〇ゴールデンボール〇 ロックマンZAX2 作:Easatoshi
そして話自体はまだ序盤。 途中の展開やオチまで決まってるとは言え、最終的に何話まで膨れ上がるやらw
気を取り直して本編開始です。 それではどうぞ!
「フッ、俺はもう昨日までの俺とは違うぜ」
不敵に笑い、ゼロはガラスにもたれ掛かりながら、紙コップのブラックコーヒーを口に含んだ。
ハンターベース中に響く大音量でエックス達が叫んでから数時間後、今まで溜め込んだ仕事を全て片づけて休憩スペースにやって来た頃には、ガラス越しに見えるビル群に夕日が沈み始めていた。
今日集まったこの休憩スペースは、先刻ダグラスが休憩を取りに行った、加えてつい1か月と少し前……エックスと揉め事を起こしてあの事件の引き金を引いた場所である。
夜勤以外の者が終業時刻を迎えるとあって、この区画にいるものはエックスとアクセル、そしてゼロの3人以外は誰もいない。
「……本当に別人みたいになったんだな」
「僕今でも信じられないくらいだよ」
エックスとアクセルも紙コップをもって、2人してベージュのソファーに腰かける。
エックスもコーヒーを……ミルクと砂糖入りだが、アクセルはLサイズのコーラを飲んでいる。 これまた信じがたい話だが、ゼロのおごりである……発表会での騒ぎの、ささやかな侘びも兼ねて。
2人の知るゼロは、やるべき時こそ唯一無二の働きを見せるタイプではあるものの、それ以外はメタクソかつ行き当たりばったりで無茶をすると言う、どちらの意味でも名は体を表すような体たらくであった。
それだけに今の彼は、普段からは到底考えられない思慮深さを感じさせる。 ひょっとしたらエックスにとってのイクスがいたように、ゼロに似てるようで似ていないロゼとかいうバッタモンかとも勘ぐったが、口に出す前に看過されてはきっぱりと否定された。
なお、仕事中いやに丁寧だった口調については、エックスとアクセルからの要望で普段通りにしているが。
「まあ、アレな一面が鳴りを潜めてくれたのなら、何も言う事はないな」
「そうだよ。 何て言うかようやく真人間……もとい真レプリにでもなったっていうのかな?」
「全くだ。 俺自身、活力がみなぎってきて何もかもが生まれ変わった気分だ……まるで失われていた何かを取り戻したような」
見直したようなエックスとアクセルの口ぶりに、ゼロは微笑んで窓の外をに目をやる。 赤々とした夕焼けが、彼の真紅のボディを鮮やかに照らす。
一体このたった1日の間に何があったのか、エックスやアクセルの知る所ではないが、少なくとも好ましい変化をもたらしたのは事実だろう。
今はただ、自信と活力に溢れ、蘇ったような仲間を祝福するかのような太陽の光が眩しく思えた。
そしてビルの陰に挟まれながら沈みゆく日輪が、ゼロの股間にそびえ立つキマシタワーに重なった時――――。
「股間んんんんんんッ!?」
アクセルは口に含んだ、残り最後の1口分のコーラを盛大にぶちまけた!
飛び散ったコーラの飛沫が赤い日の光に反射され、思わず身を庇ったゼロの股間に虹の輪が縁どられた。
「アクセル……お前な」
「ア、アクセル! 一体どうしたん――――」
地面に膝をつきながら、喉を抑えてむせ返るアクセルを介抱するエックス。
アクセルは項垂れ苦しそうに咳き込みながら、震える指先をゼロの股間に向けると、エックスもつられてそちらを振り返った。
「――――は?」
片手に持っていた残り僅かな、飲みかけのミルクコーヒーの入った紙コップをつい反射的に握りつぶし、紙ごみと化したコップから噴出しては彼ら2人の上に降り注ぐ。
「2人共、何をそんなに驚いてる?」
「ゼ、ゼロ……その股間は何だ?」
目を点にしながら問いかけるエックス。 視線はゼロの黄色い頂点を持つ白いテントに注がれている。
「ん? ……ああ、コレか」
「な、何でそんなビンビンなの……? エックスに潰されて直らなくなったんじゃなかったの?」
レプリロイドに気管支があるかはさて置き、呼吸を整えて喉の疼きを押さえ込むと、アクセルがやっとの思いで疑問を口にした。
直らなくなるほどの損傷を受けたからこそ、妖怪と化して他人のきんた〇を刈り取っていた筈だと言うのに。
率直な疑問を投げかけられたゼロは、腰に手を当てて自慢げに答えた。
「新しいモノに取り換えたからだ!」
胸を、もとい腰を突き出しながら鼻息を鳴らすゼロ。
「あ、ああ……」
「……えっと」
なんのこっちゃ、と言うのが2人の率直な感情だった。
確かに放置してて直らないなら、部品ごと交換するのが一番だ。 男の証がレプリロイドに必要かはさて置き、特におかしい答えには聞こえなかったが。
しかし、そうなると新たな疑問が……。
「何を、修理に使ったんだ……?」
ゼロのいきり立つバスター等間近で見る気もしないが、アレを失う前の事を考えても、いやに大きすぎるとエックスは感じる。
第一修理に必要なパーツは全て、ダグラス達開発部に押さえておいてもらっている筈。
腑に落ちない思いをしている中、対してゼロは得意げな顔のまま、続けて質問に答えた。
「「またその話かああああああああああああああああああああああああッ!!!!」」
エックスとアクセル2人の叫び声が休憩スペースはおろか、ガラス張りの廊下にさえ反響した。
どうやらゼロは失った何かを、よりによって騒動の発端となった『大人のおもちゃ』で代替していたようだ。
「何てもの組み込んでるの!? 信じらんないよもう!!」
「おかしな事を、あの大きさにあの形……俺のバスターの代わりを務め、いや……かつてのバスター以上のご立派様だ!」
「ご立派様って……いや、股間に仕込むような奴なんかそらそう言うモノなんだけどな……だけどな!?」
「何が悪い!」
「「 全 部 だ ッ ! ! 」」
悪びれもせず、さも当然のように言ってのけるゼロ。 しかし2人が文句を言いたいのは、堂々といかがわしい物を修理に使ったと公言するゼロの図太さにあった。
もちろん尋ねたのはエックス達自身ではあるが、それにしてもどうしてゼロが……ゾンビのような状態から復活を遂げたのか、これで全てが納得いった。
要するに、回りに回って元の話に戻ってきただけの事だった訳だ。
むしろ元よりも立派なものがついて自信家になっただけで、本質的には何一つ変わっていない事実に、エックスはしかめっ面で目頭を押さえた。
「付き合いきれんな……さてと」
衝撃に打ち震えるエックスとアクセルの2人。
ゼロは自分から見て正面の壁際にある、自販機横のゴミ箱に紙コップを軽く放り投げ、難なくホールインワンを決める。
すると窓際から離れ、仲間達に背を向けて廊下を歩いていく。
「ちょっとゼロ、どこ行くの!?」
まだ話は終わっていない、と言わんばかりのアクセルの問いかけに、ゼロは右から小さく振り向くと、左腕を胸の前へ出すように拳を差し出した。
その指の形は握り拳をかたどっていたが、なんと親指を人差し指と中指の間に通しているではないか!
「昼間女隊員3人にお誘いを貰ったからな、そらもうアレだ!」
「ッ!! ま、まさか……!!」
どうやら、新しいバスターの威力を試そうとしているらしい。 開いた口が塞がらないアクセルをさておいて、試し撃ちに意気込むゼロ。
「だめだよゼロ!? いくらなんでもちょっかいだし過ぎたら――」
「フッ、英雄色を好むってやつだ」
「自分を英雄って名乗った覚えはないんじゃなかったの!? ……ああもう、エックスも何か言ってよッ!!」
ご自慢のバスターに突き動かされるゼロを見かねるも、自力ではどうしようもないアクセルは隣にいるエックスに救いの手を求める。
しかし、エックスは先程から目頭を押さえたまま、ほだされる赤いハンターに対して一言も発しない。
「疲れた」
「え"ッ!?」
介入を求めるアクセルの願いとは裏腹に、エックスは乗り気ではなかった。 それどころか額をさするような仕草さえ見せて、どこか疲れたような顔をしている。
「ダグラスが参ってた理由も嫌と言うほど分かった……少し頭痛くなってきたよ」
「そ、そんな!?」
どうやら彼もまた毒気にあてられた1人らしい。 突き放されてショックを受けるアクセルを尻目に、エックスはゼロの向かう方とはと反対方向の廊下に振り向いた。
「ゼロ……君がどう思って動こうが勝手だけど、ほどほどにね」
エックスは疲れた背中をさらしながら、振り返る事なく言葉を残していった。
本来ならばおいたが過ぎると言って『諫める』ぐらいはしたが、疲れ果てた今の彼にゼロの好色っぷりを止める意思は働かない。 しかしやり過ぎて騒ぎにはならないよう、一応は釘を刺しておく。
「任せておけ、俺のハイパーZEROバスターはいつもよりビンビンだぜ!」
エックスの含蓄のある言い回しが、とても伝わったように思えない言動と共に……白い歯を光らせ、加えていつものよりもグレードアップした名称にふさわしい、かつてのホタルニクスのようにご立派なバスターの先端が黄金色に輝いていた。
「って!! ナニそれ!? 光るギミックとかあんの!?」
「ん? うわ、マジで光ってやがるッ!! ……実にいいじゃねぇか」
日輪の輝きが重なったのでなく、何とひとりでに光っているではないか!
が、ゼロ自身はアクセルの驚愕の声に反応した直後こそ慌てて股間を凝視するも、満更でもないどころかむしろお気に召したようだった。
どうやら本人も知らない機能があったらしいが……あまりに姿形さえ想像しがたいゼロの『大人のおもちゃ』に、アクセルも次第に反論する気力を失っていく。
いつもより活力あふれるゼロに対し、覇気を失ったエックスとアクセル。 ひょっとしてゼロの『大人のおもちゃ』には相手の気力を吸い上げる力でもあるのだろうか?
さておいて、ゼロは指と指の間に差し込んでいた親指をおったてると、すっかりご満悦なった様子で口元を吊り上げる。
そして棒立ちになるアクセルを置いて、期待に胸躍らせるように意気揚々とこの場を去ろうとした。
……どうすりゃいいんだ。
ショッキングな瞬間が立て続けに訪れ、辟易するアクセル。
青と赤の仲間達が道を違え、各々が反対の廊下を歩いていく中、アクセルはただ狼狽し何もできずにいる。
――――その時であった。
何の前触れも無く、ハンターベース全階に緊急警報が発令された!!
辺り一面が、夕焼けのものとは違う無機質な赤いサイレンの光に満ち溢れ、これには3人も一斉に反応する。
「ッ何だ!? 何が起きた!?」
3人の中で最初に言葉を発したのはエックスだった。 ついさっきまでの気疲れは見られなくなっている。
そんな彼らの元に、無線連絡の着信音が鳴る。 3人は再び休憩スペースに戻り、アクセルを中心に集まっては通信を繋いた。
<エックス、ゼロ、アクセル、緊急事態よッ!>
相手はエイリアだった。 エックスの腕から浮かび上がる、ホログラム映像越しに見える彼女は大慌てで……それでいて、言い淀むようなしぐさで言葉を続ける。
「どうしたエイリア、続けてくれ――――」
<きん……ああもう!! そうじゃなくって、新型衛星のレーザー兵器が突然起動したわッ!?>
「「「ファッ!?」」」
……流石に女の口からきんた〇と口に出すのは憚られたらしい。
それよりも、エイリアから告げられた青天の霹靂とも言える、3人は異口同音に驚愕の声を上げた。
束の間を置き、エックスとアクセルは未だ自己主張するゼロのテントを注視する。
……白い目で。
「ゼロ……まさか君が女の子を食い散らかそうとしたから……!!」
「あれはアンタが名付けた『きんた〇』だし、ひょっとしてゼロがその気になったせいじゃないの!?」
「関係ねぇだろ!! 名前つけただけで自前のバスターと連動するかッ!?」
タイミングが重なっただけでこの言われよう。 ほとんど言いがかりに近い2人の物言いにゼロは憤慨する。
この期に及んでみっともなく言い合う彼ら3人に、見かねたエイリアが苛立ちまぎれに叱咤する。
<いいから早く作戦指令室に来てッ!! ……えっ!? 衛星の攻撃目標はハンターベースッ!?>
「「「何ぃぃぃぃぃぃぃぃッ!?」」」
催促しながらも応対をつづける彼女の口から、更に衝撃的な内容がカミングアウトされる。
ゼロの復活のハンターならぬバスターから、立て続けにショッキングな出来事が起きすぎている。
休む間もなく畳みかけてくる出来事に、アクセルは乱暴に頭を掻きむしっては悪態をつく。
「ああもう!! 今日はなんて日なの!?」
「クソッ! 俺のホットな一時を邪魔しやがって……どこのどいつだ!?」
「とにかく今は指令室に急ごう!! あとゼロのアレも後でもいでおこうッ!」
「えっ?」
通信を切ったエックスのさりげない死刑宣告に一瞬ゼロは固まりかけるが、気を取り直すと3人は休憩スペースを後にした。