◎月→日 いい加減ネタが尽きてきた、だが曇り
夏風邪を引いてぶっ倒れた。
流石に毎日毎日ハードワークのオーバーワークが過ぎたらしい。
夏休みに入って2週間ちょい、ロクに休んでもいなかったから当然っちゃ当然なんだが。
ついでに言えば、結構な筋肉痛も患っている。
体力が低下している状態ということもあり、ベッドから起き上がることも満足にできやしない。
いつに無くぐったりした様子の俺を見て、更識にも心配をかけてしまった。
……こんな時になんだが、いつまで俺達は同室なのか。
オスカルが女だと発覚してすぐ、織斑は部屋換えで1人なった筈なんだが。
俺の所為で専用機完成を遅らせるのは忍びなかったので、おろおろしている更識を送り出す。
今現在の進み具合なら、上手くすれば2学期の頭に最初の稼動試験やれそうなのだから、さっさと行って来いと。
まあ、風邪うつすのも悪かったし、半ば無理矢理追い出した。
しかし夏風邪は馬鹿しか引かないと聞いたが、となると俺は馬鹿なのだろうか。
勘弁して欲しい。確かに利口な方だと思ったことは無いが、だからって馬鹿でもないと思いたい。
これでも偏差値58なんだぞ。あ、違う、最近60に上がったんだ。
IS学園のレベル高い授業に食らいついた結果だな。うむ。
ベッドで横になり、くてっとしていたら。
やけにこそこそした様子で、会長さんがやってきた。
妹の更識と気まずい仲らしいってのに、その妹と部屋が同じの俺のところに来るとは。
人を食ったような性格の人だが……や、なんだかんだで優しい御仁だとは理解してるけど。
更識のことになると少々暴走したり、ダメな人になったりもするが。多分この人と更識の中が拗れているのも、大方会長さんがあいつを心配するあまり余計なことでも言ったんだろう。
難儀な人だなーと思っていたら、急に――
◎月~日 曇れ
先日はアレだった。日記が途中で終わってしまった。
病人は大人しくしていなさいと、会長さんにスマホを取り上げられてしまったのだ。
あの後更識が戻って来るまで看病して貰ったお陰で、身体の方は大分回復した。
しっかり回復させておけという御達しで、今日も訓練は休みだが。
……しかし。あの人更識が戻ってくることを鋭敏に察知していたけど、どうやっているのだろう。
まさか彼女、忍者か何かじゃなかろうか。手裏剣似合いそうだしね。
自分が居た痕跡を髪の毛1本残さない辺り、どちらかと言えば暗殺者かストーカーの類かも知れないが。
だがまあ、2人分のお粥を食べるのは少し辛かった。
会長さんが作ってくれたのを食べたんだが、それを知らない更識も作ってくれたのだ。
けれど折角の品。死んでも残す訳には行かなかったので、掻き込むように平らげた。
これも男の甲斐性だ。女が作ってくれた物は絶対残すなとは、兄貴の言葉である。
や、味は旨かった。姉妹揃って作ったのが卵粥だったところに、少し笑った。
味付けはそれぞれ微妙に違ったけど。
◎月#日
2日間休んだので、完全回復なのである。
むしろずっとアレだった筋肉痛とか治ったから、前よりも良くなったかも知れない。
シューター・フロー。
そして
他にも合わせ技とか小技がチマチマあるけど、取り敢えず俺がこなせる主な
ISに搭乗して高々数ヶ月でこれだけの機動を、しかも専用の調整をしておらず高い稼働率を引き出し難い訓練機でこなせる輩はそう居ないと、会長さんから褒められてしまった。
まあ武器の扱いがお粗末な分、これぐらいは出来なければ。
そしてその武器の方だが、何とかライフルもマシンガンも最低限武器として扱えるレベルには持ってこれた。
織斑の戦闘ログを見る限り、遠距離武器の技術は現在の俺以下。
遠距離戦ならこれで俺に分が出来ると言うわけだ。
しかし。奴さんは俺では使用不可能な機動技術を、ひとつだけ持っている。
そのスラスターを段階的に使うことで、通常の瞬時加速よりも更に速い加速が可能になっている訳だ。
つまり、ラファール・リヴァイブでは逆立ちしても使えない。こればかりは機体性能の差で、仕方ない。
……それとアメリカの『ファング・クエイク』同様、スペック上は
アメリカ代表のイーリス・コーリングだって成功率は5割に満たないらしい特A難度の大技だから、まず不可能。懸念から外して良し。
まあ要するに何が言いたいかと言えば、スピードは向こうが上だから、どうあっても近接戦は避けられないってことな。
その為にも早い所、『コレ』の扱いに慣れなければ。
俺のネックである展開速度の遅さも、既に解決策は投じてある。
と言っても、彼女からすれば勝って欲しいのは織斑の方か。皮肉なもんだ。
だが、俺としても今回ばかりは負けられない。クラス代表決定戦と学年別対抗タッグトーナメントではどちらも呆気なく敗退したが、今度はそうは行かない。
それに……手を貸してくれた更識と会長さんにも、顔向けできないし。
織斑との試合まで、あと2週間。それまでに、俺の技量を持って行ける所まで持って行く。