IS 彼の日記帳   作:カーテンコール

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 4月□日 曇っててなにが悪い

 

 

 あー、今日はほんっと疲れたわ。

 なんか他人の喧嘩に巻き込まれる形で、IS戦なんかすることになって。

 表向きはクラス代表決定戦だったか。や、別に何でもいいんだけど。

 

 戦う順番は、まず俺と織斑。

 そして勝った方がオルコットと……の、筈だったんだが。

 奴の専用機到着が予定より随分遅れているらしく、アリーナの使用時間もあるし急遽予定変更。

 先に俺が、オルコットと戦う羽目になってしまった。

 

 ふつーに惨敗した。

 いやいやいや、相手はアレでも1国の代表候補生よ?

 IS搭乗時間だけでも優に300時間超えてるような輩よ?

 精々この1週間の合計で15時間程度しか動かしてない、しかも適性Cの俺とは格が違うって。

 技量、経験、適性、機体性能全部負けてる相手にどうやって勝てと。

 寧ろこの場合、向こうがずぶの素人に苦戦しちゃいけないような立場だろうに。

 10分でも粘った俺を褒めて欲しいくらいだよ。

 

 んで、織斑はと言うと。

 俺とオルコットの戦闘直後に届いた専用機……名前は確か、百式だか白式だか。

 そいつに乗って、果敢にオルコットに向かって行って。

 奴さんの使ってた特殊兵装のビット兵器を破壊し、油断したところをズドン。

 ……と、やられそうになったところで運良く機体が一次移行(ファースト・シフト)した。

 そして格好良い台詞を叫んで、ビームみたいな剣で格好良く突撃して。

 

 剣を振る直前で、格好悪くシールドエネルギーが尽きた。

 彼は芸人向きだと思われる。

 

 戻って来たら戻って来たで、織斑先生とサムライガールにボロクソ言われてた。

 そも、代表候補生相手にトーシロがあそこまで奮戦したんだから、褒め称えて然るべきじゃないかと思う。

 可哀想に。あんな幼馴染と姉、俺は欲しくない。

 

 部屋に戻ったら、珍しく更識の方から話しかけてきた。

 お疲れ様と、残念だったねの短いふた言。

 俺の知人は攻撃的でなくて良かった。

 

 ここ数日は普通に熟睡している。

 カタカタ音が子守唄か何かに聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 4月●日 普通に曇り

 

 

 クラス代表だが、オルコットが辞退した結果織斑が就任することになった。

 どうも先日の戦いで彼のことを見直した……と言うか、あの様子だと惚れ込んだらしい。サムライガールと揉めてたし。

 俺は茶を飲みながら見物してた。困り顔の織斑がこっち見てたけど、女の戦いに割って入るなんて御免だ。下手すれば命が無い。

 それに俺が何もしなくても、どうせ織斑先生が止めるだろうし。事実止めてたし。

 ま、ともかくこれで今回の一件は丸く収まったって事で。

 

 …………。

 この時の俺は知らなかった。

 今回の敗北。そして、その次の敗北。

 俺の記録に刻まれたその2敗。それが、俺の未来を大きく歪めてしまったことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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