4月○日 晴れてるけど曇り その3
初日の授業が全て終わり、ようやく織斑と話すことができました。
けどそれよりも、何故彼等の決闘に俺まで参加しなければいけないのかが分かりかねます。
俺は基本的に面倒ごとが嫌いなのだ。
かったるいことはしたくないのだ。将来的にはでかいマンションでも建てて家賃収入で悠々自適するのが夢なのだ。
なのに何故、どうして。
なんか織斑先生がついでとばかりに、俺を試合に組み込んでいた気もするけど。
……ま、決まってしまったものはしゃーない。
今日1日見た織斑先生の性分からして、今更降ろしてくれなんて言っても聞く耳持たずだろうし。
だったらもう、適当に済ませてしまう方が得策だろう。
参考書を手にして頭から煙を出している織斑を眺めていると、山田先生が現れた。
寮の鍵を渡す為、俺達を探していたらしい。
織斑は初日から寮で寝泊りすることを聞かされていなかったらしく、荷物をどうすればいいか聞いていたが、その辺は担任が姉なのでどうにかなったらしい。
着替えと携帯の充電器だけとか、少々気配りには欠けているけど。
つーかこの人、どうして教師なんかやってるんだろうか。俺が見るに、教えることはできそうだけど教師って仕事自体には絶対向いていない。
やって精々『教官』だろう、この人の場合。ハートマン軍曹的な。
そして衝撃の事実。寮は2人部屋なのに、俺と織斑は別室だった。
つまりはアレか、10代男子に同じく10代女子と寝泊りしろと言うのですか。
問題起きても知らないぞ、この場合起こすのは主に俺か織斑だけど。
流石に世界最先端の学園とあって、寮の部屋ひとつ決めるのも膨大な書類作業が必要らしい。俺や織斑と言うイレギュラーを、初日から寮に迎えるだけで精一杯だったとのこと。
1ヶ月か2ヶ月程度で部屋割り調整できるらしいから、それまで我慢して欲しいと頭を下げられた。当然下げたのは山田先生の方。
部屋番号は織斑が1025号室。俺は……1010号室?
10がふたつ、覚えやすくていい。ともあれ鍵も貰ったことだし、寮に向かうとする。
寮は高級ホテルみたいなとこだった。ここひとつ建てるだけでも、相当な費用がかかっているだろう。
……確か某A国のヤクザみたいな発言で、この学園建設だの何だのにかかっている費用は、全て日本が負担している筈だが……大丈夫なのだろうか、国家予算。
カラカラとキャリーバッグを引き、1010号室の前に立つ。
なんか向こうの方から織斑の悲鳴と木刀か何かでドアを貫く音が聞こえるが、特に気にしない。
ドアを軽く3度ノックして、数秒待つ。
返事は無かった。留守なのだろうか。
仕方ないので、部屋に入ることにした。
内装を見て最初に思ったのは、やはり高級ホテルみたいだと言うこと。
正直実家の部屋より格段に過ごし易そうだ。俺の部屋、エアコンも無いし。
奥のベッドに使った形跡がある。荷解きもしてあったし、多分あっちをこの部屋の住人が使用しているのだろう。
なので必然的に、手前のベッドに腰掛けた。
ふっかふかである。
15分もしない内に荷物を整理し、すぐに暇になった。
夕食はもう少し先だし、軽く汗を流そうと思った俺はシャワーを浴びることにして。
髪を洗い身体を荒い、そして着替えを忘れたことに気付き。
取りに行こうと髪を拭きながら、衣服を仕舞ったばかりの箪笥に手をかけ。
それと同時に、部屋の扉が開かれた。
一瞬織斑が遊びに来たのかと思ったが、違った。
入ってきたのは、1人の女生徒。
水色の髪に赤い瞳の、眼鏡をかけた気弱そうな女の子で。
彼女は俺の姿を見遣ると、驚いたのか目を見開いて。
――そのまま、声も上げずにパタリと倒れてしまった。