〇ゴールデンボール〇 ロックマンZAX2 作:Easatoshi
会場となったホテルの上階にある、招待客の為に予約されていた客室の1つ。 部屋の奥にある窓には見晴らしの良い、煌く夜景の街並みが広がっており、絶え間なくヘッドライトを付けた車の走る高速道路は、さながら夜空を大きく一筋に彩るミルキーウェイをも連想させる。
そんな夜景を楽しめる部屋は、ベージュの壁に濃色のカーペットが敷かれ、間にフロントに繋がる内線用の受話器が置かれたツインベッドと、対面の壁にテレビの設置された横長のテーブルがある。
テレビモニターには電源が入っており、下のパーティー会場での映像が流れていた。 あの場にて取材していたメディアの生放送する番組のチャンネルなのだろう。
すごく大きい『きんた〇』の文字と、エックスが激怒を通り越して満面の笑みを浮かべて飛び出していった瞬間をしっかりと捉えていた。
この部屋でレイヤーとイチャコラしていた、今はテレビの前で大きく口を開けて茫然とするゼロを始末する為に。
「ゼ……ゼロさん?」
片方のベッドの上で掛布団に身を包むレイヤーが、心配そうな声色でゼロの背後から呼びかける。
近くには先ほどまで身に着けていたドレスが脱いで置かれており、胸元から下は窺う事が出来ないが、彼女は今服と言う服を身に着けていないのだろうと思われる。
ゼロもまた、バスローブに素足にスリッパ、そして何故か変わらずヘルメットを身に着けているが……恐らくは致す事は致した後だろう。
そんなついさっきまで『自信』に満ち溢れていたであろう彼は、ありったけの溜め込んだエネルギーをチャージショットで放ち、使い切ったバスターさながらに放心していた。
「やっちまった……」
後悔先に立たずとはこの事だろう。 あまりにレイヤーのメロンが魅惑的だったから、つい事を後回しにしてまでつまみ食いをやらかしたが、思っていた以上に激怒するエックスに、ゼロは頭を抱え今更になって肝を……もといどうりょくろを冷やしていた。
同僚を脅して情報を聞き出すなり飛び出していった彼のスピードは、文字通りの意味で目にも留まらぬ勢いだった。 この部屋を見つけ出して飛び込んでくるのもそう時間のかかる事ではないだろう。
「エ、エックスさんと何があった……いえ、何をしたんですか?」
一緒にテレビを見ていたレイヤーがゼロに尋ねてくる。 状況は何となしに察している筈だろうが、それでもゼロの口から聞かずにはいられないのだろう。
「アレかなり怒ってるように見えたんですが、大丈夫なんですか……!?」
「フッ……俺は最後の文字を『〇』と書いた訳であって『ま』と書くつもりだった証拠は――――」
「今更言い訳なんかできませんよ!」
「お、そうだな」
至極真っ当なレイヤーの受け答えに、風前の灯火となったゼロは適当を通り越して投げやりな返事しかできない。
そうだ、どっちにしろからかう意図で今回の投稿を行ったのだから、吐いた唾を飲み込むなんてマネはできる訳もない。 些か現実逃避が過ぎたようだ。
「ゼロさん、差し出がましい話かもしれませんが、こうなったら素直に謝った方がまだマシかと思いますが……」
「……本当に今更だな。 だがあんなになってるエックスに、俺のゴッド☆土下座が通じるか……?」
「そう言う事するから余計怒らせるんじゃないです――――」
それは下階から自分たちのいる階層に迫るように登ってくる。 音が近づく度揺れを増し、だんだんと音の正体が足音であると言う事が分かる。
高層エレベーターがある筈なのに、非常階段でも使って駆け上がっているのだろうか? 音量の増える速さを考慮すればエレベーターの上昇速度よりも圧倒的に速い。
悪夢のような超高速で走る何かに困惑するレイヤーをよそに、ゼロは長年の経験から誰の足音なのか想像がついていた。
「な、何ですかこの音は……?」
「……来た」
間違いない……テレビで見たあの瞬間から、1分も経過していないと言うのに。 あまりに、あまりにも速過ぎる。
現実を受け入れる間も無く、足音は同じ階層に到達する。 同時に、迅速かつ正確に突進するかのように自室と距離を詰めてくる。
襲撃を予感したゼロは反射的に身構えた。 レイヤーも着るものを身に着けてない体を守る様に、ベッドに潜り込むようにしてゼロの様子を窺っていた……しかし足音は自室の扉の向こうで唐突に途切れ、予想していた扉を破っての強行突入も起こらない。
それでも不穏な予感を拭えないゼロは、扉の……正確には扉の向こうにいるであろう『さる人物』を見据えていた。
緊迫感漂うしばしの間、ゼロが沈黙と共に襲撃に備えている時だった。 ドアを数回、ノックする音が聞こえたのは。
ゼロは訝しげな様子で見つめているが、不意に扉の向こうから声がかかってきた。
「お客様、ルームサービスです」
――――2人は戦慄した。
給仕係と思わしき丁寧な言葉遣いだが、彼らにとってはよく耳にする慣れ親しんだ声であった。 同時に……今一番聞きたくない人物の声でもある。
「お客様? ルームサービスをお持ちしました」
「こ、この声は……まさか」
毛穴から吹き出す様に冷や汗をかくレイヤーの問いかけに、ゼロは無言でうなずいた。
自分達はこの部屋にやって来てから、一度も備え付けの内線など使っていないのに。
獣の疾走するような揺れを伴う足音の後に、軽いノックと共に頼んでもいない筈のルームサービス。
そこまで考えた辺りで思考を打ち切り、ゼロは瞬時に普段身に着けている赤いアーマーを展開し、バスターに切り替えた片腕をドアに構える。
「すみません、いらっしゃいますか――――」
「グッバイイレギュラー!」
ドアの向こうの人物など一々確認していられない、間髪入れずにバスターを発射! 瞬きする間もなく、ゼロの放ったハイパーZEROバスターがドアに叩きこまれた!
「『クリスタルウォール』ッ!!」
扉は破壊された! しかし廊下側にいた人物の掛け声と共に、ゼロのバスターはたやすくはじき返される。 反射したバスターはゼロの頭部のすぐ側をかすめ、高層ホテルのベランダがガラス扉を突き破っていった。
ベランダにぶちまけられる溶解したガラス片、高所に吹く風が衝撃でほどけたベランダのカーテンをたなびかせる。 完全に行動を先読みされていたようだ。
……しばし、場が沈黙する。 が、爆風で視界を遮られた廊下の方から、何かが砕け散る音の後に給仕係? らしき男の声が。
「攻撃したって事は、認めたって事だよね?」
もとい、
煙に包まれた廊下の方から声の主と思わしき人影がゼロの目に留まる。 壊れた扉を跨ぎ、息を呑んでバスターを構えたまま硬直するゼロに歩み寄った。
「ゼロ……俺に対して何か言う事があるんじゃないか?」
人影が煙の中から姿を現した。 身に覚えのある声と姿……その両方を目の当たりにしたゼロは神妙な態度でその男の名を口にする。
「……エックス」
そう、ゼロがいたずらに引っ掛けたエックスその人であった。 しかしその服装はパーティー会場で身に着けていた正装ではなく、かつての初のシグマ大戦で使用した『ファーストアーマー』であった。
白を基調にシンプルな造形だが、しかしエックスの基礎能力を引き出す事に関しては最もツボを押さえている、無駄のない造形美。 しかし今日ばかりは、会場の壇上に招かれた事もあってか、胸に赤いバラの様なものを身に着けている。
赤いアクセントのついた戦闘用のアーマーに身を包み、バスターを突き出しながらにじり寄ってくるエックスの表情は、例によって威圧感のある笑顔であった。
「今日は楽しいパーティーだ……君の出方次第では、謝罪の弁で水に流してもいいと思うんだけど、どうかな?」
その発言にゼロは思わず首を傾げそうになった。 普段ならキレたら最後、周りの迷惑省みずに、問答無用で攻撃を仕掛けてくる筈だが?
ゼロはエックスの不気味さに内心青ざめた。 温情を感じさせる穏やかな物言いとは裏腹に目が笑っていないのを見るに、実質的に選択の余地は無いと詰め寄られているように思えた。
「ゼ……ゼロさん……」
レイヤーも気圧される中、震える体と喉を抑え、何とかしてゼロに声をかけようと必死で勇気を振り絞る。
当のゼロはエックスと対峙しながらも、彼女に時折目線を送って様子を窺う。 既に相当怒らせているのに加え、初撃をしくじってバスターまで突き付けられている今の状況は、はっきり言って最悪と言わざるを得ない。 ご丁寧に強化パーツにまで身を包んでいるともなれば、最早実質詰んでいると言っても過言ではないだろう。
有利な要素が何もない……ゼロは目を閉じてため息をついた。
「……分かった、俺の負けだ」
どう考えても、まともにやりあって場を丸く収める方法は見いだせなかった。 バスターを突き付け合う中、先に折れたのはゼロの方であった。 観念した様子でバスターをしまい、両手を上げて降参のポーズを取る。
あっさりと負けを認めるゼロに対して、これにはベッドで震えていたレイヤーも目を丸くした。 エックスもまた、ゼロが武器をしまった様子を確認するとバスターを収納する。
お互い長い付き合いと言うだけあって、互いの引き際は弁えているのだろう。 完全に参ったような態度で、ゼロは謝罪の言葉を口にした。
「済まないエックス……お前の名前で入賞するって分かってたら、いっそ『ブルマ』って名前にでもするんだった」
「火に油注いでどうするんですかッ!!」
エックスにとって最もふさわしいと感じた、ブルマの名前を付けなかった詰めの甘さを。
要するにゼロは全く悪びれていない訳だが、全裸にも関わらずレイヤーにとって突っ込みを禁じ得ないようで、身を包んでいた布団から飛び出すように立ち上がった。
「何考えてるんですかゼロさん!! エックスさんに例の言葉は禁句の筈ですよ!!」
「フッ、俺は『大人のおもちゃ』買うのに協力してくれなかったエックスに、わざわざ下げる頭は持ってないぜ!」
「まだその話引っ張ってたんですか!? 完全に逆恨みじゃないですか!!」
謝罪と見せかけて余計に煽りを入れるゼロの態度。 とてもさっきまで報復を恐れていたようには見えなかった。
言いたい事を言いきった開き直りから仁王立ちするゼロを、あられもない姿である事も頭にないレイヤーに大きく肩を揺さぶられる。
頭が上下に大きく振れて、軽く頭痛を覚える程であるが、ゼロは意に介さないとばかりに、謎の自信と共に不敵な笑みを浮かべていた。
そしてレイヤーの揺さぶる手が止まった瞬間であった。 ゼロの目に、腰を落として腕を構えるエックスの姿が目に飛び込んできた。
ゼロには覚えがあった。 だいばくふできたえにきたえぬいた一部の人間のみが習得できる、宇宙を……パワーを……波動そのものを感じられるあの必殺技の構え。
それはゼロにとって衝撃的な瞬間故であろうか、突き出されたバスターでないエックスの両腕から光の弾がこちらに飛んでくるのを、周囲の時間の流れが遅くなったように、ゆっくりに感じられる速度でゼロ目掛けて飛んできた。
――動けない。 知覚だけが先走って、体の反応がついていけないのだろう。 レイヤーに至っては反応さえしきれていないのだろう。 エックスが文字通りの必殺技を放ったことに気付いてさえいない。
光の弾が迫りくる中、それを中心に次第にゼロの目に幻覚が浮かび上がる。
ケツアゴ隊長を袋叩きにした事、ケイン博士のBONSAIにいたづらしてソバットをお見舞いされた事、人生で何度も胴体が泣き別れした事、カメリーオに貰ったパンツを天に掲げた事……今までの人生の中で体験したハイライトシーンが、走馬燈のようにゼロの脳裏をよぎる。
そして、エックスの腕から放たれたたましいの力が、堂々とした佇まいのゼロの股間に突き刺さった瞬間をもって終わりを告げた。
時間の流れが元に戻り、遅れてやって来たエックスの声が部屋中に響く。
「 波 動 拳 ! ! 」
あらゆる元特A級ハンターを屠ってきた圧倒的破壊力を前に、ゼロは股間を潰されながら体をくの字に曲げ、窓の割れたベランダ目掛けてすっ飛んでいった。
<あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!>
<いけない! エックスさんの波動拳がゼロさんのきんた〇にッ!! ――――ブツン>
……会場のスピーカーから伝わる、ゼロとレイヤーの叫び声と共にマイクの電源が落ちたのか、何かが途切れるような音を最後に場が沈黙した。
アクセルの嫌な予感はまたも的中した。 エックスに制裁と言う名の恐ろしい報復を受ける様子が、音を通して全てが伝わってきた。
流石に映像までは伝わらなかったが、イレギュラーハンター組からしてみれば、現場が一体どういう状況だったかは察して余りあるものがあった。 構わずにパーティーを楽しんで欲しいとは何だったのだろうか。
――――ホタルニクス博士はずっと身を震わせていた。 マイクを握ったまま項垂れ、ただの一言も言葉を発しない。
断罪の瞬間がスピーカーを通して伝わるまでは、場の雰囲気を和ませようと面白可笑しいトークを繰り広げていた彼の沈黙が余りに痛々しい。
「儂はそもそも、兵器として使われる可能性を考えて、今回の衛星の開発に関わるのは反対だったんじゃ」
そんな中、更に重苦しくなった会場の沈黙を破るように、ホタルニクス博士が語り始めた。
「しかし必ず平和利用すると言う企画者の三顧の礼を持った説得や、スタッフの誠意と情熱あってやっと協力しようと言う気になったのじゃ……それがなんじゃッ!?」
感情を堪えていたのだろうか……震え声で語るホタルニクス博士が、目を見開くと同時に言葉を荒げた。
「一般公募の中からわざわざふざけた名前なんぞノミネートしおってッ!! 儂が平和の為に使われる事を願って一生懸命作った衛星に『きんた〇』じゃとッ!? しかもなんじゃこの騒ぎは!! 人が必死で話を流そうとしとる所にゼロの『きんた〇』潰したじゃとぉッ!? お陰でもうこの衛星の形が『ナニ』にしか見えんようになったではないかッ!!」
……最後については作った自分で言うなよとアクセルは思ったが、しかし彼なりに信念があって取り組んだ故の成果に、このような下品なネーミングをつける……どちらかと言えば、これについては選んだスタッフが軽率だったと言わざるを得ないが、とにかくアクセルは慟哭ともとれる叫びを上げるホタルニクス博士に、同情を禁じ得ない思いであった。
この瞬間までは。
ひとしきり大声で身の周りの人物を罵倒しつくし、肩で息をするホタルニクス博士。 楽し気なムードなど欠片も残らない破綻したパーティーの空気に、悪ふざけに加担していない人物までもが申し訳なさそうな表情を取り、いたたまれない空気が会場を支配する中――――。
「……貴様ら、そんなに『きんた〇』が見たいか……?」
「えっ?」
――――不意に、ホタルニクス博士の口から不穏な言葉が飛び出した。 何を言い出すんだと思わず口に出しそうになったアクセルだが、次の瞬間!
「そんなに見たけりゃ儂のを見るのじゃああああああああああッ!!!!」
なんとホタルニクス博士が腕を後頭部に組み、両足をMの字に大きく開いて股間を突き出したではないか!
そして突き出された尾の部分が、当たり前のように格納庫のシャッターさながらに開き、中から飛び出すは黄金色に輝く何かであった!
「きゃああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
「ほ、ホタルニクス博士ぇッ!? しっかりして下さいッ!!」
ご立派様を目の当たりにした、イレギュラーハンターがオペレーター達の悲鳴を皮切りに、たちまち会場は大混乱に陥った!
恍惚とした表情で股間を晒す博士を、まじまじと見つめる一部の手合いを除き、大多数の人間やレプリロイドが我先に会場から一斉に逃げ出そうとする!
一部の人間は足がもつれて転倒し、将棋倒しになった挙句に後ろから絶え間なく押し寄せる人間に踏まれたり、出口で揉み合いになって挟まれ窒息する人が出るなど大惨事になってしまった!
パーティが始まって以来、壇上を向いていた報道陣も驚きを隠せず、突如訪れた重大な放送事故を前に、慌ててビデオカメラの電源を落とす……事も無く、加えて新聞記者のカメラからは、ホタルニクス博士の股間の輝きに負けないフラッシュの嵐が吹き荒れていた! 正に絶好のシャッターチャンス!
「ほ~れ、儂のきんた〇を見てくれ! こいつをどう思う!?」
「博士!! 何してるんですか!? やめて下さいよホントに!!」
我に返った司会が、舞台の奥に引っ込んでいたスタッフ数名と一緒に、乱心するホタルニクス博士を取り押さえた!
「誰も好き好んで見ませんよ!! その物騒なのをしまって下さい!!」
「ウソつけ! ぜってぇ見てたぞ!? 儂のきんた〇見るのじゃああああッ!! 時代の波に乗り遅れるぞぃ!! ほれほれ^~」
スタッフらの制止を振り切りながら、自分を解放するホタルニクス博士。
周りが混乱する中、何とか正気を取り戻して避難誘導に取り組むイレギュラーハンター組の中でただ一人、アクセルは茫然と舞台を見つめていた。
……どうしていつもこうなるの? 同僚のたった一つのいたずらの為に、総崩れになる光景をむざむざと見せつけられ、アクセルはこの世の儚さを呪わずにはいられなかった。
狂気に陥るホタルニクス博士がまるで、発露したい自分の本心を物語っているようで……しかし一思いに自分自身も狂えない現実に、胸と腹部の間辺りが疼くような気分を覚えた。
ああ、そう言えばレプリロイドだって胃が痛む事があるんだっけ。 アクセルは無心にパレットを通して貰った胃薬の蓋を開け、ケースを掲げてありったけのタブレットを、上を向いて大きく開けた口の中に放り込んだ!
口の中がミントの香りで一杯になる――――。
「ッ!! だめよアクセル!?」
混乱のさなか、胃薬をありったけ呑み込むアクセルに気付いたエイリアが慌てて止めに入った。 が、時すでに遅し。
「その胃薬『発泡性』なの!!」
「!? ……ヴォエッ!」
エイリアの声に気付いて振り向いた瞬間だった。 アクセルの口から胃薬の泡が噴出する! これにはエイリアもたじろいた。
膝をつき、次々に発泡するタブレットの泡を絨毯の上にぶちまけるアクセルの様子は、さながらビールサーバーのように思えた。 さっき口に入れた時はこんな事にならなかったのに、何故?
「ヴォエッ!! ゴボボーッ!! な"、な"に"こ"れ"……!」
「あの、ね……一旦発泡が始まってから、立て続けに呑んじゃダメなの……よ……」
たじろきながらも、アクセルが落とした胃薬のパッケージを指さすエイリア。 腹部を抑えて絨毯の上にうずくまるアクセルが、最後の力を振り絞ってすぐ側を転がるパッケージを見てみる。
『注意! 当薬は時間差で発泡します、飲み過ぎないでください! なお、一度発泡が始まってから立て続けに服用するのは絶対にお止めください! 口に入れた分まで一気に発泡します!』
胃薬で胃を壊してりゃ世話無いと……そこまで考えた所で、アクセルは乾いた笑いを浮かべつつ意識を手放した。
この後、アクセルは結局バックれる先だった医務室に、正当なる理由で運び込まれてしまい……それからしばしの後、落ち着きを取り戻した会場では、素面に戻ったホタルニクス博士の謝罪会見が始まる事になる。
かくしてホタルニクス博士の、新しい時代への願いを込めた新型衛星は、与えられた「きんた〇」の名称と博士自身の輝ける股間のツーショットと共に、最悪のデビューを飾る事になってしまった。
きんた〇みたけりゃワシのを見ろ!! は我ながらパワーワードだと思う。