IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 ◎月^日 この世の全ての曇りに感謝を込め、いただきます

 

 

 一晩寝て思った。

 織斑がシスコンの姉スキーなのは良い。

 だが考えても見ろ。もしも奴が姉スキーなうえにバイセクシャルだったら?

 

 俺に安息など存在しない。

 同室になってから馴れ馴れしさの増した奴さんの態度を見るに、そいつを否定できない。

 

 何故一緒に着替えようとするのだ。

 どうして食事だの何だの、とにかくセット行動をしようとするのだ。

 意を決し、転入当初は男子扱いだったオスカルに、奴と同室だった時のことを尋ねてみる。

 

 結果はクロだ。

 奴は姉スキーなうえにバイだったのだ。

 なんという変態指数の高さ。近親相姦は俺に被害が無いから2歩くらい譲って見逃してやるが、どっちもイケルだなんて2億歩譲っても認めない。

 俺は普通に女性が好きなのだ。強気より内気で、吊り目よりたれ目で、饒舌よりやや無口で、理系か文系かで言えば理系で、眼鏡かけてて手料理がちょっと薄味で、髪は内巻き気味の女性がタイプなのだ。

 好きになったのは、会長さんだけど。あれ、条件にひとつも該当してない。

 

 とにかく奴の変態指数の高さに、俺のスカウターは測定限界越えのドカンだ。身の危険が危ない。

 くっ、こうなったらどうする。簪の部屋に立て篭もるか、会長さんに助けを求めるか、山田先生にエマージェンシーを出すか、いっそ織斑先生にどうにかして貰うか。

 こちとらノーヴァの調整とか訓練メニューとかやること目白押しだってのに、何でこんなことに悩まなくてはならんのだ。

 

 心労で辛い。メロンパンが食べたい。

 だがただのメロンパンじゃ駄目だ。ヴィルヘルミナがくれる、炎髪印のカリカリもふもふメロンパンが食べたいのだ。

 アレは癖になる。でもどこで売ってるのか。

 聞いても教えてくれないのだ。最近は毎日のようにくれるから問題ないけど。

 

 結局消灯寸前まで部屋に戻らず、簪のとこに居た。

 ごめんね、迷惑かけて。でも織斑が怖いの。

 

 

 

 

 

 ◎月@日 俺がお前の、最後の曇りだ

 

 

 織斑をどうにかしてくれと、とうとうサムライガールズに申し立てる。

 元はと言えば、お前達に女としての魅力が欠けているから奴が同性と姉に走ることになったんだ!

 そうに違いない、だから何とかして300円あげるから。

 

 ボコボコにしてどーすんだよ。そんなだからオマエタチは……!

 ほら見ろ、俺に助けを求めに来たじゃないか! もうほんっとにもうほんっとに!

 簪と会長さんを見習えー! あの2人は天使だぞ、多少の余所見は許してくれるタイプだぞきっと!

 

 ですよねーとちょうど近くに居た会長さんに言ったら、一瞬目に光がなくなった後顔を逸らされ、「そうね」ととても平坦な声で返された。

 なんだろ、何かまずいこと言っただろうか。

 

 仕方ないので、奴さん方に乙女としてのあり方を指南することになった。

 どうしてそんな流れになったのかは知らない。俺が知りたい。

 

 まず彼女らに必要なのは、男の性を許せる寛容さだと思う。

 なので優しいことに定評のある簪を連れてきて、こう在りなさいと言葉少なに熱弁する。

 結婚するなら結局はこんな子が1番ですと言った辺りで、顔を真っ赤にした簪が気絶。

 医務室まで連れて行き、一旦講義中断。

 そして何故か、会長さんにほっぺを抓られた。

 

 気を取り直して、テイク2。

 魅力ある女性に必要なのは母性である。

 なので母性なら学園屈指の山田先生に来て貰い、こう在りなさいと教え込む。

 しかしどうにも、最近先生のことを時々「お姉ちゃん」と呼びそうになる。

 

 不機嫌そうな会長さんに、うにーとほっぺを引っ張られる。

 なにゆえ。

 

 しかし、慣れないことをすると腹が減る。

 何か食いたいなーと思った辺りで、ヴィルヘルミナがメロンパンをくれた。

 んむ、うまい。

 

 こうやって気の利く女を演出するのも効果的だと刷り込んでおいた。

 ……だが彼女らは恋愛面に関して、明後日の方に向いた認識を持っているからな。

 上手く行くかどうかは、分かんない。

 

 ところで会長さん、何で凹んでるんですか。

 「私なんてどーせどーせ」とか……もしかして、例に出して欲しかったのか?

 あっはっは、そいつは無理だ。

 

 だってあの5人が、会長さんみたいになれる訳ないじゃん。

 

 急に泣き出した会長さんに押し倒された。

 ちょ、窒息するー。

 

 

 

 

 

 ◎月*日 もう、みんな曇るしかないじゃない!!

 

 

 ほうほうの体の織斑と遭遇した。

 やはりあの5人に、まともな感性を期待した俺が間違っていたらしい。

 

 だが今日の俺には、心強い味方が居るのだ。

 後ろでべったりくっついてる会長さん。

 

 あの、嬉しいけど離れて下さい、歩き辛いです。

 俺、過度にくっ付かれたりするの苦手で……こう、押されると引いちゃうんで。

 

 織斑は会長さんが追っ払ってくれるので、伸び伸びとノーヴァの訓練メニューやセッティング調整ができる。

 ……『雷来黒雲』の音声認識プログラムを発見! 消してやる、消してやる!

 なんですと!? パスワードが必要!? んなもん知るか、あんの魔性菩薩め!!

 簪にハッキングを頼んでみるが、見たことも無いほど強固なプロテクトがかけられているらしく、手も足も出ないらしい。

 学園のファイヤーウォールより堅いとか、ふざけてんのか。

 破るには少女の秘密とやらが必要らしいが、意味が分からないので捨て置いた。

 

 ノーヴァを調整してたら、どこから聞きつけたのかテスタロッサが。

 こいつ苦手なんですけど……。

 会長さんと簪が2人がかりで追っ払ってくれた。感謝感激。

 

 5人から『ラブ師匠』と呼ばれ、指南を求められる。

 何故こうなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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