□月×日 KU・MO・RI
先日の迷子は転校生だったらしい。しかも中国の代表候補生だとか。
だがこれで3人目だ。流石にもう驚きも薄れている。
しかしアレだ、本当に名前なんだっけ。
フォン? ファン? フェン? フィン? 発音が微妙すぎてはっきりしないぞ。
聞き返すのもアレだったから、ミニ子とでも呼んでおく。ミニサイズだし。
馬鹿にしてんのか、と脛を蹴られまくった。
放課後はアリーナを借りたIS訓練。
スイスイ飛べるのが楽しい。武装は相変わらずだが、機動方面に関してはお墨付き。
ここまで出来ることと出来ないことがはっきり分かれている奴は逆に珍しいと、山田先生が言っていた。
部屋に戻ったら、郵便物が届いていた。
広告ハガキが数枚。態々IS学園まで送ってくるほどの物でもないだろうに。
その中に、なぜか結婚相談所のハガキが混じっていた。
俺まだ15歳なんだけど。高1なんだけど。
それともアレか。今の内からこう言うことやっておかないと、将来結婚できないぞってことか。
大きなお世話だと思い、ハガキはゴミ箱に捨てた。
□月▽日 cloudy
1ヶ月も通っていれば、そろそろ教師毎の授業傾向というものも分かってくる。
山田先生の授業はとても分かりやすい。ひとつひとつの事柄に対し懇切丁寧で、時折解説も入るからすんなり頭の中へと知識が入ってくる。
だが、織斑先生はいただけない。あの人基本的に自分が話すことを相手が理解しているのを前提で授業進めるから、時々ついて行けないのだ。
と言うか、元々教鞭を取るのに向かない性格だと思う。カリスマで誤魔化してはいるが、ぶっちゃけ教える事が下手なタイプだ。
まああの人も名が売れすぎて、自由に生きることさえ難儀しているのだろう。『世界最強』なんて称号、一般人として生きるには邪魔物でしかないし。
なので今日も今日とて、織斑先生の授業で分からなかったことを山田先生に教えてもらった。
いっそ何ひとつさっぱり分からなければ諦めもつくんだが、中途半端に理解できるのだから仕方ない。
偏差値58なんて微妙な頭してる俺のバカ。馬鹿じゃないけどバカ。
射撃武器の使用状況理論についての理解は深まったが、考えてみれば俺は武装の
だが山田先生いわく、機動制御に関してはちょっとしたものらしい。
もういいんだよ、こちとらモンド・グロッソの機動部門『ヴァルキリー』目指すことにしたんだから。
男なのに、ヴァルキリー。自分で言ってて訳分からない。
自主的居残りも終わったことで、部屋に戻る。
するとそこには1人の女子生徒が。
一瞬更識かと思ったが、違う。髪と目の色こそ一緒だったが――
(ここから先は意味のない記号と文字列が続いていた)
□月◎日 ハレテルヨー
ボク ノ ナマエ ハ トウドウ タカカゲ デス。
ナリタイ ショクギョウ ハ ワカメ ヲ ツクルヒト デス。
タテナシサマ ノ メイレイ デス。
サラシキ ニ テ ヲ ダシテ ハ イケナイノ デス。
イワレナクトモ ナニ モ スルキ ガ ナイトイッテモ シンジテ モラエマセンデシタ。
□月♪日 頭痛のする曇り
昨日のことがさっぱり思い出せない。部屋に戻った後、気付けば夜が明けていた。
更識が言うに、ロボットのような動きをしていたらしい。
何故か知らないが、更識の半径60センチ以内に近付けなくなった。
それ以上身体が近くなると、拒否反応を起こすのだ。
理由は不明だ。近々カウンセリングを受けようと思う。
あと、織斑とミニ子が喧嘩していた。
どうにも昔交わした約束を、織斑が勘違いして覚えていたのが原因らしい。
らしいってのは、大声で喧嘩した内容から察しただけだからだ。脛を蹴られて以来苦手なので、ミニ子の間合いには入らないようにしている。
痣がまだ消えていないのだ。
近々、クラス対抗戦が開かれる。
優勝クラスには、デザートのフリーパスが与えられるらしい。
偏食家の俺にとってデザートは貴重な栄養源だから、織斑には是非優勝して貰わねば。
4組代表の更識はまだ専用機が未完成なので出場しないから、敵は2組のミニ子だけだ。
代表候補生相手じゃあ勝ち目は薄いが、頑張ってくれ。