IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 ☆月↑日 曇りに、俺はなる!

 

 

 取り敢えず、会長さんから聞かされた話を纏める。

 俺が攫われた一件もあり、男性IS適性者に対する希少価値や世間への影響、危険度等が修正されることになり。

 その結果、最低限の自衛ができるように戦闘能力の向上が肝要だと判断されて。

 そしてそれはロシアという大国の庇護があり、IS乗りとしての技量も代表候補生クラスに達しつつある俺よりも、織斑の方がいつの間にか立場逆転して危険な立ち位置に居て。

 当面の護衛と専属コーチも兼ね、会長さんが織斑と同じ部屋で生活することに。

 

 なんかちょいちょい無理矢理な気もするが、あの人のことだから悪戯心+何らかの考えがあるのだろう。

 てな訳で、当分会長さんは織斑に付きっ切りとなってしまうのだが……まあ仕方ないのである。

 俺には山田先生がコーチしてくれてるし、それに簪の専用機だってまだ完成していない。

 こっちはこっちでやること山積みだし、それらを着実に進めておこう。

 ……少し、寂しいが。

 

 

 

 

 

 ☆月※日 諦めたらそこで曇り終了

 

 

 エアリアル・ワルツの行使において必要なのは、エネルギーの効率的使用と機体に過負荷をかけないよう制御することである。

 ただでさえ減速無しの鋭角機動なんて無茶苦茶やってるんだ。制御を誤れば、機体どころか俺自身も危険に晒される。

 と言っても、特A難度の技術なんて大なり小なりそんなもんだが。

 

 ラファールは量産機だから、コストの関係で装甲なんかの強度に限界がある。

 どうしても専用機に比べてスペックが低いから、その辺の制御が非常にシビアなのだ。

 そして現在エアリアル・ワルツを習得しているIS操縦者は、確認されてるだけで俺や織斑先生含め8人。

 内3人は、自分の専用機以外では使用不可能。

 ISコアの数こそ500に満たないが、操縦者だけならそれこそ数千人以上居る。

 この数字がどれだけ少ないか、言わずとも分かるだろう。

 数日で習得できたのが、未だに信じられん。

 

 こっそり織斑達の訓練風景をデータ採取して、荷電粒子砲の使用ログを編集。

 簪に渡す。これで多少は、完成が早まる筈だが。

 

 

 

 

 

 ☆月@日 心はいつでも薄曇り

 

 

 会長さんから、織斑の訓練に御呼ばれする。

 戦闘動作(バトル・スタンス)や機動技術の、手本を見せてやって欲しいとのこと。

 

 いきなり連れて来られて、何を見せろと言うのか。

 螺旋軌道瞬時加速(スパイラル・イグニッション・ブースト)? それとも、エアリアル・ワルツ?

 スパイラルはともかく、エアリアルの方はまだ実戦で使うには少し不安だから見せるのは待って欲しいんだけど。

 

 シューター・フローの曲線軌道から、瞬時加速(イグニッション・ブースト)への直線軌道へ移行する際の動きを要求された。

 ……あ、そんなのでいいんだ。

 けどそんなの、4回5回もやればできるように――ならない?

 しかし会長さん、織斑の奴は中々に習得が早いと聞いたのですが。

 

 自分と一緒にするなと言われた。

 俺の場合は覚えが早い通り越して、異常だったらしい。

 

 

 

 

 

 ☆月$日 暗雲立ち込める曇り

 

 

 訓練中、オスカルとミニ子に螺旋軌道瞬時加速(スパイラル・イグニッション・ブースト)を見せろと要求される。

 この中に居る面子で、俺と会長さん以外使えないらしい。

 俺の機動技術は見世物じゃないのだが……しつこいので、1回だけやって見せる。

 

 ギャラリーが沸いた。

 平日だからね、アリーナにも結構人が居たんだよ。

 

 ふむ、だがこれはもしかすれば幸いだったかも。

 何せ俺がロシア代表候補生になったのは、裏金使ったからだとか言ってる輩も実は居たし。

 特に目立った戦績を残してない俺に対して、そう思うのも仕方ないが。

 

 ちなみに、やり方を教わりたいなら会長さんから聞いてくれ。

 俺は自分にしか分からない理屈とか立ててやるタイプだし、教えるのに向いていない。

 山田先生からは、その辺の教え方とかだけは吸収できなかった。

 

 人がこっちに注目してきた所で、会長さんが俺と織斑で模擬戦をやってみないかと提案する。

 ……どうも、今の俺の実力を生徒たちに知らしめたいらしい。

 この人、俺が陰口叩かれて結構怒ってたからな。

 

 だがまあ、それについては異論無い。

 何せ前にやった時は、内容にも結果にも納得が行っていないのだ。

 それに……会長さんや山田先生から直々にコーチを受けた俺の実力が、あんなもんだと思われるのも少し腹立たしい。

 

 俺は、模擬戦を引き受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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