IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 取り敢えず、楯無会長の心境的な。
 この人コレだから、いつ出すべきかタイミングに迷ってた……。



更識刀奈の本心

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ました私が最初に見たのは、医務室の天井だった。

 

 身体を起こす際にあちこちで響いた痛みに、自分がどうしてここに居るのかを思い出す。

 学園の受けた襲撃。私は無人機を相手に深手を負って、それで。

 

 傍で寝息が聞こえて、横を向く。

 そこでは、隆景君が椅子に座ったまま器用に眠っていた。

 

 ……助けられた、のよね。

 私も、簪ちゃんも、あと少しで取り返しのつかない事態になってしまおうとしていた時に。

 隆景君は現れて、私達を助けてくれた。

 

 雷を纏った隆景君の姿は、私が今まで見たことの無い彼だった。

 声を張って、怒りを顕わにする所なんて初めて見た。

 意識の朦朧としていた私は、何であんなに怒っているんだろうと態々考えなくちゃ分からなくて。

 しばらくして、彼が私を傷付けられて怒っているんだと理解した。

 

 それに気付いた私が感じたのは、彼に心配をかけてしまった申し訳なさでも。

 あの温厚な隆景君を怒らせる原因になった、自分自身への不甲斐無さでもなくて。

 

 嬉しかった。

 滅多に感情を表に晒さない彼が、1番晒そうとしない怒りを見せてくれたことが。

 私の為に怒ってくれたことが、不謹慎だけど嬉しかった。

 

 隆景君は一夏君と違って、誰彼構わず優しくするようなタイプじゃない。

 基本的に自分からは人を寄せ付けないし、近付いて来れば逃げはしなくても警戒する。

 人にあまり懐かない、野良猫のような人。ちょっと、簪ちゃんに似てる。

 その彼が心を開いてくれている事実が、嬉しかった。

 

 彼が目を覚ます。不安げな様子を僅かに見せて、私に大丈夫かと聞いてきた。

 ……優しい人。私や簪ちゃん達にだけ、特別優しい人。

 

 私の傷はしっかりと手当されているから、命に別状は無い。

 でも。多分、背中に受けた傷は痕になって残るだろうと言われた。

 仕方ない。それで簪ちゃんを助けられたんだから。

 …………それに。

 

 

『傷痕……俺は、気にしませんから』

 

 

 不覚にも、頬が熱くなった。

 言葉足らずな彼は、こうして時折あまりにもストレートに好意を伝えてくる。

 

 簪ちゃんは、隆景君を心底好いている。

 手を差し出してくれた彼を、あの子が1番欲しかったものをくれた彼を。

 私が傷付けてしまったあの子を、彼は救ってくれた。

 

 だから(・・・)だろうと、最初は思っていた。

 ……いいえ。そう思おうとして、無理やりそう決め付けていた。

 この胸の中にある、燻るような痛みと熱を。

 大好きな簪ちゃんの恩人で、私とあの子を仲直りさせてくれた人だからなのだと。

 

 

 

 

 

 でも、ダメ。

 もうそんなゴマカシ、できそうにない。

 

 

 

 

 

 分かってしまった。本当は最初から分かっていた。

 簪ちゃんが好きな人、だからじゃない。

 『私が』好きな人だから。

 

 私が、更識楯無が。

 ……『更識刀奈』が、好きな人だから。

 だから嬉しい。だから特別が嬉しいの。

 初めて会った時から、ずっとずっと好きだった。

 でも分かってたから。その時にはもう簪ちゃんも、彼を好きになりかけてたことを。

 だから隠してた。だから誤魔化してた。

 

 簪ちゃんはきっと、私が隆景君に抱いてる思いを分かってる。

 分かった上で、3人で居られればいいと。そう思ってくれている。

 

 けど、けど。

 ダメなの簪ちゃん。

 私は本当は、嘘吐きで欲張りだから。

 

 誰にも渡したく、ない。

 彼には私だけを見て欲しい、私だけを愛して欲しい。

 そんな思いを隠して、あなた達と一緒に過ごしているから。

 

 だから伝えられない。

 伝えたくても、伝えられない。

 

 そんなことを言ったら、私達に優しい彼は困るから。

 浅ましい私を、見られたくないから。

 全てを壊してまで思いを伝えられるほど、私は強くないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふ~、おねーさん怪我人だから林檎剥いてー隆景君♪」

「……血だらけの林檎で、良ければ」

 

 

 私には、本当はこうして彼に甘える資格なんてないのに。

 嘘に慣れ切った自分が、心底イヤになる。

 

 ――ああ。

 彼の血がついた林檎なら、食べたいかもと思った私は。

 もう、簪ちゃん以上に彼へ溺れているんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 さて、これにて7巻終了な訳ですが、ここでひとつ問題が。
 ……8巻持ってねえ、そも内容をよくしらねえ。

 まー実のところ5巻以降を失くしたせいで、最近はずっとうろ覚えでやってたんですけどね。
 仕方ないのでこう、番外編とか閑話とかそんなん挟みつつお茶を濁して8巻の内容把握して来ます。

 ついでに、我等が隆景と更識姉妹の三角関係的なアレを分かりやすくすると。

 簪:どっちも大好きなので、もう3人でオッケー。
 隆景:楯無ラブ。簪は親友以上恋人未満ぐらい。
 楯無:隆景が好き過ぎて独占したくてヤバい。でも妹も大事で現状維持に必死。

 こんな具合に。山田先生は姉ポジって決定済みなので。
 あんまりわらわらヒロイン居るのってどうかと思いますしね。

 ところで、出落ちが頭の中から引っ込んでくれない今日この頃。
 フェイトとかヴィルヘルミナとか、主人公とガチバトルさせてみてー。
 殺生院キアラVS篠ノ之束とか、もうそれなんてエイリアンVSプレデター?
 型月好きとしては、束に勝ち目無いと思うけど。だって彼女クラスの奴なら、型月ごろごろいるよね。
 そして1回ミーを出演させたかった……!

 ああダメだ、きりがない。
 雑念を払いつつ、今後の身の振り方を考えます。

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