IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 ☆月☆日 曇っていいとも

 

 

 昨日はつい恥ずかしいことをぺらぺら喋ってしまった。

 織斑への前回のリベンジと、会長さんの手解きでどれだけ強くなったかの確認のつもりで引き受けたのに。

 あいつが余りにも『入って』ないもんだから、少々苛ついてやってしまった。

 それも公衆の面前で、エアリアル・ワルツまで使って。

 まだ戦闘で使うには不安があったから、そんな不出来な物を晒してしまった。

 現在絶賛後悔中。

 

 会長さん達には絶対聞かれた。

 何故か居た簪や山田先生にも聞かれたに違いない。

 

 うぅ、恥ずい。

 あんなん下手すりゃ3人全員にいっぺんに告白したみたいじゃないか。

 しかも1人は先生なのに。

 どうしよう。二股三股かけるような最低野郎とか思われたら。

 あの人達に嫌われたら、流石に死ねる。

 

 頭を抱えてると、簪が起きた。

 眠気の残る目をくしくし擦りながら、こっちを見る。

 視線が合わせられん。

 

 やがて彼女が手を伸ばしてきて、俺の手をきゅっと握る。

 心なしかいつもより少し強めな気がするが……どうやら、嫌われてはいないようだ。

 ……良かった。

 

 朝飯の最中、会長さんにもエンカウントした。

 この人は大丈夫だろうかと内心気が気じゃなかったが、どういう訳か寧ろ機嫌がいい。

 いつもより笑顔が6割増しだ。何かいいことでもあったのだろうか。

 まあ、機嫌がいいならそれでいいんだが。この人が笑顔だと、俺も嬉しいし。

 

 ところで、さっきから視線が突き刺さる。

 先日の件で目立ってしまったからか、織斑並に視線が集まってキツイ。

 俺、目立つのあんま好きじゃないし。

 

 結局俺の不安は、杞憂に終わってくれた。

 山田先生も凄くご機嫌だったから。

 

 あと……後で織斑には謝っておこう。

 少し言い過ぎたし。

 

 

 

 

 

 ☆月◎日 タモリ あ、間違えたクモリ

 

 

 模擬戦のお陰で荷電粒子砲の纏まったデータが手に入ったので、簪と整備室で作業中。

 てか、ホントにどうやってキーボード3つも4つも使いこなせるんだろうか。

 前に真似して2つ使おうとしたが、頭痛くなって止めた。

 簪が言うに、俺は『高速思考』タイプで『並列思考』には向かないらしい。

 だから高機動時での制御に長け、逆に武装の展開等が不得手なのだろう、と。

 成程。本国にその旨のデータを送っておこう。

 

 俺を相手に徹底的にやられたのが相当響いたのか、織斑の訓練風景が変わった。

 前は半ば『義務』のようにこなしていたメニューを、自主的に行っている。

 ……何か学んでくれたんなら、こっちとしても戦った意義があるってことで結構です。

 だが、毎日のように再戦の要求するのは止めて欲しい。サムライガール達に睨まれるから。

 

 暇を見て、俺自身もエアリアル・ワルツから螺旋軌道瞬時加速(スパイラル・イグニッション・ブースト)へ、若しくはその逆への移行を練習する。

 瞬時切替(クイック・スイッチ)。要は俺にとって相性最悪な高速切替(ラピッド・スイッチ)の機動バージョンで、全く異なる機動所作に瞬時に切り替えるテクニック。

 どんな動きも瞬時に引き出せてこそ、本当の『機動技術の天才』だろう。

 

 これをモノにし次第、とある機動技術の習得に移ろうと思っている。

 最速零速(マックス・オア・ストップ)瞬時加速(イグニッション・ブースト)系統の技術で最上位に位置するワザで、その性質は言葉にすると至極単純。

 

 最高速か、停まっているか。ゼロからマックスへ、マックスからゼロへとノータイムで移行する、言わば擬似的な瞬間移動。

 難度は特Aをも上回るS。それも理論上は可能と言われているだけで、実際にこれを習得したIS操縦者は全くのゼロ。

 近接戦のみで世界最強の称号を獲得した織斑先生でさえ、これは使えなかったと聞く。

 

 だが、だからこそ挑戦のし甲斐がある。

 ……正直、ラファールでやれるかどうかは自信が無いけど。

 

 

 

 

 

 ☆月%日 夜になれば曇りかどうかなんてよく分からん

 

 

 織斑が、あろうことかエアリアル・ワルツを覚えたいと言ってきた。

 シューター・フローも満足にできないのに何を言うか。絶対無理である。

 取り敢えず俺は人に物を教えるのが苦手――サムライガールやミニ子、お蝶夫人に比べればそりゃあマシだが――なので、織斑先生に頼んでこいと言っておく。

 

 意気揚々と行って来て、数分後に戻って来た。

 頭にたんこぶができてる。当然だがダメだったらしい。

 そりゃあそうだ。相応の地盤ができていないと、エアリアル・ワルツは身体を危険に曝す諸刃の剣である。

 

 螺旋軌道瞬時加速(スパイラル・イグニッション・ブースト)

 そっちもダメに決まってるだろうに。

 二段階加速(ダブルイグニション)程度でさえ完全にモノにはしてないってのに、何を言ってるのか。

 

 もうこの際だから、瞬時加速(イグニッション・ブースト)からきっちりと教え直すことにした。

 違う、そうじゃない。どうしてそんな無駄にエネルギーを放出するんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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