%月&日 ジョセフ・ジョースター! 貴様! 曇っているな!!
やっとスマホを新調できた。
いや、思わず投げ捨てた俺が悪いんだけど。
取り敢えず、顛末を語っておこうと思う。
あの後のことだが……ノーヴァを展開させたことは、特にお咎めなしだった。
織斑先生曰く「なんのことだ?」ってアレだったけど。多分見逃してくれたんだと思う。
つーかそれ以上に問題だったのは、俺の告白シーンとかそもそも会長さ……刀奈と追いかけっこしてた場面から、不特定多数の生徒に見られてたってことで。
翌日には、学園全体に広まっていた。
何せ学園に2人しか居ない男子生徒と、生徒会長の恋愛話だ。
更にはロシア出身の生徒からのタレこみで本国まで話が広まり、雑誌で特集まで組まれる始末。
『国家代表と機動部門代表の熱愛発覚』とか……もう勘弁して下さい。
それと、簪のことだが。
しっかり謝った。もう土下座とかする勢いだったさ。
内気な彼女の勇気と誠意を無碍にしたんだ。殴られるのくらい覚悟の上だった。
そも、一発ぐらい貰わないと俺の気が済まない。
笑って許された、けどね。
こうなる予測はあったらしい。その上で、告白に踏み切ったと。
思わず泣きそうになったさ。俺の唯一無二の親友は、なんて芯の強い女なのか。
ガールズ共にも見習って欲しいもんだ。あいつらぜんっぜん進歩してないんだから。
俺の恋愛指南虎の巻が功を奏したのか、暴力は若干減ったが。
あとお蝶夫人に冗談で送ってたテニス指南の成果か、先日手塚ファントムを体得してた。
風林火山の『雷』が効かなくなってしまった。恐るべし縦ロール。
そして織斑だが、流石に彼女持ちを襲ったりはしないだろうと信じたい。
そもそもホモ疑惑自体、疑惑に過ぎないわけだし。
警戒心を完全に解くのは、無理だが。
%月!日 みんな、油断せず曇ろう!
現在生徒会室で仕事中。
2学期終了と同時に俺はロシアに帰国するから、後任の書記に引継ぎ等もしなければならない。
……確か書記って、俺の他にもう1人居た筈なんだが。そいつはどうなっているのだろう。
布仏先輩に聞いてみたところ、気まずそうに目を逸らされた。
ちなみに、俺の後任は簪だ。
今も書類の整理手順や資料の配置など、鋭意伝達中である。
そして会長の刀奈は、俺の膝を枕に昼寝中。
働けよ。最近すっかり甘えたがりのナマケモノなんだから。
一部では俺が甘やかしているとも噂されているが、そんなことはない。
……4:6で、刀奈の方が甘えてるんだよ。
ちなみに俺が4だ。そいつは譲れない。
付き合うようになってから、大体彼女はこんな感じだった。
一緒に居る時間自体増えたし、その時はこうして俺にくっ付いてることが多い。
まあ、俺から触れたりすることがあまり無いし。時々頭撫でたりはするけど。
寝返りを打つ刀奈の髪を、そっと指で梳る。
かわええ。
あまり甘やかさないで下さいと、布仏先輩から嘆願された。
……そんなに俺が甘やかしてるように見えるのだろうか。
%月%日 クモーレ!
もうすぐ2学期も終了である。
俺は荷物を纏め、お世話になった方々への挨拶回りに出た。
まずは勿論山田先生。
この人の指導が無ければ、俺の今はきっと違うものになっていた。
ロシアに帰る俺を惜しんでくれたが、同時に機動部門代表としてのこれからの活躍を祈っていると、激励される。
そして、来年また学園に復帰するのを待っているとも。
……先生には、本当に頭が上がらない。
俺に兄弟は、あの恥晒しの
姉というものが居たのなら、きっとこの人のような感じなのだろう。
続いて織斑先生。
意を決して俺は、織斑に抱いているホモ疑惑を先生に打ち明けた。
弟がまさか同性愛者かも知れないということに、彼女は多大なショックを受けていたが。
「教えてくれて感謝する、お前が復学するまでには絶対に矯正してみせる」と。
ありがたいお言葉を、頂いた。
ヴィルヘルミナ、四楓院、あとついでにテスタロッサ。
テスタロッサの奴がわーわー五月蝿かった。絶対に機動部門代表にまで上り詰めてリベンジするだの、なんだの。
まあ奴の技術もかなりのもんだから、強ち大口とも言い切れない。
ついでに言うと四楓院は、つい最近日本政府から代表候補生の打診があったらしい。
それももしかすれば、来年のモンド・グロッソまでには格闘部門代表に選ばれるかも知れないとのこと。
……つまり、スペイン総合代表兼格闘部門代表のあの人と戦うかも知れないのか。
ファイト、ガンバ、ご愁傷様。
最後にヴィルヘルミナよ。
メロンパンありがと。そしてお前が代表になるとしたら、技巧部門あたりか?
オールマイティだから総合もイケそうだが、スペインの代表は文字通り化け物だし。
エイリアン級の強さだった。恐らく来年までに抜くのは不可能だ。
一応、ガールズや織斑にも別れを告げておくことにする。
織斑……次会う時までに、しっかり女性を好きになるんだぞ。男や姉はアブノーマルだからな。
サムライガール。暴力癖も程々に。
お蝶夫人。目指せウィンブルドン。
ミニ子。料理のレパートリー増やせ。
オスカル。被った猫が剥がれないようにな。
柳生……誠意ある謝罪をしたから許してやろう。
そしてお前ら、散々人のメルマガを方々で言いふらし回ったな。
いつの間にか会員数が4桁に達してんだよ。
月額500円なのに……最早コレだけで普通に食って行けるんだが。
%月?日 言っとくが俺はソロだ。1日2日曇りになるくらい、どうってことないぞ。
2学期終業式。
今日俺は、モンド・グロッソに備えロシアに帰る。
山田先生と簪、ヴィルヘルミナが空港まで見送りに来てくれた。
炎髪印のメロンパンも、しばらくは食べ納めだ。結局どこで売ってるのか、教えて貰ってない。
激励と再開の約束を胸に、俺は飛行機へと乗り込む。
1年。長いようで短い時間だ。それまでに、俺は俺にできる完璧を求めて鍛錬を重ねよう。
そして。
なぜ一緒に居るんだ刀奈。お前のロシア行きは来年だろうが。
生徒会長はどうするんだよ。譲った? 誰に!?
……そう言えば、俺が書記業務の引継ぎをしている傍ら、刀奈がヴィルヘルミナに色々と書類を渡したり書かせてたりしていた気が。
まあ、かくして。俺と刀奈の、モンド・グロッソに向けた1年間が始まるのであった。