IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 ◎月!日 千のく~もりにな~って~、泣かないで下さい~

 

 

 いつだろういつだろうと思い続け、早半年。

 とうとう俺の部屋換えである。

 

 思えば長かった。

 入学初日に簪と半裸でエンカウントしてから、ずーっと一緒だったのだから。

 織斑を見てみなさい。最初はサムライガールで次にオスカル、しばらく1人部屋を挟んで会長さん。

 半年で何度ルームメイト変わってるんだ。

 

 いやしかし、いざ部屋が変わるとなると感慨深いものがあったりする。

 この壁の傷は、本を積み上げ過ぎた簪がぶつかった時のもの。

 床の凹みは簪が落としたスパナの跡。

 部屋の簡易キッチンはよく使ったもんだ。家事スキルゼロな俺が唯一まともに作れるホットミルク、簪が大層気に入ってくれて。

 牛乳とハチミツは、この部屋に必ず常備してあった。

 

 見事に簪絡みばっかりだが、ルームメイトが彼女なのだから当然だ。

 後はよく遊びに来た会長さんか。簪と仲直りしてからは、3日に2度くらいの頻度で来ては俺のベッドを占領してたな。

 ……たまに布仏先輩に引き摺られてったけど。

 

 いやはや、思い出深いっていいもんだね。

 だけど人間前を向いて歩かないと。いつまでも過去にばかり囚われてたら、未来が見えなくなるんだよ。

 

 ……だから、さ。

 いい加減手を離してくれないかなー、簪。

 

 「や」って。1文字で否定ですか。

 お願いかんちゃん、俺今日から織斑と同室なのよ。

 「アイツか、またアイツのせいか」みたいな顔しないで。別に織斑、何ひとつ悪くないから。

 

 大体今までの方がおかしかったんだからさー。

 男女七つにして……あれ、九つだったかな……とにかく、年頃の男女が同じ部屋ってのはよろしくないのだよ、世間体的に。

 そもそも簪は最近無防備が過ぎるのね。風呂上りはバスタオル1枚だし、寝る時下着だし、襲われたって文句言えないっての。

 俺との共同生活に慣れ過ぎです。これを機に感覚を元に戻しなさい。

 

 扉を溶接しようとしないで欲しい。

 そんなことしたってここのドア、結構簡単に破壊されるんだから。

 特に1025号室のドア辺りなんか、あんまり修理申請出されるもんだから次壊したらベニヤ板にするって警告があったんだから。

 ノックしてもコンコンいわなくなるぞ。精々ばやんばやん、だぞ。

 

 会話係数の著しく低い俺にネゴシエーションとか、普通に無理ゲーだと思う。

 頑なに部屋の移動を嫌がる簪を宥め、どうにか部屋換えを完了させるのにえらく時間が掛かった。

 

 そりゃ俺だって、むさい男より可愛い女の子がルームメイトの方がいいさ。

 半年も一緒だったし、今更他の奴とルームメイトとか疲れるだけだし。

 つーか3人もの女子と同室経験があり、どの子にも手出ししてない挙句一部ではホモ認定受けてる織斑と一緒の部屋とか、もしかして俺身の危険?

 や、俺だって簪に手出してないし……だがこの男、如何にも女に興味ありませんみたいなオーラが……まさか本当に!?

 

 その日は怖くて寝れなかった。部屋の匂いとか違ったし。

 早くも挫折しそう。

 

 

 

 

 

 ◎月$日 特盛り

 

 

 どうにも1度疑ってしまうと、人間疑心暗鬼になるらしい。

 もう俺の中では織斑が普通に同性愛者に思えてならない。

 1メートル圏内に近寄ってくる度、退いた。

 

 なので結局、簪の部屋に遊びに来ていたり。

 前と大して変わらん。

 

 会長さんも来たので、前から1度試してみたかったことを実行してみた。

 手にするは櫛とドライヤー。

 

 簪の内巻きヘアーと会長さんの外跳ねヘアーを、1回入れ替えてみたかったのだ。

 こう、印象が変わると思う。

 

 …………。

 たれ目に外跳ねは似合わない。逆もまた然り。

 いつもの方がいいや、戻しとこう。

 

 しかし……部屋に戻りたくない。

 疑いを晴らさなければ、俺は安心して眠れないのだ。

 寝不足ー。

 

 

 

 

 

 ◎月#日 温もり

 

 

 このままでは不味いと思い、織斑が居ない間に室内チェックをする。

 奴も男だ。己の欲望を発散するもののひとつやふたつ持っているだろう。

 ちなみに俺は、その手のものは全部スマホだ。何せ簪が同室だったし、その辺証拠を残しちゃならねえ。

 

 まずは基本から行くか。

 ベッドの下……無い。

 天井裏……無い。

 引き出しの二重底……そもそも、んなもんない。

 うむむむむ。あまり取り出し辛いところに置いたら実用性が無くなるし……枕の中、無い。

 

 チッ、奴め。中々巧妙に隠すじゃないか、どこにしまいこんである?

 箪笥の裏か? それとも本棚にカモフラージュか? 若しくはUSBか何かでデータ保存してる可能性も。

 

 小1時間探すも見付からない。

 まさか持ってない? 本当は奴さん、女子生徒にこっそり手を出してるんじゃなかろうか。

 それなら俺は安心なんだが……む?

 

 本の間に挟んである紙切れを見付け、引っ張り出してみる。

 ……水着姿の織斑先生の写真だった。

 

 なんだ、良かった。ソッチか。

 その日俺は、ぐっすりと眠れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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