「どう?緊張してる?」
「まさか。いつもとおんなじだ」
「そう・・・」
あれから数日後の話だけど今日かずさの本番の日迎えた。そんな俺達3人は控え室にいた。
「・・・いや、少しだけ違うな。失敗するイメージがまるで湧いてこない」
「・・・・・」
「今日で、あんたのこと越えちゃうかもね」
「それはわたしとしては大歓迎」
「・・・なんてのは冗談だけどそのくらい落ち着いてる」
「なら、そのまま最後まで駆け抜けなさい。途中で雑念に囚われたりしないようにね」
「わかってる。じゃあ・・・行ってくる」
かずさが控え室から出て行く姿を俺達2人は確認すると俺は曜子おばさんに話しかけた。
「かずさが行きましたよ」
「そうね」
「かずさは気付いてませんが俺の目は誤魔化せませんよ。少しずつですけれど曜子おばさん・・・・・体調が悪くなってますよね?」
「・・・・・いつから気付いてたの?」
「俺とかずさが日本に帰って来て少しの時ですよ」
「・・・・・なっちゃんには言うけど、あたし実は白血病なんだってさ」
「・・・・・」
「半年前くらいかな・・・」
「たった二時間のコンサートで体がふらつくようになってきたのよ。」
「三、四曲目あたりで動悸や息切れが激しくなってきて終わったあとも一時間くらい治まってくれなくてね」
「ああ、とうとう来たか糖尿病って思ってたんだけど」
「どうしてそんな状態になるまで放っておいたんですか!」
「それでコレはヤバいんじゃないのってことになって、日本で信用のおける高柳先生に診てもらうことにした。」
「そうなんですか」
「その手の病気に関しては世界的権威って言われてるし、何よりまぁ昔から色々とあった間柄だし・・・」
「来日してから何度か検査入院して、だいたい病気の正体も掴めてきて・・・」
「・・・・・」
「二日ほど記憶がないんだけどね」
「ま、今は大丈夫。また検査入院は、するけどね」
「かずさには・・・・・」
「言えると思う?今のあの子に」
「・・・・・」
「いつかは日本に連れてくるつもりだったけど急いだのはこのためね」
「・・・・・」
「冬馬かずさは日本で受け入れられるのか。ウチのバカ娘は、もう一度日本で暮らせるのか。その両方を確かめたかったの」
「・・・わたしが生きてるうちにね」
「言っておくけど、すぐ死ぬつもりなんか全然ないわよ?」
「はい」
「最近は、だいぶこの病気の致死率も下がってきてるし、薬打ちまくって、金使いまくって、少なくとも100までは生き延びるわよ?」
「そうしてください。俺とかずさが支えますから」
「ただね・・・もうウィーンには戻らない。わたしはもう、日本を離れるつもりはないの」
「曜子おばさん・・・・・」
「自分の生まれた国ですもの。何だかんだ言って、世界で一番愛してる国ですもの」
「わたしだって、一応親なんだし、かずさが独り立ちできるまで、一緒にいてやりたいって思ってる」
「だけどそれは・・・・・」
「けれどもう、それをウィーンで実現させることはできない。ワガママではあるけれど、自分の一生のことだから」
「確かに・・・・・そうですね」
「だから、あたし達は日本に帰って来た。永住するために」
「ピアノの方に限って言えば今の日本なら、今のかずさなら、もうヨーロッパじゃなくてもやっていける」
「・・・・・」
「死ぬ気は無いけど、もし万が一あたしが死んだら・・・・・かずさの事よろしくね」
「わかりました。」
主人公が曜子の体調に気付かせるようにしてみました。