☆月♪日 東アフリカは曇りだったらしい
最近会長さんと更識だが、少しずつ仲が回復しているらしい。
俺の処遇が会長さんのお陰で救われたということもあり、更識としても思うことがあったのだと。
だがまあ、元々は些細なすれ違いからの仲違いだったのだ。
共通の友人である俺が見るに、双方本当は仲良くしたいって本音が見え隠れしていたし。
この調子で気兼ねなく話せるようになってくれると、俺も嬉しい。
3人で一緒に食事したりとか出来れば、きっと楽しいと思う。
ついでに俺なんだが、どうにも織斑がこっちに対して気まずそうにしてると言うか。
まさか試合の件を気にしてるのか? だとしたら筋違いもいいとこなんだが。
や、特に親しい訳でもないから放っておこう。余計なことはしない主義なんだ。
そして、ようやく皆の名前を覚えた。
更識は簪、山田先生は真耶、会長さんは楯無。
友達や恩師の名前を覚えないとか問題だからな。他の人は、相変わらず覚えてないけど。
折角なので、早速まずは更識から名前で呼んでみることにした。
ふとした拍子に、簪と呼んでみる。
顔を真っ赤にされた。俺まで照れるんだけど。
慣れるまで会長さん達は名前呼びしないでおこう。
簪はあれだ。1回そう呼んだら、苗字呼びで返事してくれなくなった。
プイってするんだよ。ちょっと可愛い。
☆月凹日 曇れ俺のコスモ
今日の放課後は、山田先生とエアリアル・ワルツの練習をした。
こいつは要するに、超直角的な軌道を描いた動きだと思ってくれればいい。
カーブの瞬間さえ全く減速せず、スラスターとPICの性能をフルに用いて90度以上の直角、場合によっては鋭角で曲がる近接戦用の
稲妻みたいな動きにも見えることから、ライジング・ムーブとも呼ばれる。
流石に難しい。難易度的には
しかしこれを習得すれば、スパイラルで曲線の動きを、エアリアルで直角鋭角の動きのコツを掴み取れる。
曲と直の動作を使い分けられれば、これ程使える機動も無い。
だがこの技……実は山田先生は元より会長さんも出来ないんだけどね……。
山田先生は元代表候補生ってことで、国家代表レベルの技術は単純に技量不足。
会長さんだが、エアリアル・ワルツはちょっとあの人のスタイルとは違うし。
せめて1回、1度でいいから実演が見れれば全く違うんだが。
……あ。
ティンと閃いて、発想の転換で織斑先生に頼んだ。
見せて貰った。動きは頂いた。
☆月△日 曇ろうとする意志は、何よりも強い
やっべえ、出来るようになった。エアリアル・ワルツ。
あの織斑先生までびっくりしてた。たかが数日で会得するなんて、思ってもいなかったらしい。
俺だって思って無かったよ。自分でも内心びっくりだよ。
こいつはいい。本気で自由自在に飛べる。
ただ、スラスターのエネルギーをかなり食うから乱用は禁物、とのこと。
今日は織斑達と使用アリーナが被ってたので、遠目にしばらく見学してた。
……しっかしアレだな、織斑の専用機。名前思い出せないけど、アレ。
酷いもんだ。スラスターの燃費が悪い、そしてそれ以上に使い方が悪い。
スロットルワークがなってないんだよ。マシンセッティングだけで燃費どうにかできると、本気で思ってるのだろうか。
特に
ただ加速減速すればいいんじゃない。大事なのは効率だ。最小限のエネルギーで、最大限のパフォーマンスを。
あの機体なら、スラスターの点火率を少なくとも50段階に分けて使えるようにならないと駄目だ。
その場その場での加速がバラバラだから、ただでさえ悪い燃費をもっと悪くしてしまっている。
機体性能で誤魔化してはいるが……おおう、見てられん。
エアリアル・ワルツを使う際のスロットルワークを、しっかり頭に叩き込んでおく。
これを理解するとしないでは、エネルギー効率が倍ほども違ってくるのだから。
そして簪の専用機だが、遂に完成した。……スラスター含む機動関係だけ。
でも凄いぞこれは。飛行試験してみたが、安定感も燃費も最高速も当初のスペック表を上回っている。
わーいわーいと喜ぶ俺達の足元には、未完成の武装が転がっているが……うん。
見なかったことにした。