◎月%日 真の英雄は目で曇る!
負けたし。
スペイン代表、どんだけ強いの。
戦ってみて分かったことだが、彼女の強さは技術の高さだけじゃない。
相手の長所を殺し、気持ちいい戦いをさせないところに真価があった。
オスカルの多用する戦術、デザート何とかに近い概念かもしれない。
技量は……桁違いだったけど。
俺のように一点特化した使い手は、その一点を潰されてしまえば何も出来ずに終わる。
それも今回は完全な封殺。相性の悪さも手伝って、ボッコボコにやられてしまった。
あれだね、うん。今回の件で俺の欠点というか改善点というか、とにかくそんな感じのネガティブが大量に露見しちゃったね。
やはり100の勝利より1の敗北だ。負けた方が得るものは大きい。
まず、武装について。
『雷来黒雲』が移動しながら撃てないのは辛い。や、集中のあまりいらない放射放電なら使えるんだけど、あれは防御とか包囲から抜け出す際に使う受動的な技だし。
その対策に音声認識を付けたなんてふざけたことを担当官は抜かしてたけど、あんなもん羞恥プレイ以外の何者でもない。
ノーヴァの機体特性を考えれば、移動しながらの放電がそもそものメインなんだけど……今のところ、ちょっと無理。
そいつが出来れば、また少しは違った戦いが出来ただろう。
……あー。それかいっそ、放電は止めて装甲に帯電させた状態で格闘戦ってのも有効かも。
今回のミーさんみたいな近接戦こそ本懐な人相手だとキツいけど、考えとしては悪くない。節電できるし。
それと機動。やっぱまだまだ実戦での対応力が欠けてる。
即時に最適な動作を引き出せない。だからこそ競技なんかで動くのは得意だけど、戦闘機動、つまり回避行動は数歩見劣りしてしまうんだよね。
そんでもって、俺の戦いについての才能の無さがここにも出てきた。
戦闘における回避行動は、相手の行動予測が肝要なのだけど、俺はそれが死ぬほど苦手だった。
感覚派ではなく理論派だから、不測の事態に弱い。
次に何をしてくるのか分からない対人相手の行動予測なんて、最たるものだ。
織斑とか相手に『ステッピング・エスケイプ』で攻撃回避できるのは、事前に戦闘記録なんかを穴が開くほど観てパターンを覚えているからであって。
それでも時々パターン外の攻撃をしてくるから、結果としてシールドで防御して回避率がどうしても100%にならないという。
被弾率4%。ここから上にどうしても行けないのは、俺の戦闘センスが致命的に欠けているからだ。
こればっかりは、織斑が羨ましい。
考えるな感じろとか、許して欲しい。
ハイパーセンサーの感度を上げて、目視からの反応で何とか対応しているけど、予め相手の行動をある程度予測できる戦闘のプロフェッショナル相手だと苦しさは隠しきれない。
何せミーさん、多分俺のやろうとしてること全部1秒前ぐらいに予測してたし。
始終呼吸を乱され、衝撃波回避している最中全く攻勢に移れなかった。
みーじゅーくーすーぎーるー。
俺が戦闘タイプじゃないとことか、ノーヴァが完全にレース仕様だとか除いてもこいつは無い。
いっそ武装を足すか。ロケットパンチも出来る腕部装備の巨大クロー『
名前が悉くアレだが、アミエーラお嬢さんと担当官に文句を言っても聞く耳持ってくれない。
しかしなー、己の未熟を武装に頼るのはなー。そも、武器の扱いが苦手な俺にあまりわらわら武器があってもなー。
駄目だ、課題が多すぎて一旦思考停止。会長さんとか山田先生とか簪とかに相談しよう、そうしよう。
ちなみにミーさんだが、織斑先生に連行された。
ふらっと居なくなった後、相当あちこち探していたらしい。
……織斑先生が手玉に取られている姿なんて初めて見た。
山田先生と、あと騒ぎを聞き付けた会長さんがやってきて、頻りに「おかしなことされなかった!?」とか聞いてきたが……別に何も。
そうだな、精々……うん。
ほっぺた舐められた、ぐらいか。
ヨーロッパだとキスぐらい挨拶だって聞くから、それも別に普通なのでは。少しびっくりしたけど。
……違うの、だろうか?
◎月&日 オイお前、ちょっと曇ってみ?
会長さんが警戒した様子で、俺の周りをうろちょろしてる。
先日ミーさん相手に喧嘩していたが、それと関連しているのか。
俺は今後の課題を踏まえ、訓練メニューを作成してた。
……やっぱ、メインは移動中の放電訓練かなー。
パソコンで表を作っていたら、ヴィルヘルミナがやってきた。
ワイヤーブレード15本達成したのかと思いきや。
スペイン代表候補に任命されたのであります。
……お前かい!!
それと、ワイヤーブレードの同時操作数が16本になったのであります。
2本増えてた!!
あと、メロンパンも貰った。
これやたら旨いんだけど、どこの商品だろ……。