土産として、赤いハンターに最期の質問を求めてきた。

 

「何がお前を駆り立てる……お前は一体、何の為に戦っているんだ……?」

 

 

 

 

 

 ――――ゼロはマックの問いに目をつむり、しばし一言も言葉を発することなく佇んだ。

 

 その質問はかつてあの時……レプリフォースとの戦いにおいてかつての恋人を手にかけざるをえなかった時に、悲しみの中で自らに問いかけた言葉と同じものであった。

 あの辛い出来事から長きに渡り、ゼロは自らの戦う意義に悩まされながら今のこの時まで生き抜き、辛きを堪えながら数多の戦場を乗り越えてきた。

 

 ……そしてついに見つけた。 いや、答えなどとっくの昔から出ていたのだ。 今の今まで目を逸らし続けていただけなのかもしれない。

 だからこそ、今は自信をもって違うと言えるだろう。 ゼロはもう悩まない。 心の奥底に眠っていた自分の本心から決して逃げる事はしない。 それはこれから先の未来においても――――。

 

 

 束の間の沈黙を破るように、死に逝くマックへの冥土の土産……そして自らのこれからの戦う理由を素直に表すべく、目を見開き堂々と胸を張って答えた。

 

 

 

「ビンビン♂のバスターの為だッ!!!!」

 

 

 自信に満ちた大声と共に人差し指と中指の間に親指を挟んだ右手を突き出し、ゼロの白い股間に再び黄金色に輝く頂が隆起した!

 

「――――は、ははは……な、なんじゃそりゃ……」

 

 ……その傍らで、長年の戦いの中で見出した割に余りにしょっぱ過ぎる答えを聞かされたマックは、これでもかと言うぐらい乾いた笑みを浮かべていた。

 

はははははは!!!! 勝てねぇ……完敗だ……アホ過ぎて(かな)わねぇ……ゴフッ」

「おい誰がアホだ! 俺は真面目に言ってるんだぞ! ――ってかまた勝手におっ立ってやがる!」

「そんなものまでおっ立てて真面目か……俺達とは色々と次元が違うよ……全く」

 

 自分なりに真面目に答えた事をアホ呼ばわりされ、加えて意思を無視して自慢のアレが光り輝き始め、節操のないバスターにゼロは心底うんざりする。

 マックはそんなゼロに対し、言葉と裏腹にある意味でとても感心したように眺めていたが……。

 

「だが、不運(ハードラック)(ダンス)らされた俺も、悪の道で生きると言う決心をした身……俺なりの信念というものがある」

 

 突如弱弱しかったマックの声色に力が入り、ビンビンのバスターに気を取られていたゼロの動きが止まる。

 

「貴様らにばらまかれた不幸の種……そこから悪の(はな)を咲かせると言う信念がな!

 

 異様な雰囲気を感じ取ったゼロは再びマックに向き直した。 そこには口元を吊り上げ不敵な笑みを浮かべるマックの表情。

 ――――まだ終わっていない! ゼロは咄嗟に背中のセイバーに手を伸ばす。

 

 

「緊急コード発令!! UH0-E-O105ッ!!」

 

 が、ゼロの抜刀を待たずして、マックが怪しげなコードを大声で叫んだ! 直後、秘密基地の全区画に警報とアナウンスが鳴り響く――――

 

<全職員に告ぐ! 緊急コードが発令されました! 当基地は指令に基づき間も無く自爆します! 基地の全職員は直ちに避難して下さい!>

 

 

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