ゾロさん、あなたを愛してます!! 作:ぞろおし
私たちはいただいたゴーイングメリー号の中で海賊旗を描いていた。
海賊旗とは海賊団の象徴。私たちの威光を表す恐怖の印である。
……ですから
「流石にルフィさん、その悪夢のような海賊旗はやめてください」
「え、なんでだ?俺キチンとかんがえてたんだぞ」
そういって広げるルフィさんの描いた海賊旗はお世辞にも上手いとは言えないものでした。
形はぐちゃぐちゃラインはぐにゃぐにゃ。辛うじて麦わら帽子を被っている骸骨ということが分かる程度である。
「絵心がないのか」
「一周回って芸術のようね」
「ある意味恐怖でもあるな」
本当にひどい絵ですね。
「よし俺が描いてやるよ!」
そういってウソップさんが筆を取り、新しく海賊旗を描く。
スラスラと躊躇いなく筆を動かし黒い布に骸骨と麦わら帽子が描かれて、おそらくルフィさんがイメージしていたものが現れる。
へぇ、上手いものですね。
「どうだ!」
「おぉーすげぇなウソップ!」
「器用ね」
「同じマークとは思えねぇな」
「帆にも同じの書こう」
「そうですね、《バケツ》《塗料》《筆》」
塗料とバケツ、人数分の筆を出して、手渡す。
そのあとみんなで協力して帆を下ろす。
こう見ると中々大きいですね。これは絵を描くだけでも重労働でしょう。
「んじゃ、がんばるぞー!!」
「ルフィはバケツとか渡してくれるだけでいいから」
「ナミさん、服が汚れないようにエプロンでも出しますか?」
「いーわよ、邪魔になるし」
「了解しました」
「代わりにあとでおしゃれな服出してね」
「……うう、了解しました」
「ウソップ、お前下書きしろ」
「おう、端抑えてくれ」
わいわいと喋りながら帆に描く。
こうゆうこともたまにはやって見ると楽しいですね。
* * * * *
「はー疲れたぁあー」
「意外と大変だったわね」
「予想はしていましたが重労働でしたね」
みんなで甲板に寝っ転がりながら一息をつきバタンと倒れる。
身体中、服中に塗料がべったりと付いている。
「あれ、ルフィさんはどうしたんですか?」
「え、そういえば?」
「あいつ、確か途中で戦力外ってことで……」
そう途中でバケツをひっくり返したり、塗り潰す際にはみ出そうになっていたりで明らかに手伝いというよりも邪魔になっていたので一足先に休んでいてもらったのだ。
話をしているとドンと音がして甲板に振動が走る。
「ん?!」
「きゃあ」
音がした方に顔を向けるとルフィさんが大砲を構えていた。
「突然なにやってんだよ、ルフィ?!」
「大砲の練習だよ、せっかくついているんだし」
「ばかめ、俺に貸してみろ」
そういってウソップさんが続いて大砲を構えて岩を撃ち抜く。
お見事です、小説とかで見るより圧倒的に難しいんですよね、砲撃って。
狙って当てる、言うは易く行うは難し。なのです。
ましてや光学照準もレーザー照準もない中、目測だけで軽々と当たるとは得意というだけありますね。
「狙撃に関しては俺に任せろ」
「うぉーー!すげぇなぁ!ウソップ!お前は狙撃手に決まりだな!!」
ウソップさんがドヤ顔をしており、ルフィさんか楽しそうにはしゃぐ。
仲間が増えたのもあって元気ですね、1人で元気を持て余してたのもあるのでしょうけど。
* * * * *
そんな甲板の様子はともかく、汚れましたし、着替えたいですね。
たしかお風呂があったはずです。
「ナミさん、シャワー浴びませんか?」
「いーわね、服も身体も塗料で汚れてるし、汗もかいたもの」
「はい、気持ちよく洗い流したいですよね。」
「アリス、先いいわよ」
「本当ですか?すみません、お先に使わせていただきます。あ、これみなさんで使ってください。《タオル》」
ぽんぽんとタオルを数枚だす。
「あんた本当になんでもほいほいだすわね、これくらいこの船にもあるわよ?」
「すみません、今までこうやって生活していたので……。もう癖というか習慣になってしまっているのですよ」
「便利な能力よね。まぁいいわ、これありがたく使わせてもらうわ」
そういってタオルを受け取るナミさん。
何でも能力だよりに生きていたので、『無ければ出せばいいじゃない』というマリー・アントワネットも真っ青な感覚で生活してきましたから。
どうでもいいですが、『パンがなければお菓子を食べればいいじゃない』ってマリーアントワネットが実際に言った台詞じゃないらしいですね。
それにしても、お風呂付きとは助かりますね。
衛生的にも清潔を保つのは良いことですし。
メリーさんナイス設計です。
「そういえば、アリス」
「なんですか?」
「私がデザインした服まだ一回も着てないわよね?」
「…………」
ギクリと体を固める。
「い、いえ、別に着たくなかったわけでもないのです。ただ戦闘や冒険などで服がダメになってしまうような機会が多かったですし、最近また執筆の催促が飛んで来たので作業しやすい格好しか着ていいなかっただけでですね、重ねて言いますが、決して着たくないわけではありません。汚してしまう可能性がある中で折角デザインしていただいたものを着るのは躊躇われましてですね……」
「もうこれ以上汚れるようなことは今日しないし、着ちゃいなさいよ」
「あう」
「ラウンジか女子部屋にいると思うから、お風呂空いたら声かけてね」
私が否定の言葉を繰り出す前にナミさんは甲板へと去って行きました。
うう、どうしましょうか?
もし着ていなかったならナミさんにどんな言い訳してもピシャリと跳ね除けられるでしょうし。
問答無用でまたダメ出しをくらいそうです。
とぼとぼと女性部屋にと決められた場所へと向かい、自身のカバンを取り、中からナミさんが描いてくれた服のデザインをまとめたものを取り出す。
ぺらぺらと捲り、描かれたものの中から露出が少なく、派手ではない衣服を探します。
……あまり無いですね。
全く無いという訳ではありませんが、大半が胸元が大きく露出していたり、丈が短い服です。
動きやすくはあるのでしょうが、私には荷が重いですね……。
というか私とナミさんの戦力差(主に胸囲)を遠回しに言われているようで若干イラっときますね。
あ、でもこれはいいですね。
ページをその後ぺらぺらと捲り、ようやく着れそうな服が目に入る。
私が見つけたのはスカートの裾あたりが淡い桃色のグラデーションとなっており、小さな桜の刺繍が入ったワンピースです。
可愛らしく、シンプルなデザインなので目にとまり気に入りました。
……腰あたりまで背中が大きく見えてますが。
丈もそこそこ短いですが着れなくはないですかね。
まぁ、着れそうなのはひとまずこれくらいですし、吟味する時間も勿体無いのでこれにしますか。
タンスからタオルを取り出し、それから軽く濡らしてから塗料や汗を等身大の鏡を見ながら拭う。
よし、あらかた落ちましたかね?
全身を見回しますが特に汚れは見えません。
とりあえず出して服を出してみますか、似合わなければ消せば良いだけですし。
「《ワンピース》」
イラストを見ながら強くイメージをする。
ぽんと目の前のベットの上にイラスト通りのワンピースが現れる。
コトコトの実は物質を具現化するにあたって、対象の詳細な情報、例えば構造や製造過程、原材料や含有物質、使用方法といったようなもの、と目の前に確かにあると思い込めるほどの想像力を必要とします。
ですから例えば同じ言葉を発したからといってその都度全く同じ物が現れる訳ではないのです。
また、出したものは私がイメージすれば消すことができます。カヤさんの屋敷で屋敷を囲っていた大きな檻を消したように。
閑話休題
ワンピースなどの衣類を持ち、お風呂場へと向かう。
扉をあけ、服を脱ぎメガネを外してから髪を解いて、シャワーを浴びる。
あぁ、温水が気持ちいいですね。至福のときです。いえ、もちろんゾロさんと過ごしているときが最高の幸福ですが。
石鹸を泡立てて肌を滑らせるようにして体の汚れを落としていく。久々に体が清潔になっていくという、生き返るような感覚です。
一通り体を隅々まで洗い、再びお湯を体にかけさせて泡を流していく。キュッとシャワーを止めてバスタオルを取る
ふぅ、さっぱりしましたね。
体に残った水分を拭い取り、下着やメガネを手に取る。
体を拭きつつ鏡を探しますが、見当たりません。
困りましたね。いえ、ならば私たちの女子部屋にいけばよいのです。
ジャージを取り出して身を包み、髪の水気を切って風呂場を出る。
* * * * *
ナミさんはたしかラウンジか女子部屋ですよね?先にラウンジに行きますか。
タオルと脱いだ衣類、着る予定であるワンピースを持って船内をうろつき、ラウンジへ着く。
小窓を覗き込むとみなさんお揃いでした。
さすがにジャージ姿をゾロさんには見られたくないのでドア越しに声をかけました。
「ナミさん、お風呂上がりましたよ。お次どうぞ」
「はーい。わかったわ、アリス」
そうナミさんが返事をしたので、女子部屋に向かう。
お風呂に入る前と同様に鏡の前に立ち、ジャージを脱いだ。
代わりにワンピースを手に取り、じっと見つめる。
……いえ、迷っていても仕方ありません。着てみましょう。
女は度胸、とワンピースに身を包みます。
慣れない服の構造に戸惑いつつもようやく着て鏡の前に立つ。
…………。
意外と似合ってるじゃないですか?
おぉこんな可愛い服が似合うとは!!
背中がスースーしますけど気にしたら負けですね、これは。
そうだ、折角なので髪の毛もいじってみますか。
そう思い、お風呂上がりでまだしっとりしている髪の毛を乾かす。
なんか甲板が騒がしいですけど、ルフィさんがなにかしたんですかね。
賑やかなのはいつものことですし、気にしたら負けです。
乾いた髪をハーフアップにして、メガネを外してみる。
……おぉ!!こうしてみるとまるで深窓の令嬢のようです。まさか自分がこんな風になれるとは。
鏡の前でくるくると回る。ふわりと裾がまわり、髪の毛がなびく。
むぅ、下着のワイヤーがおしゃれじゃないですね、見えてても大丈夫なデザインのものにしましょう。
それはともかく、……もう少し胸があればいいのですが。パッドでも入れましょうか。
一度ワンピースを脱ぎ、ナミさんのデザインブックを漁る。
さすがに下着のデザインはないですかね?
ぺらぺらとページをめくる。
「おい、壊血病とやらで柑橘系のものが必要なんだが、足りねェみたいで出してく……」
ガチャリとドアが開けられて入ってきたゾロさん。
固まる下着姿で本を読んでいる私。
「…………」
「…………」
「い」
「い?」
「いやぁぁぁああああ!!」
「ぎゃぁああああ!!」
船をいただいた翌日、女子部屋のドアが爆破されました。
感想お待ちしております。