☆月&日 晴れ
このスマホでまた日記がつけられるなんて、正直思っていなかった。
俺は今、IS学園に居る。引き続きこの学園で学ぶことが出来るようになったのだ。
それもこれも、会長さんのお陰だった。
あの人が根回ししてくれた結果、俺が研究材料として使われる可能性はほぼ消えたと言っていい。
救出後、一旦はIS学園まで戻った俺だったが、やはりすぐにでも施設へ再護送される手筈となっていた。
だが、それに待ったをかけたのが会長さんで。
彼女は俺が再び施設へ連れて行かれる前に、とある策を弄したのだ。
会長さんは俺の学園入学以来からのIS搭乗ログを掻き集め、ロシア本国に提出。
ロシア政府は俺の機動技術と成長速度を有用だと認め、現代表からの強い推薦もあり、とある地位を俺に用意した。
ロシア代表候補生。俺こと藤堂隆景には今、そんな肩書きがくっついている。
要するに俺はIS操縦者としての帰属国家を得て、国に庇護される存在となったのだ。
これで俺に対し非人道的な措置をとれば、ロシアが敵に回る。
それを恐れた各国が、俺を研究所送りにするという採決を続々取り下げ、IS学園に外部干渉する条件である『加盟国過半数の賛成』が瓦解。
委員会も俺に手出しできなくなり、再び学園に通えるようになった。
学園に戻った俺を、皆は幽霊でも見たかのように驚いた。
山田先生と更識は寧ろ号泣してしまって、宥めるのに苦労したけど。
でも、先生と更識が、泣きながら俺に縋り付いてくる中。
俺は……戻って来れたのだと、そう思った。
☆月!日 ……ん、やっぱ曇りだな
ひと事件あった後だと、自室の風景もなんだか大切な物に思えてくる今日この頃。
俺を取り巻く状況……と言うのも、多少変わってきたと思う。
まず更識。朝起きたら、まず俺の手を1度きゅっと握るようになった。
まるでそこに居ることを確かめるように。別にもう居なくならないって。
山田先生だが、以前よりも更に熱心に勉強や実技を教えてくれる。
きっと俺が今の地位を確立し、国というバックボーンを失うことが無いようにとの計らいだろう。
正直ありがたい。先生の教えは非常に分かり易く効率的だし、何よりこの人は多分IS学園の中で最も俺と波長が合う。
才人は皆恩師に恵まれたとは言うが、まさにそれだ。
この人が1組の副担任であったことは、きっと俺にとってまたとない幸運だったのだと思う。
そして会長さん……名前……名前、確か『た』で始まったのは覚えてるんだが。
とにかく会長さんも、何かと俺を気にかけてくれている。
学生としてだけではなく、IS操縦者、ひいては国家代表としての先達と、改めて考えればこの学園で最も接点の多くなったこの人は、俺の人生の恩人だ。
借りが大き過ぎて、一生かけても返せそうにない。なんとお礼を言えばいいかさえ分からない。
せめて少しでも恩返しをするべく、生徒会に入ることにした。
と言っても、放課後の自主補習や更識の手伝いなどもあるので、精々簡単なことしか今はできないが。
☆月◎日 りもく(右読み)
会長さんから代表候補生としての権利、義務などについて教わる。
一応その辺は授業でも一通りやっているので大半は知っていることだったが、やはり細かい部分は抜けがあったり初耳だったりもしたので、大変勉強になる。
それと、代表候補生という肩書きを得た俺ではあるが、その目的は国の庇護を得ることがメインであった為、少々強引に押し込んだ形が強い。
なので本国のISコアに予備機が無く、当面の間は今と変わらず訓練機を使うらしい。
まあ俺としては専用機などあまり興味はないし、こうして学園に通えるだけでもロシア万々歳なので、何も異論など無いけど。
そもそも早い内からスペックの高い専用機など使ってしまえば、それを自分の実力と勘違いしてしまうから寧ろ訓練機で技術を磨きたい。
ただ、既に俺の搭乗データを元に専用機の図面は引き始めているらしい。完成はコアが空いていないこともあって未定だが、会長さんの話だとコンセプトは高機動重視のレースタイプとのこと。
……ちょっと乗ってみたいと思った。
あと更識の機体が、どうにもスラスター関係だけ進みが異様に早い気がする。
これって俺のデータがメインだから? でも車だって1番大事なのは足回りなんだから、ISだってスラスターが重要な筈だ。
武装データが欲しい……荷電粒子砲とマルチ・ロックオン・ミサイルの完成が遠い。