IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 ☆月★日 世界的に曇れ

 

 

 学園祭を数日後に控え、会長さんから呼び出される。

 なんでもこの学園祭に乗じて、なんとかタスクって連中が乗り込んでくる情報が掴めてるらしい。

 そいつらの狙いは、十中八九専用機持ちで男性適性者の織斑だとか。

 

 奴らを誘き出す為の策に、一役買って欲しいと頼まれた。

 内容を聞いてぶっちゃけ物凄く断りたかったけど、会長さんに両手を合わせて「おねがい♪」と小首を傾げて言われ、コンマ5秒で了承してしまった。

 アレを断るのは、俺にはストⅡでガイル相手にザンギエフで勝つぐらい困難なことである。せめてリュウを使わせてくれ。

 

 ……ホント、俺のバカ。

 

 

 

 

 

 ☆月↓日 呪術で曇らせた

 

 

 待ってもいない学園祭だこんちくしょー。

 ウチのクラスはどういうわけか、メイド喫茶ならぬ執事&メイド喫茶だった。

 当日になって初めて知った。

 

 てか山田先生、なんでアンタまで接客してんだ。

 メイド服恐ろしく似合うな、オイ。

 

 俺に接客をやれとか、普通に無理だと思う。

 クラスメイト達も扱いに困った様子だったが、「それでもいい」という客がなぜか殺到したので忙しくてしょうがない。

 さっきから延々『執事にご褒美セット』とやらのオプションで、ポッキーをぽりぽりぽりぽり食わされてる。

 俺少食なんだけど……もうお腹一杯なんだけど。

 

 会長さんが来た。何故かこの人までメイド服で。

 容姿的には似合わなくもないが、明らかに傅くタイプの人じゃないから違和感がバリバリである。

 そしてどういう訳か、一緒に連れてこられたらしい簪までメイド。

 こっちは普通に似合う。

 

 新聞部の人が来て、3人で一緒に写真を撮って貰った。

 当然後で焼き増ししてくれと約束を取り付けた。

 

 自由時間だが、まあ生徒会の出し物の準備で殆ど潰れた。

 会長さんも一緒だったし、それは別にいいんだが。

 これからやることを考えると気が重くなる。

 それに……聞いた話だけでも、会長さんが危ない目に遭うかも知れない。

 

 確かに彼女は俺よりも強い。

 けれど。好きな女性(ひと)を心配するのは、当然のことだと俺は思う。

 あの人は大丈夫だと笑ったけれど。

 

 んで、いざ作戦開始。

 作戦っても、俺はこの生徒会の出し物である観客参加型演劇『シンデレラ』で、織斑同様王子役として出演するってだけだけど。

 しかし最早これは、シンデレラでも何でもないと思う。

 俺か織斑の頭上にある王冠をゲットすれば、そいつと同室になれる。

 そんな触れ込みがあったからか、参加してるシンデレラーズはどいつもこいつも目が本気で怖い。

 どうでもいいが、参加の条件が『生徒会への投票』って辺り、一石で何鳥も狙う会長さんの性格が見て取れるな。

 そういうところも好きなんだが。

 

 とにかく俺は、途中で消えるだろう織斑に意識を向けさせないよう舞台で大立ち回りすればいいらしい。

 その間に会長さんが、全部終わらせると。

 正直そっちに行きたいんだが、まだ専用機を持っていない俺では役に立てないし。

 だからこそ、できることをしようと思う。

 

 執拗に織斑を探すサムライガールズver.シンデレラはともかく、何とか他の女子たちはこっちに誘導している。

 まあ、ロシア系の生徒は最初から俺の方に来てたんだが。

 王冠が外れると電撃が流れる仕組みになっているから、こっちも必死なんだ。

 されど機動技術の天才、その力量を生身だからと舐めて貰っては困る!

 喰らえエアリアル・ワルツ生身バージョン!

 

 他愛無し。

 減速なしでカットしまくったから足の筋が若干痛いが、生徒は振り切った。

 そして耳のインカムから会長さんの連絡。

 向こうも終わったらしい。これで俺の役目も終わりだ。

 

 ひと仕事終えてホッとしてると、簪がとてとて近寄ってきた。

 シンデレラ系のドレスも似合うなーとか思ってたら、簪は手に持ってた精密ドライバー達を駆使して3秒で王冠の通電装置をカット。

 そして王冠を取り、きゅっと胸元に抱きしめる。

 

 ……え?

 や、早業過ぎて訳が分からなかったんだけど。

 どうやって通電装置カットしたんだこの子。当然だが殺気も何もないから反応できなかった。

 つーかドレス着てる時点で参加者だと気付け俺。

 

 という訳で、俺は引き続き簪と同室ってことになった。

 ちなみに織斑だが、会長さんが王冠持ってたってことであの人と同室。

 要するに今までのまま……という訳だ。

 ん、ちょっとだけ会長さんと同じ部屋になりたかったと思う気もするが、そこはそれ。

 

 俺はまだあの人の横に立てるような男じゃない。

 いつか、自分で自分を認められる日が来たら。

 その時は、はっきりとこの想いを告げようと思う。

 

 あと会長さんの思惑通り、織斑は生徒会に入ることとなった。

 役職は副会長。新参にしてナンバー2だが、その実態は他の部へのレンタル品なので同情しか湧かない。

 俺? 俺は忙しいから。

 会長さんも俺は貸し出さないって、はっきり公言してたし。

 

 ……ま、あの人に怪我がなくて良かったよ。

 戦利品である王冠を嬉しそうに飾ってる簪を眺めつつ。

 俺は、心からそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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