IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 ○月△日 なんとなく曇り

 

 

 今日は何かと忙しい1日だった。

 ことの始まりはおよそ1月半前。女性にしか動かせないことで有名な超ハイスペック宇宙服、インフィニット・ストラトス(以後IS)を起動させた世界初の男性(名前は忘れた)が登場した。

 10年前の『白騎士事件』以降世間の注目と言っても、まるで過言ではないIS。それを男性が動かしたとあって、世界は一時騒然としたのだ。

 ……や、『した』ってのは語弊があるか。現在進行形で『している』ってのが正しい。

 

 まー中3の俺には難しい事なんぞ分からないが、とにかく色々と大変なことらしいのだ。

 そして。その彼の存在が驚くべきスピードで世に浸透し、次に各国のお偉いさん方が考えたこととは。

 搔い摘んで言えば、『1人居たなら他にも居るのでは?』って具合。いや、びっくりするほど捻りがない……捻ってどうしろと言えなくもないけど。

 そして始まったのが男性のIS適性一斉調査。都心部から地方の順番に、方々でそんなことを大々的に行ったのだ。

 当然世の男性諸君は奮って参加した。宇宙服っても実際は殆どロボットだし、ロボットは男のロマンだし。

 何よりISを動かせれば、この女尊男卑の世の中でも大手を振って歩ける。……俺としては、あんまり気乗りしないんだが。

 

 俺の地元はどっちかと言えば田舎の方だから、一斉調査の役員さん方が来たのは調査開始から1月半が経った頃。高校受験の結果発表とか卒業準備とかで1番忙しい時に来た。迷惑極まりない。

 同級生たちは凄く張り切っていたが、張り切ってどうにかなるのなら今頃世界は男性適性者だらけだろう。何せこの1月半の間、世界各国で調査が行われているにも拘らず、最初の1人を除けば成果は全くのゼロなのだから。

 そんな内心での意見はともかく、粛々と調査は進む。調査っても、停止状態のISに軽く触るってだけだし。騒ぎようもない。

 相変わらず男性の適性者は発見されなかった。地団太踏んで悔しがってる奴も居たが、とにかくゼロ。

 わざわざこんな所まで来た調査役員の方々も辟易していることだろう。調査期間はもう半月ほど残っているが、このままではその全てが無駄になるのだから。

 

 そしてとうとう俺の番になった。最後尾でだらだらスマホを弄くっていたんだが、意外に早かったな。

 役員のお姉さんが若干疲れた声音で、眼前のISに触るよう指示する。

 これでも忙しいのだ。さっさと終わらせて進学の準備に移るとしよう。

 そんなことを思いつつ、無造作に指先だけISの装甲板にちょんと触れさせた。

 

 そしたら、IS――ラファール・リヴァイブに関する情報が、脳内に直接流れ込んできて。

 気付いたら、それを身に纏っていて。

 その僅か2分後には、TVの全チャンネルの画面が切り替わって臨時ニュースが放映されていた。

 

 

『世界で2人目の男性IS適性者、日本の○○県△△市で発見!!』

 

 

 一体いつ撮られたのか、ラファールを纏う俺の姿がTV画面一杯に映る光景を見て。

 俺は思った。

 

 高校受験……頑張って受かったのが無駄になりそうだ、と。

 

 

 

 

 

 ○月□日 取り敢えず曇り

 

 

 家によく分からん連中が押し掛けてきた。

 取材がどうとかのマスコミ。

 俺に通じない日本語を話す宗教関係の方々。

 や、これはまだいい。ぶっちゃけ良くないけど、いい。

 

 『君の身体を解剖研究させてくれ』とか、お前それこっちがはいって言うのかと本気で思ってんのかってぐらいストレートに要求してきた研究員にはビビった。

 当たり前だが、全員追い返した。

 

 

 

 

 

 ○月☆日 とにかく曇り

 

 

 IS学園ってとこから通知が来た。

 俺と言う存在を保護する意味合いも含め、学園へと入学させるうんぬんかんぬん。

 小難しいことが長々書いてあったが、要約するとそう言うことらしい。

 ご丁寧なことに制服まで送ってきていた。ついでに『必読』とか書かれた、電話帳と間違えて捨てたくなるサイズの参考書も。

 

 正直勘弁して欲しい。俺、偏差値58なんだけど。

 

 

 

 

 

 ○月×日 気分的に曇り

 

 

 いよいよIS学園へと赴く日となった。

 なんか政府から初日より寮生活になるって聞かされたので、キャリーバックを携えて。

 俺、荷物少ないなオイ。私物殆ど纏めてこれか。

 向こう行っても、日記は続けようと思う。どうせスマホでポチポチやってるだけだしね。

 参考書を頭に詰め込むのは大変だった。俺の場合、元々の頭の出来と調査開始からかなり経ってて時間的余裕がなかったってダブルパンチで。

 

 両親と兄の見送りを受け、いざ出発。

 目指せ、IS学園。

 

 ……正直、あんま行きたくないけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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