IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 一応スペイン代表とカナダ機動部門代表も、元ネタ的キャラは普通に居たり。
 前者はともかく後者はマイナーだから、知ってる人少ないと思う。


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 ♪月↑日 曇りのマークの隆景製薬

 

 

 二晩ディスプレイに齧り付き、各国の代表ないし機動部門代表の操縦記録映像を見た結論を述べよう。

 

 イーリス・コーリング……素晴らしい使い手だった。

 近接格闘主体の高機動戦闘型。つまり分類としては織斑に近いが、比べることもおこがましいほど技術レベルに差がある。

 

 専用機のファング・クエイクを手足の如く扱う経験値もさることながら、俺が最も感動したのはその判断力と対応力だ。

 どの場面でどう動くべきか、相手の動きに対してどう対応すべきか。

 それらを身体が、完全に覚えている。

 実際のところ、機動技術だけに絞ればその技量は俺と彼女に然程差は無い。

 だと言うのに動きが全然違って見えるのは、つまりそう言うことだ。

 

 今後の課題がはっきりと見えた。

 俺には、動きの先読みとそれに対する対応、状況に応じた最適な動きを瞬時に引き出す応用力がまだまだ足りていない。

 どんなに優れた機動技術を持っていようと、それが適材適所で使えなければ意味が無い。

 要するに、これまでの俺はカードゲームで言うところのレアカードを集めていただけ。

 これからは、そのカードの切り方を学ばなければならないのだ。

 

 参考になったのは、イーリス・コーリングだけではない。

 スペイン代表のミー、カナダ機動部門代表のレナ・ブルーム。

 ひと通り観賞した映像の中でも、特にこの2名は俺にとって大きな収穫をくれた。

 

 まずはスペイン代表ミー。何故か苗字は特定できなかったが、そんなことはどうでもいい。

 

 彼女には驚かされた。

 どちらかと言うとパワータイプ寄りの操縦者だったが、姿勢制御と回避の技術がずば抜けて高かった。

 魔女を模した外観のやたら装甲部が少ない専用機に、主武装はISを装着した状態の身の丈より更に巨大な斧。

 そんな不安定な出で立ちをしているにも拘らず、どんなに斧を振り回しても姿勢がぶれない。

 そして決して機動力は高くないと言うのに、ただ最低限の動きで防御と回避をこなす。

 俺も習得している近接用戦闘動作(バトル・スタンス)『ステッピング・エスケイプ』の達人。悔しいが、練度がまるで違う。

 

 余談だが、大変妖艶な美女である。故に動きを食い入るように見ていたら、簪や会長さんが何かを誤解しているような目を向けてきた。

 違う、乳揺れ(ソッチ)を見ていた訳じゃない。

 

 そして、4姉妹全員が代表ないし代表候補生に任命されている、『カナダのサラブレッド』ブルーム・シスターズの次女、レナ・ブルーム。

 

 国家機動部門代表である彼女は、紛うことなき高機動タイプの操縦者だ。

 歳は俺の1つ上、つまり会長さんと同い年。

 レナ・ブルームは、俺含め世界で8人しか使えない機動技術『エアリアル・ワルツ』の使い手。

 しかも抜群のスロットルワークで、最小限のエネルギーで以って超速移動をこなす。

 

 ……スロットルワークは、スペックの低い訓練機を使っている俺の方が多分上。

 しかし彼女はエアリアル機動でのルート選択が上手い。

 的確に最短距離、最適軌道を選択しているから、ただでさえ追うのが困難なワザであるのに更なる磨きがかかっていた。

 流石は機動部門代表、俺の目指す最初の場所に居るだけはある。

 

 血が熱くなるのなんて久し振りだ。この学園に来て改めて知ったことだが、やはり上を目指すのは楽しい。

 できることなら彼女らの動きを生で見たいが、流石にそれは無理な相談だ。

 

 後会長さんに簪、本当に違うから。

 胸は特に見ていない、どちらかと言うと動きのキモである腰をだな。

 

 余計に誤解された。

 だから喋るのは嫌なんだ。

 

 

 

 

 

 ♪月○日 ヘイカモン積乱雲

 

 

 誤解を解くのは大変だった。

 それはさて置き、ロシアからの通達である。

 

 新星(ノーヴァ)の完成予想スペックと、積載予定武装のデータが届く。

 …………馬鹿なんだろうか。

 

 大型4機と中型2機の計6装スラスター。

 スピードだけなら多分、競技用どころか軍用ISとしても十二分に通用する。

 そしてこいつがノーヴァの第3世代機構らしく、イメージ・インターフェースにより他機体とは比べ物にならないほど細やかな出力調整ができるそうな。

 当然その分操作難易度も跳ね上がるが、俺にとっては少々面倒な程度だった。

 ついでにコッチのスロットルワークを加味した調整らしく、燃費が織斑の専用機ほどじゃないが相当悪い。

 S~Fの7段階で分けたら、Dってとこ。織斑の専用機をFとするならね。Aが差し詰めミニ子の専用機辺りだろうか。

 

 んで、武装。

 こっちは、素直に俺のデータを参考にした物だと言える。

 機動技術とは裏腹に、武装の展開と武器その物の扱いが致命的に不得手な俺。

 その特性を良く考えていると言っておこう。

 

 流石に予想とは言え詳細なスペックデータを他国の代表候補生である簪に見せるのはまずいから、会長さんとデータを睨めっこしながら話し合う。

 あと15%装甲を軽量化した方がいいとか、シールドエネルギー総量をもう100減らしても大丈夫だとか。

 色々纏めて、甘ボイスな担当官にメールで送っておく。

 

 ちなみに電話連絡の場合、ディスプレイ通信にして俺は半分ほど手振りで意思疎通している。

 それで理解してくれるのだから、担当官って凄い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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