ジャンプ読んでて思いついた武装だったりする。
分かる人には分かると思う。
地面へと叩き付けられたゴーレムⅢが、砂煙を払い除けるように再び空中へと躍り出る。
外見には大した損傷も見られず、まだまだ健在の様子であった。
更に。
「……ん?」
「なっ……!?」
新手は、1機だけではなかったのだ。
更に2機、合計3機。
単純な数だけならば同じだが、隆景達の側は楯無が重傷、簪もエネルギーが底を尽きかけている。
実質戦えるのは、到着したばかりの隆景のみだった。
けれど。
周囲を取り囲む3機のゴーレムⅢへ、それぞれ一瞥ずつ視線を向けると。
隆景は特に焦りも含んでいない声音で、後ろの簪に振り向くことなく告げる。
「会長さんの、傍に。固まっていた方が、守り易い」
「たか、かげ……? で、でも、相手は――」
多勢に無勢だ。
そう言おうとした簪は、しかし言葉を止めた。
くしゃり、と。
金属の腕で、彼に頭を優しく撫でられて。
「大丈夫……俺を、信じろ」
口数は少ないけれど、その強い意志を伝えてくれる赤い瞳に見つめられて。
こんな状況だと言うのに頬を染め、彼女は小さく頷いた。
そして隆景は、ゴーレムⅢ達と相対する。
刹那。
ガリャァァアアアアアッ!!!
装甲を抉り取るような、凄まじい金属の衝突音。
一瞬で手近なゴーレムⅢの頭上を取った隆景に殴られ、錐揉み回転しながら吹き飛ばされる敵機。
無論、それで終わりではない。
「トロトロしてるんじゃねえよ……ッ!」
残りの2機も難なく蹴り飛ばし、またも3つの砂煙が立ち上る。
根本的な機動能力に、余りにも差があり過ぎた。
否。それどころか現行しているISの中で、ノーヴァの機動力をスペック上で超えているのは『紅椿』と『白式』の2機のみ。
更に言えば上記の操縦者達は、未だそれらの機体を十全に使いこなせていない。
結果として、藤堂隆景は現状世界最速のIS操縦者だった。
だけれど、楯無の『ミストルテインの槍』、そして簪の猛攻撃を立て続けに食らい、ようやく1機を仕留めるのがやっとだった。
それ程の防御力を持つゴーレムⅢは、そう簡単には沈まない。
多少装甲の表面を削られた以外にダメージは無く、そして敵方が攻勢に移る。
「チッ……」
1機が放った熱線を、上昇して回避。
そこを狙ってきた2機目のブレードも、蹴りで弾き命中させない。
――けれど。
「……隆景!!」
簪が叫ぶ。
しかし、時既に遅し。彼は3機の間に上手く挟まれ、取り囲まれていた。
いくら隆景でも、包囲されてしまえば動きようが無い。
突破の為に何れか1機へ攻撃を仕掛ければ、その隙を突いて残り2機が総攻撃してくるだろう。
このままでは、隆景まで姉と同じ目に遭ってしまう。
だがもうミサイルは弾切れ、荷電粒子砲も使えそうに無い。
絶体絶命の危機に、彼女は自らの無力を呪う。
そして。
仕留めにかかったのか、3機のゴーレムⅢが一斉に隆景へと飛び込んだ。
愚かな、ことに。
バチチチィッ!!!
ダークブルーの機体表面に、閃光が。
いや……『紫電』が奔る。
それは凄まじいまでの放電だった。
全方位へと放たれた雷の切っ先が、ゴーレムⅢ達を刺し貫く。
夥しい電撃を食らい、3機は一瞬だがショートする。
次いで、隆景は手を翳した。
鋼の腕の掌に埋め込まれた、クリスタルの外観をした『
その内部で、強い光を放つ。
バチィッ!! バチッ、バチチチッ!!!
今度は放射状ではなく、一直線に束ねて放たれた電撃が三筋。
まるで雷のように、3機を紙屑さながらに吹き飛ばした。
その様を見ていた簪は、眼前の光景に目を見開く。
彼女に抱きかかえられた楯無が、弱々しい声で呟いた。
「まるで、雷雲みたいなIS……完成、5年は先って聞いてたんだけどな……」
ノーヴァには、2つの第3世代機構が備えられている。
ひとつは、自在な機動を可能とする完全個別稼動の6連装ウイングスラスター。
そしてもうひとつが……彼の機体に搭載された、唯一の武装。
「アミエーラ社の、最新鋭技術……どうだ? 味の方は」
機体へ内蔵したバッテリーの電気を、四肢部にそれぞれ備わった増電装置により瞬間的に増幅。
帯電装甲に増幅した電気を蓄積し、それを自在に放電する。
攻防一体にして変幻自在、凶悪無比な自然災害の権化、その一端を操る兵器。
その名を――
「『
雷来黒雲により放たれる電撃は、最初に空気中へ『通路』を作り出し、そこから放電を開始する。
通路作成用の『
実際に攻撃を行う『
回避など、できる筈もなかった。
ゴーレムⅢ達は、所々ショートさせながらも再び動き出す。
絶対防御でのガードがあった上、本来ひと束に纏めて放つ攻撃を3つに分けたからだろう。
更に言えば、雷来黒雲は恐ろしく燃費が悪い。
スラスターともシールドエネルギーとも独立した
現に2度の攻撃で、既にバッテリーの4割近くを消耗していた。
「それは、それで、解決策もあるんだが……今回は、いい。どうせ次で終わる」
再び、掌を前に翳す。
左腕だけではない、四肢全ての増電装置を稼動。
バッテリー容量の5割を増幅。装甲へ帯電、左腕部へと集中。
ゴーレムⅢ達は、まだ満足な動きを取り戻せない。
先駆放電によるロックオンが、3機全てにマークされた。
それは神をも殺すと言われた雷の槍。
楯無の『ミストルテイン』と同様、神話よりその名を借りた必滅の武器。
一撃という限定条件なら、かの『零落白夜』さえ凌ぐ文字通り最強の攻撃。
隆景は小さな声で、その名を囁く。
「……『ヴァサヴィ・シャクティ』」
極光と轟音が、アリーナの一角を包み込み。
それが晴れると、後に残っていたのは3機のISの残骸のみであった。