IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 ☆月■日 曇りって、いいよね

 

 

 何故か本国から送られてきたティーンズ向け雑誌を見て、固まった。

 なにゆえ俺の写真がでかでかと写っているのか。

 

 数回電話で話したロシアの担当官は日本語ペラペラ……つーか、IS関係者は基本日本語できるから全くロシア語の勉強をしていないので、字は読めないが。

 多分『我が国の代表候補生、その素顔に迫る!』みたいな見出しが出てると思う。

 しかもファッション誌に載ってるような服装で……いつ撮った。

 

 ……待てよ、確かこの前会長さんが色々手続きするからって俺を外に連れ出した際、服屋で俺を着せ替え人形にしてたな。

 あの時か。何がしたいんだあの人。

 

 ちなみに今本国では、俺が愛用している色眼鏡のレプリカが流行中らしい。

 しかも値段は円にすると6万。俺がかけてるの、3万なんだけど。何でレプリカの方が高価(たか)いんだよ。

 てか、経済効果すげえ。俺の帰属が決まってから、株とか全体的に大幅アップしたらしいし。

 

 男性適性者の価値なんて解剖するくらいしかない、なんてどっかのニュースか何かで過激派が言ってるの見たことあるが……金の成る木じゃん。

 本国もあっさり俺の候補生任命認める訳だよ。政府は今頃ウハウハだな。

 

 雑誌放り出してうんうん頷いてたら、簪がシャワーから出てくる。

 ……タオル巻くだけじゃなくて、服を着て出てきて欲しい。最近不精って言うか、無防備なんだよこの子。

 親友に手を出すほど落ちぶれてはいないので、悪しからず。

 

 そして雑誌を発見。表紙を飾る俺の姿を見遣り、目を丸くした。

 ああ止めて見ないで恥ずかしい。

 隠そうとしたら、その前に取り上げられる。

 かーえーしーてー。

 

 会長さんに文句を言いに行くことにした。

 1025号室に入ったら、10冊ぐらいの同じ雑誌を抱えた会長さんが満足そうにしてた。

 しかもそれは、雑誌に載ってた俺の色眼鏡のレプリカ!

 ……やっぱり俺のより高級品じゃん。

 

 

 

 

 

 ☆月∴日 どよどよ

 

 

 曇っている様子を擬音で示してみる。

 クラスのロシア出身の子が、例の雑誌を持って話しかけてきた。

 止めて、これ以上傷を抉らないで。

 山田先生が3冊買ったとか言ってたけど、ホント許して。

 

 会長さん曰く、代表候補生にはこうしてメディア露出なんかの仕事も結構回ってくるらしい。

 特に俺は本国唯一の男性適性者だから、写真1枚が五千ルーブル札何枚にも変わるとのこと。

 勘弁して下さい。

 

 だがギャラとして、結構な額を貰ってしまった。

 ポケットに入れて歩くのが怖くなる厚みが。

 

 捨て金が大量に手に入ったので、今度簪&会長さん交えた3人で休日に食事でもと取り付けた。

 山田先生も誘ったんだが……当直だとかで断念。

 お土産を買ってくることにしよう。

 

 

 

 

 

 ☆月A日 ク・モリー

 

 

 本国から連絡。しかしこの担当官の女性、やたら声音が甘ったるくて聞き取り辛い。言葉自体はペラペラなのに。

 なんでも専用機の件だが、急遽コアにひとつ空きが出そうなのだと。

 そこで、俺に用意される専用機の名前を候補の中から決めて欲しいと頼まれた。

 

 なんだそりゃ。何で名前がそんな一杯あるんだ。

 その後メールで大量の名前のリストが届いたのだが、読めないので会長さんの所に行く。

 

 100近い名前の内、過半数以上が厨二だった。

 駄目だ。あんな名前のIS乗りたくない。

 何だよ雪の姫君(スニェグーラチカ)って。俺男だよ。

 鏡の狼(ヴォールク・ズィェールカラ)とか、意味分からんよ。

 

 ……会長さんとの30分にも渡る激論の末、専用機の名が決まる。

 本国に連絡して、俺はそれを伝えた。

 

 新星(ノーヴァ)。まともな候補がコレ含め数個しか無かったことに泣きそうになったが、割と気に入っている。

 しかし。機体も出来上がっていないのに、どうして名前だけ決めなけりゃあかんのだ。

 

 

 

 

 

 ☆月●日 お出かけ日和の曇り

 

 

 休日、俺と会長さんと簪の3人で出かける。

 いつかこうして出来たらいいと思ったことが本当に叶うと、こう、ほっこりした気分になる。

 

 だがよく考えれば、他人が見たらこの状況はよろしくないのでは。

 美少女姉妹を左右に歩く。うん、許されるならぶっ飛ばすね。

 周囲の視線も、恨みや怨念の色が強い。

 あ、今誰かがザキ唱えた。

 

 アレだなコレは。普通に歩いてるならまだしも、会長さんは普通に腕を絡めて来ていて、簪は控えめに手を繋いで来て。

 その所為で憎しみのパワーが増大している。

 きっとこれを離せば多少は和らぐんだろうが、2人とも凄くご機嫌だからそれを損ねたくはない。

 俺に呪詛が降りかかるだけで彼女達が笑顔なら、まあそれでいいや。

 

 ふむ……よく考えたら、これってデートになるのか?

 男1人に女2人だから違うのかな……悩む。

 

 3人で買い物を楽しんで、一緒に話しながら食事をした。

 お互い最近あった面白い出来事なんかを語り合う2人の姿は、本当に仲の良い姉妹そのもので。

 彼女らが仲直りできて良かったと、心から思う。

 

 ……そう言えば。

 会話の内容が学園祭になったところで、俺はふと考え込んだ。

 

 ウチの催し物って、なんだったっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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