IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 4月○日 晴れてるけど曇り その1

 

 

 もしかして 来世と言うのが あるならば 私はきっと 貝になりたい

 

 

 突然詩なんか詠んでみたが、冗談ではなくマジでそう思っている。

 右を見ても、左を見ても女子だらけ。

 正面少し離れた位置には1人だけ男子が居るけど、んなもん焼け石に水である。

 

 幸い視線は殆ど前方の奴に向いている。教室入る時にチラッとだけ顔を見たが、まあびっくりするようなイケメン君だったし。

 俺は……まー悪くはないけど突出してる程でもない程度? 中の上から上の下の間? 中の上の上ってか中の特上……意味分かんなくなってきた。

 とにかく視線はほぼあっちが引き受けてくれてこそいるが、それでも女子率9割以上の空間に居るのは辛いものがある。この状況を楽しめる猛者が居ると言うのなら、是非変わって欲しい。俺のIS適性あげるから。

 

 そうこうしている内に、教師と思しき女性が教室へと入ってきた。

 第1印象は、小さい。

 第2印象は、でかい。

 ロリ巨乳と言う存在を初めて目にした瞬間だった。

 女性の名は山田真耶。この1年1組の副担任らしい。

 ……しかしながら。女生徒達はイケメン君が気になって仕方ないのか、山田先生の挨拶にも上の空。

 微妙な空気で泣きそうになってるし。もう困り果てて、生徒に自己紹介させてお茶濁そうとしているし。

 クラスメイト達も流石に憐れんだのか、素直に自己紹介を始めた。

 

 五十音順に自己紹介は進み、とうとう件の男子生徒の番が回ってくる。

 ちなみに今は『お』、俺は『と』なのでまだ少し先である。

 だが彼はどうにも俺以上に居心地の悪さを感じているらしく、先生の声が届いていない様子。

 このままでは恥をかかせてしまうので、消しゴムの欠片を弾き飛ばして助け船を出した。

 ……何故かとても痛がっている。よく見れば、間違えて画鋲を飛ばしてしまった。

 画鋲が後頭部に刺されば、そりゃ痛いだろう。

 

 何はともあれ自己紹介。

 俺より先にISを動かした男子生徒の名は、織斑一夏と言うらしい。

 どっかで聞いた名字だが、思い出せないので多分知り合いじゃないと思う。

 しかしながら、明らかにこれは拷問だ。多数の女生徒を前に自己紹介とか死ねる。

 織斑も同意見なのか、期待の眼差しを浴びせられる中、しばし固まった後に早口で「以上です!」と強引にぶった切った。

 

 直後、織斑はいつの間にか居た教員らしき女性に出席簿で脳天を引っ叩かれる。

 あれは痛い。だって殴った音がハンマーかなんかのそれだったし。

 「お前は自己紹介もまともにできないのか」とか、あんな状況下で堂々と自己紹介できるような奴はそれだけで尊敬ものだと言うのに。

 そしてどうやら、織斑と女性……ここの担任である織斑千冬先生は御家族らしい。彼は知らなかったぽいが。

 てか、担任と生徒が同じクラスってあり得るのか? 双子でさえクラス別々にされるのに。

 考えても仕方ないので、考えないことにした。

 

 そして思い出した。

 織斑千冬と言えば、第1回モンド・グロッソの優勝者。

 ブリュンヒルデの称号を持つ、云わば世界最強の御方ではないか。

 挨拶の際は凄い人気だった。周りからの悲鳴にも似た歓声で、もう耳がキーンてした。

 

 あと、時間が中途半端だったので俺の自己紹介はスキップされた。

 心底ほっとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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